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7話 警告
3.友達を試す
しおりを挟む閉店まで1時間を切った店内には残りのコーヒーを楽しむ一人客が数人思い思いに寛いでいた。
カウベルが鳴る。
いらっしゃいませと声をかけると熱士だった。まだ大丈夫かと聞かれたから後1時間あると答え席を勧めた。
コーヒーマシンの扱いは大体慣れてきた。いつものカフェラテでいいかたずねて、マシンの上で暖まったカップを取り出した。
「あら、熱士くん! いらっしゃい」
「おじゃましてます」
熱士は洗い物中のさゆりさんに挨拶してココアたちと遊びはじめた。
熱士はジュリエッタの名前を決めた日以降もよく店に顔を出す。でもSNSにはその事を書かない。女の子が来ちゃうからだ。
さゆりさんは熱士もバイトに誘った……でも熱士は働いた事がないらしく、考えると言ったまま保留になってる。
彼の収入源は主にSNSや配信サイトだ。それで当面金に困る事はないみたいだった。
熱士はバタバタ動き回って余裕がなくなるのを嫌がる。僕も彼が苛々してる所を見たいと思わない。
だからやってみたいと思った時にはじめたら? と言っといた。正直な所お客さんでいる方が気楽なんだろう。
「15時閉店だろ? 片付け終わるまで待つから」
「うん」
あつしは僕とあずきを迎えにきたのだ。
帰宅して僕とあずきがゴロゴロ昼寝してたら17時過ぎには起こしてくれる。
「お前ら俺がいないと寝坊するもんな?」
「ヒャン!」
「…………」
あつしは鳴くあずきと、黙って黄色い目で見上げるジュリエッタをなでた。
彼にもココアが一番成熟してるのが分かるんだろう。あのボス犬には簡単に触らない。
2階で仮眠をとるさゆりさんたちと分かれ熱士とあずきと店を出た。
今日は花曇りだ。日焼けしなくていいと言うと、曇りでも紫外線は降ってくるから日焼け止めしろと熱士に説教された。今度から人間のあずきにはやってあげよう。
熱士はトコトコ歩いてたあずきを捕まえて勝手に抱っこした。あずきは嫌がらない。もう慣れた手だ。
さっき店でココアたちやビジターの犬たちと遊んで疲れていたんだろう……熱士の腕の中を満喫してる。
「あれから会ってないか?」
「燐ちゃんの事?」
うんと熱士は頷く。僕の友達の李燐ちゃんの失恋を慰めるために三人で飲みに行った日、燐の振る舞いは熱士の逆鱗に触れたようだった。
彼は自分の知らない所で僕と燐が接触するのが嫌みたいだ。
会ってはいないけど連絡は取ってた。でも会ってないかと聞かれたんだからそうだと答えた。
「あいつメンヘラじゃん。付き合ってたらこっちもおかしくなるわ」
「……でもいい所もあるからね」
僕は珍しく熱士に言い返してしまった。彼ははっとしてそれ以上は何も言わなかった。
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