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20.ノートの中の人
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「何をしてる? 人様の邸でずいぶんと幅を利かせてくれたものだな」
どこから忍びこんだのだと猟銃を構えたシノムはフィオナとザラを交互に見て言った。
その冷たい緑の目が二人を忌々しそうに睨め付ける。
しかし二度目にフィオナを見たときハッとして、にわかにその語気を和らげ尋ねた。
「きみは以前書斎で会ったね? 麓の街の娘か? 恋人と肝試しにでも来たのかい?」
これは祖父シノムだ。ザラは確信した。
あの踊る文字の奔放で豪胆な日記の主とこの男から受ける印象はあきれるほど符合する。
フィオナが経験したタイムスリップ様の現象を自分も体験している事実に、ザラはにわかに胸の鼓動を早めた。
「伯爵さま、すみません僕たちは……」
「お前は黙れ。彼女と話してる」
ザラは余計フィオナの夫が好きになった。
祖父シノムは所在なさげなフィオナに歩み寄ってその手をとり、そのまま寝室を出ていこうとする。
ザラは慌てて後を追った。
「お前に用はない! どうせそこらのごろつきだろう。命は見逃してやるからさっさとこの城から出ていけ」
「僕はバンフィールドの家の者です! 僕はアイリーン・バンフィールドの…………関係者」
「嘘言え。アンネースの妹なんかまだただの小娘だろ」
「嘘じゃないわよ!」
フィオナが叫んで、不意をつかれた祖父シノムの元を逃げ出した。
ザラは咄嗟に伯爵を突き飛ばして扉をバタンと閉めた。撃たれるかと思い、耳を澄ませるがしばらくなんの音沙汰もない。
そっと扉を開いてみる。
そこには真っ暗な廊下が続くばかりで、彼の姿はどこにもなかった。
「前もこうだったわ」
書斎でも扉を閉めたら祖父シノムは消えてしまった。
何だか気分が悪いというフィオナをザラは再びベッドへ上げた。確かに顔色が悪い。しかし、肌艶はそう悪くはなく一見一過性の感冒かなにかに思える。
「近ごろ急につらくなるの」
「……そうなの? いつから?」
「1、2ヶ月前かな。何か病気だと思う?」
「それがずっと?」
「ここの所は」
フィオナは参った顔でため息をついた。
ザラはしばらく考えてフィオナの問診をはじめた。つかぬ事を聞くけど……と。
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