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4話 幻じゃない子犬
5.再訪
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「あじゅきちゃんげんきだっ$∮☆¢∀◉※∝±⊿」
「∴⁑∬◯∞☆。£Å※〻」
久しぶりにあずき(犬)と再会したあつしは、ちょっと目を離すとコレだった。
有無を言わさず頬擦りされるあずきは目が死んでる。
お茶を持って戻ると、目にも止まらぬ速さでスマホを見ながらソファに座るあつしの技はもはや名人芸である。
ボサボサのあずきがクッションでポカンとしてる。
「……で、お前その喫茶店でバイトすんの?」
あつしはソファで不遜に長い脚を組んでそう言った。笑いを堪えてそうしようかなと思ってると答えた。
□□□
カフェココアに行った日の夜、砂まみれだったあずきを洗った。
あずきはボディーソープやシャンプーについて教えてみたら一人で風呂に入れた。誰かが過去に基本的な事を教えてあげたのかも知れない。
ドライヤーも嫌がらないから楽だ。セリアで買った人間のあずき用のブラシで癖毛をとかしてから、今日の事を聞いてみた。
「ココアさんはさゆりさんが茶色のやつを心配してるから捕まえようとしてたそうですっ」
確かに相手は痩せ細って汚れた小さい迷子の子犬だ。
彼らにただの序列や縄張り争い以上の感情がある事に驚きはあった。しかし、あずきのような半犬半人が言う以上疑う余地はないとも思う。
ヒト以外の動物と接する時、とんでもない鈍感さと同じくらい想像以上の繊細さを覚える事がある。
それは僕にとって期待でもあったけど……ともかく彼らの意思や距離感を少し感じとることができた。
翌日の夜になって木蓮さんから電話が入った。
昨日は閉店後に茶色い子を病院へ連れて行ったりしてたらしい。他は要すると、前日のお礼と今後木蓮さんのカフェでバイトをしないかという相談だった。
僕は今の所居酒屋で週3、4バイトをしてる。1年の時から変わらないから結構長い。
メンツも時給も決して悪くない。ただ店終わりに飲みに行く癖とたまに起こる人間関係のイザコザがちょっと面倒だった部分はある。
何より……僕は木蓮さんと彼女のお店に心惹かれるものがあった。
カフェココアは平日の昼営業と土日のバータイムを考えてるらしい。給料も今のバイト先の時給を聞いて相談したいと言ってくれた。
今の店の都合もあるから少し考えさせてくださいと返事をした。それが先週のことだ。
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