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2話 友達がくる
1.友達
しおりを挟む「19時に集合ね、居酒屋予約しといたから」
来なかった奴は二人分払わすと言われたから、大体の奴がはぁいと返事をした。
サークル棟の部室にはいつでも意味もなく数人がたむろして意味のない話をしてる。
このサークルに入ったのは高校からの友達が入りたいと言ったからだ。でも彼は先輩と女の子を取り合って険悪な感じで追放されたので、結果僕だけが残るという意味不明な状況になってる。
友達はさっさと別のサークルに入り直して、僕の事など忘れてしまった。
僕はこっちに友達がいるしこのまま疎遠になる気がしてる。高校時代は同じ大学を目指すくらい仲が良かったのに、人の縁とは不思議なものだ。
……——「京!飲み会の前キン○ダム返しに寄るけどいい?」
「うん、あつしくん犬とか大丈夫?」
「なに? 動物増えたの?」
たむろしてた女の子たちが、あつしくんも来るんだーとキャッキャと話してるのが聞こえる。
あつしくんは大学でできた新しい友達の一人だ。多分彼と僕はこの中で一番仲がいい。
当然僕がインコを飼ってるのも知ってる……というか一年の頃色々あって、ピーの事は僕の家に来たことない人も知ってたりする。たまに知らない人にインコの人だよね? と言われる。
……——あつしくんは明らかに聞こえた女の子のヒソヒソ話に顔色ひとつ変えず、何の犬? と聞いた。
耳に沢山ついたピアスがキラキラ輝き、黒髪の下からうすいパープルのインナーカラーがさらりと溢れる。
切長のまつ毛の長い三白眼はどことなく俳優のナントカに似てる。そう、彼は意味わかんないくらいかっこいい。
「豆柴」
「へぇ? 俺んちも柴飼ってる」
「そうなの? じゃ平気だね、犬」
犬、好き。とあつしくんは低い声でボソリと言って、また手元のスマホに目を落とした。
今何か好きって言ったよね? と向こうでテンション高めの声がする。
彼は女の子に大人気だ。
僕はよくどうしてあつしくんと仲が良いの? と聞かれる。それはどうやったら彼と仲良くなれるの? と言う意味だ。
だから僕はいつも、彼とは大して仲がいいと思ってないと答えてる。どう見ても僕たちはいつも二人で連んでるのだ……大体怪訝な顔をされるけどそれで通す。
なぜならあつしくんには秘密がある。
それを明かす事も、彼と仲良くなる方法を女の子に教える事も僕にはできないからだ。
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