豆柴彼女。

ちゃあき

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4話 幻じゃない子犬

6.小さなジュリア

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□□□


「ちょっと待っててねー!」

 慌ただしく料理を作る木蓮さんにはぁいと返事をした。今日もお店は忙しそうだ。

 あずきとあつしを連れてココアの繋がれてるカウンターに座る。今日はココアの隣に白地にまだら模様の雑種の子犬がいる。

 "洗ってみたら色が変わった"というメッセージと画像を受け取ってたけど実物を見るのははじめてだ。

 この子は例のココアの舎弟の茶色い子犬だ。

 茶色改めまだらの子犬は、あずきが近付くとふんふん匂いを嗅ぐ。外を転げ回っていた時よりだいぶ賢そうだ。

 洋犬っぽくもあり、和犬のようにも見え……薄黄色の目が僕たちの方を興味深げに見上げている。

「その子まだ名前なくってね~」

 茶色だったらチョコにしようと思ってたんだけどと木蓮さんは手早く料理を盛り付けながら言う。

「へ~……じゃあポセイドンにしようぜ」
「勝手にやめろよ!何なのお前の名付けセンス」

 あつしくんの実家の柴犬の名はゼウスである。
 だいたいこの子犬は女の子だ。少なくともポセイドンはやめたほうがいい。

「ココアの妹分なんだから」
「じゃあ……ラパンとか?」
「かわいいけどなんかちがくない?」

 あつしくんは子犬をじっと見てう~んと唸る。木蓮さんが料理を出しながら笑ってる。

 子犬の方は照れたのか、ココアの後ろに隠れてしまった。この子が三匹の内で一番女っぽい。

「……あっ、ジュリエッタ」
「えっ?」
「あら、いいじゃないそれ」

 カウンターに戻った木蓮さんはその名前を気に入ったみたいだ。

 僕も悪くないと思う……マーチとかムーヴと言うと思ってた。ほんのり外国っぽい顔立ちにも"小さなジュリア"は似合ってる。

 よろしくね、ジュリエッタとしゃがんだ木蓮さんが彼女の耳の間を指で撫でる。

 ジュリエッタは不思議な目をして人間たちを見上げていた。



 その日、木蓮さんの子犬の名前が決まり、僕は今のバイト先と折り合いがつきしだいこのお店で仕事をはじめたいと伝えた。

 バイト先を変えるのははじめてだ……ちょっと不安もあるけど、ここにはあずきも連れてこられる。

 彼女を家に閉じ込めておくのもかわいそうだけど、勝手に歩き回らせるわけにもいかない。
 ここで友達ができればいい。ココアもジュリエッタもいる事だし。



 店で食事して午後の授業へ向かった。
 あつしくんはあずきとココア見たさに午前を2コマともサボってた。

 電車でも相変わらずスカした仏頂面でスマホをいじっている。ただ、画面にはさっき店で撮ったあずきたちの画像がズラリと並んでる。

 彼が名付けた斑犬のジュリエッタもココアの後ろに隠れて見切れてた。

「よく思いついたよね、ジュリエッタって名前。軽自動車の名前つけるのかと思ってた」
「え?……まぁ、ジュリエッタって……」

 よく聞いたらアルファロメオの車名の一つらしい。
 かわいいからいいかと思った。


fin.
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