fの幻話

ちゃあき

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25.他次元の悪魔

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□□□


 並行次元というものがある。多元宇宙とも。


「僕たちの暮らす宇宙が生まれたとき、まったく同じ材料でいくつも別の宇宙が生まれている。

一卵性の多胎児みたいなものだよ。
それがたくさん……するとなにが起きると思う?」

「同じ顔がたくさんできる」


 ヒンスのこたえに、ザラは大体正解といった。

 次元同士が接しないどこか遠くで、いくつもそっくりな世界が生まれるのだ。

 そこに生まれる天体やその気候や環境や生き物やはては歴史まで。


「おなじ次元の別の時間につながることは不可能だ。それはどこにも存在していないからね。

しかし、他の次元ならば可能かもしれない。

僕たちのいるこの次元より進みの遅い、もしくは早い次元にいくことができれば」


 もちろんそんな方法はわからないけどとザラはいう。

 だが……もし、その方法がこの土地に関するものだとしたら……——この土地が他の次元とつながる性質を持っているとしたら。

 ここがかつて禁区とされた理由にもなる。

 いつか誰かがここから他の次元に飛んでしまったのだとしたら。

 それが現在、祖父シノムの時代に当たる次元につながっているのだとしたら。


「もしかしてシューベルグ一族はその影響を受けないんじゃないか?だからこの地に根づいた。

フィオナも僕も祖父伯爵に出会ってる。そしてヒンスもペルルという少女に」


 ここでもっとも長く暮らすシノムだけが別の次元の誰とも出会ったことがない。

 シューベルグ一族の特異性とはそれなのではないか。

 以上がザラのいう仮説だ。

 だからこの地を去れば、異変はきっとおさまるだろうと。


「お前ただのオタクだと思ってたが、たまにはそれらしいことがいえるんだな」

「失礼だなぁ、脳みそ筋肉のくせに」


 悪魔にビビってたのは誰だよとザラはヒンスをつついた。


「……しかし、祖父はどうなんでしょうか」

「なんだって?」


 だまって聞いていたシノムがおもむろに口を開いた。


「僕の一族のもっているなにかが次元間の移動をさまたげるのだとしたら、なぜ祖父は僕らの次元に姿をあらわすんでしょうか?」


 なにかにつけ祖父シノムは常軌を逸する。

 ……——やはり奔放で悪辣なる祖父シノム・シューベルグこそが、今回の件の悪魔にちがいないと誰しも思った。


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