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ラッセル
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火の巫女ソフィアと風の巫女ラーシャが放った互いの神の力が激突し
太陽の神が風の神を退けると、死の竜巻は強いだけの風へと変わり
ラーラント軍への強烈な向かい風として、吹き抜けていく。
シーザリアの兵士達は、その風に支援され勢いにを、さらに強めると
突然、ラーランド軍の中央が崩れ、シーザリア軍の兵士達が
勝利を確信した雄たけびをあげながら、多数、崩れた裂け目から雪崩を打って
戦場となっているステリオ渓谷を流れる、大河ヴィーズの水のように流れ込んでくる。
ラーラント後方の魔道師隊が即座に狙いを定めて
向かってくる、敵兵に攻撃魔法を放つが、その数と勢いを阻止する事はできず
火の巫女ソフィアは決戦の魔法を放ち、力を全て使い果たして
後ろに倒れそうになったまま、少し両膝を屈して
大切なものを護り抜こうとする気持ちに溢れるベルナルドの両腕で
しっかり抱きとめられながら、その様子を黙ったまま見守る。
「親衛隊、前に出ろ、火の巫女と魔道師達を守り抜くんだ!」
ベルナルドがソフィアを抱きとめたまま
配下の親衛隊に号令をかけると、親衛隊の兵士達は皆、腰から剣を抜き構え
迫り来る敵を猛獣が威嚇するように身構えたところに
先ほどなだれ込んできた多数の敵兵が
獲物を狩るような血走った目で、数で誰の目にも明らかに劣勢な
親衛隊の兵士達に猛然と襲い掛かる。
「盾を掲げろ、魔法の盾でなく、我ら親衛隊の事だ!」
鍛え抜かれた精鋭ぞろいの親衛隊と言えども
この敵の勢いのまま、数に任せて囲まれれば時間の問題なのは明らかだ。
あくまで時間稼ぎの敵を防ぐ盾として
しばらくの間、押しとどめるだけの殿(しんがり)となるだけしかできない。
「撤退の血路を開くぞ、巫女と魔道師達をここで失うわけにはいかない」
1000年もの長きの間、何度もラーラントは渓谷近辺までの領土を
シーザリアに奪われたが、その度に、この渓谷を最後の砦として
守り抜き再び巻き返し、奪われた領土を奪還して来た。
長き戦いの歴史を振り返ると不思議となぜか、まるで何者かの魔法の封印のように
一度も、渓谷を突破され先に侵入される事はなかったが
ステリオ渓谷の神話も、今や過去のものとなろうとしていた。
だが、たとえ神話が崩れ去ろうと戦いは終わらない
王都ラヒニでの攻防戦に供えて、火の巫女と魔道師達を失う事は
1000年の間、起こる事はなかった
この先の未知なる戦いへの大きな希望を失なう事になりかねない。
ベルナルドは、その時を自分が経験するかもしれない事を
あらかじめ予想さえも出来てはいなかった。
「まさか、ステリオ渓谷を抜かれるのか」
多数の敵に一度に襲われて、なすすべも無く
無残にも殺されていく、親衛隊の兵士達の姿を見つめる
ソフィアが澄んでいたはずの瞳を今は曇らせてベルナルドを見つめる。
抱きかかえている手元からの視線に気づいたベルナルドが
弱りきった青い瞳を守り抜きたい一身で見つめる。
「私を置いて逃げて下さい…… これでは親衛隊も助かりません……
早く、ベルナルド様…… 私は……」
ソフィアは失いそうになりそうな意識を無理をして保ちながらも
力から尽き果てた自分が、逃げるのに足手まといになってしまうのを気にかけている。
「お気持ちはよくわかりました…… 後は、全て任せて下さい」
ベルナルドが急いで兵士に用意させた
まだ汚れていない清潔な衣類を積み重ね、地面に敷きつめた
簡素なベッドの上にそっと仰向けに寝かしつけると。
ソフィアはベルナルドに自らの意思がしっかり伝わり
安心したのか、眠ったように目を閉じる。
「……貴方をここで置いて逃げるなんて
卑怯者と我が民に生涯に渡り蔑まされるぐらいなら、死んだほうが遥かにマシです」
王子としての立場もあるが、今後の戦いのあり方を考え抜いての
冷徹な計算さえ抜きにして、何よりも、貴方の前に愛すると
この場においても、言いたくても、言えないベルナルドに
ソフィアを置いて逃げる事が到底できるわけもない。
そして何よりも、王族として戦うべく真の勇気を授けてくれた恩人のソフィアを
ベルナルドは死しても、護り抜く決意ではなからここにいる。
「王子、そりゃいいですが、死んじまったら、何も護れませんぜ」
二人の話を聞いていたのか、いつのまにか一人の兵士が、近くで剣を構えている。
ソフィアに気を取られている最中に無防備になっている王子を
見るに見かねて、傍に来て警戒してくれていたらしい。
この良く顔を見知った兵士はベルナルドが王の命令で、親衛隊長に就任したために
何も問題もないのに副隊長に強制的に降格となった元隊長のラッセルだ。
「ほんと死んじまったら、護りたくてもな……
死神にちょいと気まぐれで睨まれただけで、人はあっさり土に返っちまうんだから」
自分も含めて、人の生死を嫌と言うほど見るような
数奇な人生を歩んできたラッセルは
隻眼の残された右眼に映った、ソフィアの様子が少し気にかかっていた。
太陽の神が風の神を退けると、死の竜巻は強いだけの風へと変わり
ラーラント軍への強烈な向かい風として、吹き抜けていく。
シーザリアの兵士達は、その風に支援され勢いにを、さらに強めると
突然、ラーランド軍の中央が崩れ、シーザリア軍の兵士達が
勝利を確信した雄たけびをあげながら、多数、崩れた裂け目から雪崩を打って
戦場となっているステリオ渓谷を流れる、大河ヴィーズの水のように流れ込んでくる。
ラーラント後方の魔道師隊が即座に狙いを定めて
向かってくる、敵兵に攻撃魔法を放つが、その数と勢いを阻止する事はできず
火の巫女ソフィアは決戦の魔法を放ち、力を全て使い果たして
後ろに倒れそうになったまま、少し両膝を屈して
大切なものを護り抜こうとする気持ちに溢れるベルナルドの両腕で
しっかり抱きとめられながら、その様子を黙ったまま見守る。
「親衛隊、前に出ろ、火の巫女と魔道師達を守り抜くんだ!」
ベルナルドがソフィアを抱きとめたまま
配下の親衛隊に号令をかけると、親衛隊の兵士達は皆、腰から剣を抜き構え
迫り来る敵を猛獣が威嚇するように身構えたところに
先ほどなだれ込んできた多数の敵兵が
獲物を狩るような血走った目で、数で誰の目にも明らかに劣勢な
親衛隊の兵士達に猛然と襲い掛かる。
「盾を掲げろ、魔法の盾でなく、我ら親衛隊の事だ!」
鍛え抜かれた精鋭ぞろいの親衛隊と言えども
この敵の勢いのまま、数に任せて囲まれれば時間の問題なのは明らかだ。
あくまで時間稼ぎの敵を防ぐ盾として
しばらくの間、押しとどめるだけの殿(しんがり)となるだけしかできない。
「撤退の血路を開くぞ、巫女と魔道師達をここで失うわけにはいかない」
1000年もの長きの間、何度もラーラントは渓谷近辺までの領土を
シーザリアに奪われたが、その度に、この渓谷を最後の砦として
守り抜き再び巻き返し、奪われた領土を奪還して来た。
長き戦いの歴史を振り返ると不思議となぜか、まるで何者かの魔法の封印のように
一度も、渓谷を突破され先に侵入される事はなかったが
ステリオ渓谷の神話も、今や過去のものとなろうとしていた。
だが、たとえ神話が崩れ去ろうと戦いは終わらない
王都ラヒニでの攻防戦に供えて、火の巫女と魔道師達を失う事は
1000年の間、起こる事はなかった
この先の未知なる戦いへの大きな希望を失なう事になりかねない。
ベルナルドは、その時を自分が経験するかもしれない事を
あらかじめ予想さえも出来てはいなかった。
「まさか、ステリオ渓谷を抜かれるのか」
多数の敵に一度に襲われて、なすすべも無く
無残にも殺されていく、親衛隊の兵士達の姿を見つめる
ソフィアが澄んでいたはずの瞳を今は曇らせてベルナルドを見つめる。
抱きかかえている手元からの視線に気づいたベルナルドが
弱りきった青い瞳を守り抜きたい一身で見つめる。
「私を置いて逃げて下さい…… これでは親衛隊も助かりません……
早く、ベルナルド様…… 私は……」
ソフィアは失いそうになりそうな意識を無理をして保ちながらも
力から尽き果てた自分が、逃げるのに足手まといになってしまうのを気にかけている。
「お気持ちはよくわかりました…… 後は、全て任せて下さい」
ベルナルドが急いで兵士に用意させた
まだ汚れていない清潔な衣類を積み重ね、地面に敷きつめた
簡素なベッドの上にそっと仰向けに寝かしつけると。
ソフィアはベルナルドに自らの意思がしっかり伝わり
安心したのか、眠ったように目を閉じる。
「……貴方をここで置いて逃げるなんて
卑怯者と我が民に生涯に渡り蔑まされるぐらいなら、死んだほうが遥かにマシです」
王子としての立場もあるが、今後の戦いのあり方を考え抜いての
冷徹な計算さえ抜きにして、何よりも、貴方の前に愛すると
この場においても、言いたくても、言えないベルナルドに
ソフィアを置いて逃げる事が到底できるわけもない。
そして何よりも、王族として戦うべく真の勇気を授けてくれた恩人のソフィアを
ベルナルドは死しても、護り抜く決意ではなからここにいる。
「王子、そりゃいいですが、死んじまったら、何も護れませんぜ」
二人の話を聞いていたのか、いつのまにか一人の兵士が、近くで剣を構えている。
ソフィアに気を取られている最中に無防備になっている王子を
見るに見かねて、傍に来て警戒してくれていたらしい。
この良く顔を見知った兵士はベルナルドが王の命令で、親衛隊長に就任したために
何も問題もないのに副隊長に強制的に降格となった元隊長のラッセルだ。
「ほんと死んじまったら、護りたくてもな……
死神にちょいと気まぐれで睨まれただけで、人はあっさり土に返っちまうんだから」
自分も含めて、人の生死を嫌と言うほど見るような
数奇な人生を歩んできたラッセルは
隻眼の残された右眼に映った、ソフィアの様子が少し気にかかっていた。
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