最強の魔道師に成り上がって、人気者のアイドルをやってるんですけど、燃え尽きて死んじゃうぐらいやらないとダメな前のめりな性格なんです。

ちちんぷいぷい

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ラーラントの巫女

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エリサニア帝国はラシアル大陸にあった
全ての国を支配し、栄華を極め、滅び去った。

ラーラント王国の王都ラヒニは
エリサニア帝国の伝説では
帝都カイザリアのあった場所だとされている。

歴史を積み重ねてきた
石造りの美しい町並み。 

赤く、鮮やかな色をした屋根が、
遠く、どこまでも続いている。

「……」

紫のフード付のマント(ニスデール)を
纏(まと)った、女性の少し後ろには
高貴な身分を感じさせる男性が、護衛として付き従っている。

高貴な身分を感じさせる金色の装飾がされた
青いジャケットから男性は、只の護衛ではないようだ。

「精霊教会の鐘楼に登ると、いつも、同じお言葉です…… ソフィア様」

ふりむいた女性は
儚(はかな)い様な白い肌と美しい銀髪で
晴れている空と同じように澄みきった、青い瞳をしていた。

「ベルナルドこそ☆、あっ コホン……
ええと ベルドナルド様こそ」

ソフィアと呼ばれた女性の白い髪は
いつもと同じように、紫のリボンで、飾られている。


どこか、かわいいらしい見た目とは違い
下層階級の恵まれない育ちのためか
内側に火のような気の強さをソフィアは隠し持っている。

わざとらしく、咳払いをした
ソフィアは元は庶民なのを妙に意識しているのか
時々こういう、やらなくていいような
しぐさをしてしまうようだ。

「……」

「あっ、いえ、私は今は巫女という立場なのです、どうかご理解を……」

「もう、昔のようには、いかないのはわかってはいます」

軍人気質で、形式に余りうるさくない
昔からの友人のベルナルドには素の姿を、ときどき見せてしまうが
民衆の強力な支持を後ろ盾にしている自分が
時の王と肩を並べるだけの地位にある
最高位の聖職者としての顔があるのも忘れてはいない。

「民衆の皆様の支持があっての立場ですから」

「ソフィア様は、王国の皆から愛されなければなりません」

「……」

偶像として振舞わなければならないので
相手が誰であろうと、誰か特定の人物と深い関係になることは許されない。

全ての人を公平に分け隔てなく扱うことが求められているが
元は貴族でもなかった、女性はそれについては苦でもなんでもない。

「度重なる戦争のせいか、皆様の暮らし向きは苦しくなっています」

「同じことは、国王陛下も気にはされているようです」

街で、偶然知り合った、友人の
軍人というだけではない、隠していた
もうひとつの高貴な顔を
後で、知ってからは、支持をしてくれる
民衆の救済を行う聖職者として
会うたびに、何かを、つい期待してしまう。

だが、ソフィアの眼に映る、ベルナルドはいつも、変らず
同じで、余計な事はするはずもない、一人の軍人のままだ。

「先の、ステリオ渓谷での決戦において
わが祖国に勝利をもたらされた、貴方が護られた街です」

「少し、大げさすぎます」

「ですが、皆、正直にそう思っております」

「私も皆さんに、感謝します」

かつて一緒だった、二人の間には
言葉によって平和を望む聖職者と
力で争う軍人として、立場の違いがある。

ベルナルドは馬を駆り、盾を掲げ、剣を振い続けてきた
粗野(そや)な軍人だ。

彼女の気持ちを理解はしても、彼女の祈りに対して
何も出来ない、力の足りなさを、自覚もしている。

紫のマントに身を包んだ、女性の瞳は哀しげに見えた。

「今回の戦いでも、たくさんの方々が犠牲になりました」

戦場で供に戦ったソフィアが、癒しの巫女(プリステス)である事を忘れ
同じ戦場で、戦った女性に向けて、賞賛の想いを込めて
気を利かせて、雄弁(ゆうべん)に語ったつもりが
その思いとは逆になってしまったようだ。

誠実な緑の瞳には、少し気落ちしている女性が映っている。

金色の髪をした男性は、軍人としての自分とは全く異なる
聖(ひじり)である彼女の立場を思い出す。

「我ら親衛隊(しんえいたい)も含めて皆、承知の上です」

祖国のための数ある戦場おいて、決戦に赴く
聖職者でもある巫女と魔道師達を護る為に
命を捧げるのが軍人として、最高の名誉とされている。

精霊教会は、精霊を信仰し
祈りを捧げるためにある教会だ。

巫女と言うのは精霊教会の頂点に立つ
選ばれた特別な運命を背負う女性に対する尊称で
魔道師としてはプリステスという正式な称号が別にあり
古(いにしえ)からの炎の精霊と盟約した巫女のソフィアは
火の巫女と呼ばれ、強力な魔力を持つ魔道師で、火の眷属でもある。

巫女であるソフィアの立場からすれば敵も味方も区別はなく
その覚悟を示したベルナルドと同じく、敵もまたそうなのだ。

どうにもならない現実の前で、儚く余りにも無力な人としての存在に
エリサニア最強の魔道師(まどうし)の目から涙が零れ落ちる。

「ありがとう、ベルナルド王子……」

最高位の聖職者として、民衆からも敬愛されている
精霊に仕える女性の背負った過酷な運命の重さを
全身で感じたように、ベルナルドは跪いた。

身をかがめて、足をつけ、跪くと同時に
肌身離さず、いつも身に着けている
軍人としてだけでなく、騎士として
自分の分身でもある、剣が腰から、はずされ
相手への最大限の敬意を込め、下に置かれていた。

出会いの頃から、気が強いと感じる女性だった
ソフィアが、ベルナルドの前で、背負った運命の
重さに、ついに耐え切れなくなってしまい
涙を零(こぼ)したのは、これが初めての事だった。

これから気付く事になるが
ベルナルドはもう、ソフィアの思っているような
軍人として、剣を抜いて、戦う事以外は
何もしない人では、無くなっていた。

ステリオ渓谷での決戦の中での試練が、彼を変え、決意させたのだ。

「わが、王から命じられ、祖国の守護者となりし
火の巫女ソフィア・フローレンス様の盾となれ光栄です」

はっきりとした、ものいいではないので
ソフィアには、通じてはいないが
ベルナルドの新たな、決意として
今後は全てにおいて、彼女の盾になるという宣言だ。

ソフィアは、向かって吹き抜けた強い風に、髪を揺らすと
何かを思い出したように再び、街を見下ろす
教会の鐘楼から、ただ、遠くを見つめている。

「ですが、私の力では1000年の封印を癒し
世の理(ことわり)を変え、人々を苦しみから、救う事はできません」

見つめる瞳には、先の決戦が忘れる事のできない
記憶として映り、精霊に祈りをささげる巫女として
人々を救済し、癒すべき立場の彼女が、その力を持って
戦わなければならない、決して逃れることができない
運命が、最強の魔道師の伝説への想いを、さらに強く駆り立てていた。

「再び、現れた貴方なら、全てを変えて救って下さるはず……」

「ですが、伝説の魔道師は、我らの味方なのかはわかりません」

「私は信じています、きっとあの方なら」

人を超えた力を持つと伝えられたきた伝説の魔道師は
エリサニア帝国時代から存在し続けてきた
4人の精霊の巫女達と全ての魔道師達の頂点に立つ存在だ。

ベルナルドも先の戦いに一応は勝利し喜んだものの
後の戦いの報告から、王のあとを継ぐ、王子としても
ただならぬ事が、起き始めたのではないかと、危惧はしている。

戦場で、一人の武人として、剣を抜き、迫ってくる敵に
どう立ち向い勝利するかしか、あまり関心を、向けようとしなかった
自分が、気がつくと、父として尊敬する、国王の立場で、考えるようになっていた。

伝説の魔道師が、本当に現れたのならば
その力を手にした国が、分裂したエリサニアを再び、統一するだけでは終わらず
広大なラシアル大陸の諸国を制し、伝説のエリサニア帝国を復活させる
恐るべき力まで持ちうる事になってしまう。

「国王陛下が、ソフィア様を、お待ちです」

「わかっています、あと少しだけここで、休ませて下さい」

国王が、先の決戦で見事に任を果たし
勝利に貢献したソフィアと魔道師達への礼と
世の理さえ変えるという伝説の魔道師について
詳しく、話したいと言う、強い思いもあり
ソフィアを王宮へ、招く事になり
国王親衛隊の隊長である
知らない仲ではない、王太子が出迎えとなっている。

ラーラントでは国王と精霊の巫女が
直接話す事は公式的には認められていないので
異例の事態だ。

「わかりました……」

ソフィアは、そっと目を閉じて、伝説の魔道師について
先の決戦で、少しでも、何か手がかりになる事が
他に戦場でなかったか、決戦の光景を、思い浮かべているようだ。

「待ったあ?」
「いや、全然待ってないよ」

「そう、行こうよ」
「うん」

鐘楼から見下ろす、街の広場では
人々が、たくさん集まり
戦争など、どこにもないような平和な日々を
楽しそうに、過ごしている。

「あの、紫りんご、おいしそうね」
「買って、食べるかい?」

「うん」
「紫りんご、下さい」

「ひとつ、5ラペリカだ」
「えっ、そんなにするのかい?」

「このところ、戦争が続いているからね、物不足さ」
「う~ん、なら、しょうがないか」

「買うかい?」
「う~ん、2つ下さい」

「なら、4ラペリカ、負けて、6ラペリカでいいや!」
「いいのかい?」

「今回の戦いの勝利と、二人の未来への祝いだ」
「ありがとう」「ありがとう」
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