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7話 警告
2.将来設計
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「ダブルベリーとリコッタチーズのパンケーキ2つとコーヒーはエスプレッソとカフェモカで……お飲み物は食後にお待ちしていいですか?」
手書きの伝票に略符を書いてキッチンのさゆりさんに声をかけた。
入れ替わりに出てきた桜エビと枝豆のおにぎりとお味噌汁の定食のトレーを持って、今度は隣のテーブル席へトンボ帰りする。
cafe cocoaは相変わらずの盛況ぶりだ。
バイト先を変えた僕にとって、ココアのランチタイムは居酒屋のピーク帯を彷彿とさせる。
(すごいよな。こんなに店流行らすのもだけど……今まで一ヶ月間はこれを一人で回してたのも)
土曜の14時を過ぎてようやく客足は落ち着いた。
空の食器を抱えカウンターの下でじゃれているココアたちを踏まないようにまたぐ。あずきはココアとジュリと遊んだ日は疲れて良く寝てる。
「……さゆりさんお疲れさまです。最後の団体さん帰りましたよ」
「お疲れさま。やっぱり土日はすごいわ」
あははと笑う木蓮さん……あらためさゆりさんは流しでビニ手を持って垂れた後れ毛を耳にかけた。
土日は開店時間を昼にするかわり、この後15時には一度閉めて19時から夜のバータイム営業も待ってる。
この時間帯も上手くいけばいずれバイトかパートさんを増やそうと話してる。
それまでしばらくは僕とさゆりさんの二人だ。
その期間はあまり長くはないんじゃないかと僕は思ってる。
さゆりさんは快活で猪突猛進に見えて意外に野心家だった。いずれはここを起点に同じ業態の店を展開できれば……なんて冗談めかしてる。
それは多分この店の出足が好調で浮き足だったんじゃない。彼女の将来設計の中に元々存在したように思う。
さゆりさんの考えるココアと一緒に一生続けられる仕事の中に、ともに発展していく未来が折り込まれてるような気がしてる。
「京くんもここの給料だけでやってけるようになるといいわね」
「え?」
「囲い込もうとしてるのよ。頭に置いといて」
「ああ、僕もその方が……」
さゆりさんはそう? と笑った。
僕もそろそろ就職について考えはじめていい年齢だ。
さゆりさんのプランに乗っていければこちらとしても願ってもない。
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