最強の魔道師に成り上がって、人気者のアイドルをやってるんですけど、燃え尽きて死んじゃうぐらいやらないとダメな前のめりな性格なんです。

ちちんぷいぷい

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蒼きブレス

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それは、神の力が行使された破滅的な威力の決戦魔法に向かい
盾を掲げた親衛隊が皆、確実な死を覚悟し
全てを焼き尽くすような、灼熱の大蛇が口を開き全てを焼き払おうとする
獰猛な炎の牙を見せ、声にならない悲鳴をあげた、少女の頬をつたう
雫が、その清らかな身体から離れ落ちていく瞬間だった。

最後の力を振り絞り、漆黒の大盾を掲げている親衛隊の前に
立っていた人物は白いマント姿に、銀で装飾が施された衣服に身を包み
背丈が低く、小さな身体をしていた。

何が起こったか理解している暇さえなく
まるで死の間際に幻でも、見ているかのような
親衛隊の目の前に、突如現れ、背中を向けて立ちふさがった
人物はまるで魔道師のように呪文を詠唱し始める。

「ラー、ラー、ラーサ
太陽神ラーフィネル
古(いにしえ)の友との盟約したがい
その業火の全てを我に託せ」

風の巫女ラーシャを守り抜くため
全てを焼き尽くそうとする圧倒的な熱量の前に絶望的最後を向かえるしかない
魔道師達と親衛隊の兵士達の目の前で、奇跡を巻き起こそうとしている
呪文を詠唱し、その魔法の執行を宣言した、人物の声はたしかに少年のものだった。

「ラーステイムソリュート」

フードのないマントから見える頭髪が白い銀髪をしている少年は
ラーシャと同じで、年齢から明らかに戦場にいるには違和感があり
場違いでしかないが、その姿だけは、れっきとした魔道師である事を印象づけている。
しかし、少年の声や姿だけでなく、
呪文の詠唱内容に最長老のスフィルオルは驚きの表情を隠せない。

「ーーこの呪文はまさか、古代に失われた
神々との直接盟約呪文(デレクタナル)
そんな人を超えた魔道師が、もしや神々の使いか
いや神そのものかもしれん……」

少年の白い髪が自らの呪文で発生した膨大な
熱量で生じはじめた上昇気流で揺れている。

生じた始めたその炎が発している異様な色から
通常の魔道師なら自らの結界でさえ持ちこたえられず
魔法で出現した炎に魂までの全てを焼き尽くされるような
信じがたいような、通常の域を超えた超高熱なのは明らかだ。

気がつくと少年が生み出した膨大な熱量から
自らの身を護るための結界はラーシャ達に対してだけでなく
魔法による被害が及ばないように外に向かっての影響まで遮断している。

親衛隊の兵士達だけでなく、魔法を研究して知り尽くしているはずの
魔道師達までもが失われたはずの少年が詠唱する
初めて見る、伝説の魔法を息を呑んで見守る事しか出来ない。

「おおおっ」

何が起こっているのか、わからない親衛隊の隊長マージナスと兵士達だけでなく
エリサニア4賢者の一人とまで言われている最長老スフィルオルまで
滅多に出す事はない畏怖を込めた感情を露にしている。

全ての魔道師の頂点に立つ最高位の巫女である
ラーシャまでもが、自らを包み込む、結界に強大で圧倒的な魔力を感じ
一歩でも結界の外に出れば命はない事から、その場に只、立ち尽くすしかない。

「大きな力……、でも、まだ私とおなじ子供…… そんな……」

少女と言っても、ラーシャは一国の姫であり巫女として
戦場で戦う事が運命ずけられている特別な立場だ。

だが目の前にいる少年は自分と同じぐらいで
よほどの事がなければ戦場にいるような年齢ではない。

白い髪をした少年の放った強力な神々しい魔法はまるで
古代にラシアル大陸の大空に巨大な翼を広げて君臨していたと言う
伝説のシルバードラゴンの強力なブレスのごとく、その信じ難いような
高熱を示すように、青く煌くような神々しい輝きを放つ。

青き輝きは火の巫女ソフィアの放った赤き炎の大蛇に正面から襲いかかり
そこに何の障害もなかった様にその全てをあっという間に消し去る。

超高熱の青きブレスが灼熱の赤き大蛇をなぎ払う
その魔法の絶大なる威力に恐怖ではなく美しさえ感じ、目を奪われた
ラーシャとその配下の魔道師達と親衛隊が
奇跡の光景を引き起こした白い髪をした少年のいたはずの場所に
再び目を移すとその役割を終えると消え去った青き業火と同じように
煌くような青く澄んだ瞳をしていた
白い髪の少年は影も、形もなく、幻のように消え去っていた。

ラーシャは信じられない光景に、その場に只、立ち尽くすしかない。

「あれ、私…… 立ってる……」

気がつくと、疲労の極限で一人で立つことさえ
ままならなかったラーシャだけでなく
周囲の深く傷ついていた全ての魔道師達や
親衛隊の兵士達の傷も回復し、癒されている。

白い髪の少年は、失われた古代の呪文詠唱と同時に、結界で皆を包んで
回復の魔法で癒し、幻のように消え去ったのだ。

「ミストラルの水の巫女の癒しと同等、それ以上かもしれない」

通常の魔道師の力では癒す事はできず
回復魔法でさえ、死までの時間稼ぎにしかならないような
深く傷ついて、倒れて死を持つしかなかった、親衛隊員と魔道師達までもが
再び立ち上がり始めた奇跡のような一連の出来事を
ラーシャ達は、目の当たりにしていた。

ふと何かを感じて空を見上げると
白い小竜が、大空を舞い飛び去っていく。

小竜の姿が遠くになり見えなくなると、ラーシャは晴れ渡り
青く澄み切った空から、雪が舞い落ち始める気配を感じる。

「ラーシャ様、ラーシャ様っ、ご無事ですか、一体何が……」

後方での異様な事態を感じた一人の女性剣士が慌てた様子で
馬に乗って、ラーシャの身を案じて、駆け寄ってくる。

軽装で背中に矢筒と弓を背負い、手に持っていた剣を腰の鞘に納めた女性は
透きとおった白い肌をしていて、耳がラーシャよりも
はっきりわかるほど尖っている、神秘的で透き通った白い肌のエルフの女性だ。

「エミリア……雪が……
ミストラルの援軍…… 水の巫女の警告かもしれない
父上に早く撤退の知らせを出さない……と…… 急いで……」

言葉はエミリアにはその全ては届かなかったが
そう言って、馬から降りて近づいてきた
エルフの女性の前で、安心したのか気を失ってしまう。

エミリアは倒れるラーシャを、なんとか抱きかかえるが
晴れて、青く澄み切った空を仰いで見上げるだけしか出来ない。

「えっ、雪、ラーシャ様、どこに……」

巫女であるラーシャしか、気がつかない程のかすかに、雪が降る気配は幻ではなく
強力な魔法によって、戦場にたしかに舞い落ちようとしていた。
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