最強の魔道師に成り上がって、人気者のアイドルをやってるんですけど、燃え尽きて死んじゃうぐらいやらないとダメな前のめりな性格なんです。

ちちんぷいぷい

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公国の騎士

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アウグスト王は、戦場の後始末を
王弟のガリバルドに託し
後ろに、騎兵達を引き連れて
たった、一騎で、駆け抜けて行った
騎士の姿を追っていた。

先を急ぐ、王の後ろには
騎兵達が従って、ついて来ている。

戦いは、先ほど、終わったとはいえ
敵が追撃を待ち伏せしている
かもしれず、まだまだ、何が起るかもわからず
安心は出来ない。

王は後始末のために、戦いが終わった戦場を
駆けまわってくれた、騎士達の報告から
後方で、何が起きたかは、既に理解はしていた。

「王よ、ソフィアさまが……」
「それは本当か?」

「はい、間違いありません」
「しかし、水の巫女殿が、来ているはずだが」

「水の巫女さまは、どこにも見当たらないそうです」
「それでは、誰が、雪を降らしたのだ?」

「わからぬとのことです」
「巫女でもない者の仕業とすれば、まさか……」

「まさかと、申されますと」
「いや、それは、後にしておこう」

「わかりました、ベルナルド様の事ですが」
「ベルナルドは、ミストラルを、出迎えに行ったのか?」

「はい、ベルナルド様は、アリア様を、出迎えにいったとの事」
「ベルナルド、気持ちは解かる、しかし……」

「すでに、騎兵達は、集まってきております」
「すまぬ……」
 
「たった1騎で、しかも、間に合うというのか……」
「とにかく、急ぎ、後を追いましょう」

「後始末はガリバルド様に、任されるのですか」
「そうだ、ここは、やってもらう」

「では、準備が出来次第、行くぞ」
「はっ」

ベルナルドの抜きん出た強さは、王も知っている。
だが、王が心配するのも無理はない。
追撃を阻止しようとする、敵が待ち構えてるかもしれず
一人では危険だ。


渓谷を、急いで抜けようと
疾走するベルナルドの正面から
騎兵の集団が、向かってくる。

シーザリアが、撤退したすぐ後に
まるで誰かが、操っている芝居のように
都合よく、ミストラル軍が、こんな場所にいるはずがない。

追撃を待ち構えていた、敵がいたのだと思い、緊張が走る。

剣を抜いて、戦って、突破する、覚悟を決めるしかない。

「!?」

ベルナルドは、戦いで
死ぬはずだったところを
救ってくれたのは
腰にある剣ではないかと考えている。

再び、あの時と、同じ想いをこめて
剣を手にしようと、決意したその時だった。

正面から駆けて来ている、騎兵の集団から
槍先に、ついた軍旗が、素早く、掲げられる。

「!?」

こちらへ向かって、突き進んでいく
馬上で向かい風に、なびいている軍旗は
ミストラルのものだ。

まさかと思った、ベルナルドは
そのまま騎兵の集団の前まで駆けていき
前で立ちふさがる。

たった一人で、しかも
剣を抜いて、戦う構えも、見せておらず
さらに、上半身の鎧を脱ぎ捨てているためか
相手もそれほどまでに、警戒もしてないようだ。

「どう、どう、どう」
「ヒーヒヒヒ、ヒン」

「もしや、ミストラル軍か!」
「そうだが、こちらは先を急ぐ、速やかに前を、どかれよ」

先を急いでいるので、脇に避けてもらうために
警告として、軍旗を掲げたのだろう。

相手の期待とは逆に、馬を止め
わざと進路の前に立ちはだかっている。

「我が名は、ベルナルド・ブルーバー、ラーラント」
「ブルーバー、ラーラント!?本当か?」

「そうだ、貴国の同盟国、ラーラントの王太子だ」
「王太子さまなら、なぜ、たった1騎で、何用か?」

「水の巫女、アリア様を出迎えに来た、こちらも急いでいるんだ」
「アリア様なら、ここにはいない、後ほど渓谷に、お連れする」

「わかった、邪魔をして、すまない」
「わかったなら、速やかに、そこを、どかれよ」

たった1騎で、同盟国の王太子を名乗る
怪しい相手だと見られてしまっているようだ。

水の巫女、アリアを狙った、シーザリアの暗殺者かもしれないと
誤解されていて、アリアがいる事を隠しているのかもしれない。

シーザリアのヴェサリウス王は
この手の、行き過ぎているとしか思えない
ミストラル軍を装った
偽装作戦を、取るような人物とも思えない。

質問を終えたベルナルドは
馬を、ミストラル軍の前からどかせて
脇を走り抜けようとするが
すれ違いざまに護衛をしている
魔道師達が、いるためか
後ろには、ミストラルの騎兵が
監視役として、目を話さないように
警戒して、ついてきている。

先ほど話した、騎兵達の隊長ではないかと
思われる若い声をした騎士が、魔道師隊の方へ、駆けていく。

「おい、待て」

別の騎士が、慌てて駆けて、こちらに近づいて来る。

「隊長のリオルド様が、ゆっくりと走られよと」
「ミストラルのリオルド、あの、騎士がそうなのか?」

「そうだ、今やエリサニアで、知らぬ者はおるまい」
「理由は?」

「貴殿の目を見て、嘘を言っているとは思えないと、お考えのようだ」
「アリアさまがいるのか?」

「それは言えんが、もし本当に王太子様なら、無礼を許されたい」
「それは、構わないが」

騎士達が、警戒のため、アリアの存在を隠している
可能性もあるのではないかと、疑ってはいたので
いわれなくても、目で確認しやすいように
ミストラル軍のすぐ脇を、わざとゆっくりと、すれ違っていくつもりだ。

目線の先には、濃く青いフードつきマントを纏った
ミストラルの魔道師達がいるが、かなり人数も多く
どうみても、魔道師達の全員を引き連れてきているとしか思えない。

ミストラルの宮宰デュランは
思い切った事をする人物なのは、ベルナルドも知っている。

上半身の鎧を全て、脱ぎ捨てて来たのが
幸いしたのか、すれ違いざまに、こちらの姿を見て
ひと目で、わかったのだろう。


こちらを見つけてくれたのか
二人の魔道師が、十数名ぐらいの魔道師達を引き連れて
あわてて、馬を走らせ、駆け寄ってくる。

先ほど、魔道師達の所へ駆けて行った
リオルドも、一緒にこちらに来たようだ。

「ベルナルドさま! 王太子様!」
「アリアさま?」

ミストラルの濃く青いマントを纏った
魔道師達の中から、深く被っていたフードで
素顔を隠したままの魔道師が、こちらを見ている。

「これは、これは、殿下、おひさしゅうございまする」
「フェステルも、いるのか!」

アリアの、すぐそばにいた魔道師も
同じように、こちらを見ていて
老婆のような声から、すぐ、誰かわかってしまう。

この老婆の傍に
アリアがいても、なんら不思議ではない。

周辺にいる魔道師達も
フードで隠した、素顔こそ見せないが
こちらを、見知っているような雰囲気だ。

アリアが、青星(しょうせい)の魔道師達を
率いてきたのは間違いない。

「騎士の皆さま、この方は、敵ではありません」

アリアが、後ろについて来ていた
騎士達に、警戒を解かせる。

「ベルナルド様です、この方は、ラーラントの王太子さまです!」

「そ、そんな!」
「えっ!」
「なんと!」

「間違いありませんか、フェステルさま」
「間違うものか、リオルド殿」

「大変なご無礼をお許し下さい、ベルナルド殿下」

この騎士の名を、ベルナルドは知っているが、今は挨拶どころではない。

「同盟国の王太子を偽ってる者かを、見抜けないとは、大失態ですな」
「すみませぬ」
「急いでいましたので、つい……」
「面目ない」

もしやと思い、アリア達に知らせにいった隊長リオルド配下の
騎士達も、ようやく、警戒を解いて、信用してくれたようだ。

「礼など、失しても構わない、フェステル、そんなことは、今はどうでもいいんだ!」
「わかっておりまする」

「ソフィアが!アリアさまの、お力をお貸しください、何!?」

フェステルはなぜか、事情を全て知っているようだ。

「ミストラルは全て、承知していてアリアさまを、ここまで、お連れしました」

隊長のリオルドが、先ほどまでの嘘をあらためると
フードを深く被って、素顔を隠したままの魔道師がさらに近づいてくる。

「全て、わかっています、ベルナルドさま、急ぎましょう」

「アリアさま、なぜ? いや、わかっているならありがたい、急ぎましょう」
「はい、急ぎましょう、話は後で」

決死隊はミストラル軍から、腕に覚えのある者が志願し
命を捨てる覚悟で、ここまで駆けて来た
騎士達で編成されている、ミストラルの最精鋭だ。

魔道師隊を護衛してきたミストラルの決死隊と
渓谷を抜ける前に、合流した
ベルナルドは、騎兵達の隊長、リオルドと並んで
先頭を率いて、今度は先ほど戦争が終わった
戦場に向かって、急ぎ、舞い戻っていく。

すぐ後ろには、十数人の濃く青い
マントを纏って、フードを深く被っている
魔道師達が、続いている。

水の巫女アリアと、12人の青星(しょうせい)の魔道師達は
決死隊の隊長リオルドとベルナルドの、すぐ後ろにいる事にしたようだ。

ベルナルドが、アリア達に合流するまで、渓谷を抜けるために
1騎で駆けてきたが、隠れた場所から、弓や魔法で
狙い撃ちにされるどころか、敵の気配すら感じなかった事から
少しだけ警戒を緩めている。

さらに、後ろには、残りの決死隊の騎士達
そして、アリアや、賢者フェステルも含めた
ドルイドの称号を持つ
12人の青星(しょうせい)の魔道師達を除いた
メイジの称号を持っている、多数の魔道師達が続いていた。
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