短編まとめ

ちゃあき

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サキュバスのアリアドネⅡ(恋愛R18)男主

2※

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 全パートの収録を終えるともう23時を回ってしまった。
 締めの挨拶を聞いて観客が捌けてから急いで壁際に戻ると、まるで置物のように固まったアリアドネがそこを離れた時のまま座っていた。眠そうな垂れ目に疲れたのかと聞いた。すると人がたくさんいて圧倒されたようなことを言ってた。

 近頃見慣れたその間抜け面がおかしい。来た時のように抱き上げてスタジオを離れる。背後で打ち上げの説明が聞こえたけど、あとで志芳里に教えて貰おう。

 アリアドネは大人しく短い爪の細い指で背中に掴まってくれた。



 楽屋に戻るとソファにアリアドネを座らせた。今日は大人しい。座ってはぁとため息をついた。

「今日なんかつかれた」
「面白くなかった? テレビで見る人いっぱいいたでしょ」
「それは面白かったけど……おだじまもうどっか行ったりしない?」

 アリアドネは明らかに眉を下げていた。
 眠たげな垂れ目にも元気がない。尖った唇をつまむとピーピー騒ぐ……——このアホは昼から僕にかまわれない事に拗ねていたのか?

 僕と志芳里の出番を見てたか尋ねると、ちゃんと見てたという。どうだったか聞くとぼやくくらいの声でかっこよかったと言ってくれた。
 笑ってキスをした。それから今日はもう一緒に帰ろうと言った。


 僕の地下時代のグループは去年解散したらしい。
メンバーもファンもバラバラになって、今はもうあの現場は存在しない。

 帰ってこいと言った割に振り返ってももうそこには何もない。

 帰りたいときに帰りたい場所に会いたい人がいる事は想像以上に幸運な事かも知れない。それが目の前にある内にその事に気がつけるのも。


 ソファの上で俯いて小さくなっているアリアドネの前にしゃがんでまた軽く口付けると、こちらを見上げてくれた。

 もうピーピー言わない。元気がいいのも面白いから好きだけど、今日は大人しくてそれはそれで嫌いじゃない。

「おだじま今日ずっとその服なの?」
「嫌だったの? もう脱ごうか」
「ううん……」

 リアはなんか……と言いかけてやめた。見慣れないから嫌なんだろうか? ジャケットを脱いで肘掛けに掛けた。

 アリアドネの方はお出かけすると言ったらお気に入りらしいワンピースに着替えてきた。彼女はワンピースが好きらしい。よく着てて、高い所を飛んでるといつもパンツが見えてる。

 今日のはデコルテと袖がレースで透けてる。色は白で胸の下に切り替えがあり、広がった裾には贅沢にフリルがついていた。結構値段がはりそうだけどサキュバスはお金持ちなんだろうか……?

 それから、似合ってて可愛いと思う。でも可愛いと言うと怒るから言えないままだ。

 ……——そんな事を考えてたら、いつの間にかアリアドネがぼくのネクタイを外そうと奮闘していた。
仕組みを知らないから外せないらしい。自分で解きながら何してんのと聞いた。

「なんかおだじま取られそうだからやだ」
「なんで? 何に?」
「さっき向こうでお客さんの女が言ってた。今日のあおいかっこいいねって」

 "あおい"っておだじまの苗字でしょ? と聞かれた。違う。名前だ。間違えて覚えてる……。

 ……でも、じゃあずっと名前で呼んでくれてるつもりだったのだろうか?

 怒ってるアホ面も透けてるデコルテも、何だか段々チラチラと目について毒にしかならなくなってきた。

「アリアドネ?」
「なに?」
「僕が取られたらやだ?」

 そう聞くとリアはさっき言ったじゃんと答えた。確かにそうだ。






 透けたデコルテで光る小さな白蝶貝のボタンに手を掛ける。アリアドネは嫌がらない。下まで外して前を開くと白のレースに黄色いリボンのついたシンプルな下着が目に入った。

「今日あんまりエロくないやつ着てきちゃった」
「ていうかきみの下着を洗濯してるのは僕だからね。今更エロいもなにも……」

 パンツ見せながら飛び回るし、洗濯させるし干させて畳ませるし、もはやこれにレア感などない。アリアドネにエロスの才能は皆無だ。
 なぜ淫魔になど生まれたんだろう……でも、そうじゃなければ僕とは出会わなかった。

「いい加減エロいのあきらめたら?」
「やだ」
「じゃー頑張ろ」

 腕とワンピースの隙間から背中に手を回してホックを外した。ないようであるような少しだけある胸の膨らみが顕になる。そこに唇をよせると頭上からうめくような声が漏れた。

 羽が小さくはばたく。飛んでいきそうだからソファに座ってリアを膝の上に抱えた。
 いつも目線くらいの高さをフラフラ飛んでいくから、なんとなく捕まえてだっこするクセがついてしまった。

「いつも捕まえやすい所飛んでるよね」
「そうかなと思って」
「え?」

 ……アリアドネの奇策はたまに功を奏する。捕まえられようとしてフラフラ飛んでたらしい。
 このアホのサキュバスの仕掛けた糸に僕はたまにまんまと絡まっている。

 向かい合って控えめな胸の飾りをつまんで転がす。小さくうめく唇を塞いだら、隙間から舌を探しに行った。人間の女の子と違うのはすぐにでも折れそうな細い牙が生えていることだ。それが不思議でしばらく舐めてたら嫌がられて舌を押し返された。

「あ、血が出た……」
「ほらぁ」

 牙が鋭すぎて痛くも痒くもないのに鉄の味だけがする。舌を出してみたら赤い玉が膨らんで落ちそうになった。するとリアが僕の舌をぱくりとくわえた。

「……まずい」
「べーしなよ」
「もう飲んじゃった」

 いかにも嫌そうに眉間に皺を寄せる。じゃあなんで自分から舐めに来たのだ。
 ……僕はこのアホが可愛い。でもそう言うと怒るから黙ってる。黙って逃げられた舌をまた追いかけることにした。

 今度は素直にあの小さな舌を探って自分の舌を絡めた。まだ少し鉄の味がする気がする。ワンピースを脱がせて揺れていた尻尾を掴んだら鼻から抜けるような声を漏らした。

「ん……おだ……」
「しっぽ嫌だから志芳里のこと叩いたの?」

 アリアドネは頷いた。でも僕の手からは逃げ出さずに眉間に皺を寄せて耐えてくれてる。パンツも脱がせてポイした。不安とも期待ともつかない上目遣いがこちらをじっと見上げている。

 背中に回した手で尻尾を掴んだまま、入り口に指で触れるとぬるりと滑った。すぐには中に入らずしばらく浅い所を指先で掻いていると、段々背中が揺れはじめる。そうなってからようやく中まで指を進めた。

「あ、あぁ~~……」
「今日人多いから外煩いけどあんま騒ぐとばれるかも」
「はずかしいのおだじまじゃん」
「それな」

 バレたら相当恥ずかしい。けどあんまり急ぎたくない。中を指をぐるぐる広げながら唇を塞ぐ。親指でクリトリスに触れると支えた腰がびくりと震えて汗が滲んだ。上がるくぐもった声に僕も段々と興奮が抑えられなくなってくる。

 親指でそこを擽り続けると、その内ふいに中の指がぎゅっと締め付けられた。小さく腰が前後する。唇を放すと苦しそうな呼吸の合間に喘ぎが漏れた。

「んぅ、う……~~っ……」
「イけた?」
「うん……ね、もう……」

 アリアドネの眦から涙が溢れて赤い頬を伝う。頷いて、中の指を抜くと自分の前を寛げた。
 上に来れるか聞いてみると、膝立ちになった彼女が僕の肩に掴まる。大きく深呼吸しながらそれを自分の中に埋めはじめた。

「はぁ……ぁ、や……」
「苦しい?」
「……ぅうん、だいじょぶ……あ……」

 苦しそうだから尻尾を摩ると、力が抜けたのか僕の太腿の上に尻餅をついてしまった。深くまで一気に繋がってお互い息を詰める。シラフだけど、また滅茶苦茶な事をしそうになるのを抑えながら首に掴まってくれるように頼んだ。
 細い腕が首に回る。密着すると彼女の髪から僕と同じシャンプーの匂いがした。

 軽い身体を支えて下から突き上げる。アリアドネは肩に体重を掛けてくる。耳元で小さな喘ぎが聞こえる。その声に目を閉じて、乱暴にならないように彼女の深い所まで入ったり出たりを繰り返す。

「……ぅ、う……あッ、や……」

 外に聞こえると言ったから我慢してるのだろうか。いつもと違う囁くような声だ。可愛いと言いそうになって口をつぐむ。リアは"可愛い"を一番嫌がる。正直誰より可愛いのにそれはないといつも思ってる。

 突き上げを早くすると、余裕がないのか肩にかかる重さが増していった。同時に高い声があがりはじめて僕の余裕もなくなっていく。

「アリアドネ……」
「あ、ぁあ……っ、ぁあ……!」

 背後のソファに押し倒して脚を持ち上げた。
 可愛い声をあげる蕩けた顔が僕の身体の影になって見える。そうなるともうあまり我慢が効かなくて、細い身体の奥を責めるように突くのが止まらなくなってしまった。

 もう終わりが近い。リアがフニャフニャ言いなが手を伸ばしてきた。姿勢を倒すと背中に腕を回して掴まった。奥を突くタイミングでまた胎内が蠢いて、締めつけられるまま彼女の中で欲を放った。

 甘えた声が聞こえる……小さく震える身体を下敷きににしたまま、しばらく動きたくなかった。








「あれ? 青衣なにしてたんだよ」

 換気扇を回したり、アリアドネに服を着せたりし終わった頃志芳里がスタジオから帰ってきた。
 何をしてたかというとアホのサキュバスにまんまと身包み剥がされていた。

 元凶はちょっと目を離した隙に残っていたお菓子を見つけて貪り食っていたから世話はない。

「青衣打ち上げどうする?」
「ごめん、アリアドネがいるから今日は先に帰る」

 アリアドネはお菓子の袋を片付けてこちらへパタパタ飛んできた。志芳里に挨拶してと言うと不遜な表情で達者でなと言った。僕も志芳里もさすがに吹き出して、志芳里はお前もなと答えた。

 そんなこんなでアリアドネのはじめての職場見学は幕を閉じたのだった。



「おだじま、さっきの写真わたしにもちょうだい」
「三人で一緒に撮ったやつ?」
「そう」

 帰りのタクシーでアリアドネにさっきのスリーショットを送った。
 彼女にも格安SIMのスマホを持たせてある。勝手にウロチョロするのでGPSで追跡できるようにしてるのだ。

 送った写真を見たアリアドネは顔を顰めた。

「わたし変な顔だ」
「いつも通りだよ」
「……おだじまころす」

 ふと思い出して……——ていうか僕は苗字がおだじまで名前があおいなんだけどと教えたら、まじかと驚愕の表情を浮かべた。
 我慢できずにまた吹き出してしまった。



fin.


初出 2021.03.27

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