運命(フォルテゥナ)

ライラ

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第0話 「女神と魔王」

第0話 ④「女神と魔王」〈カタルシス編〉

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アテネは、リンネを両手で優しく包むようにして、強く抱きしめた。その姿は、泣いていた。アテネ1人では、少しパニックになっていた為、正確な判断が出来なかった。なので、呑気に空中で会話をしながら、降りてくる2人に助けを求め叫んだ。

「サタン  !!   アレス  !!  」

何事かと驚いた2人は、即座に会話を止め、アテネの元へ降りてきた。

そして、翼を失くし、気を失っているリンネと、そのリンネを抱きしめ、泣き沈んでいるアテネを見た、アレスとサタンは、とてもショックを受けた。

アレスは、リンネに話しかけた。

「リンネくん  !!   生きてるかい  ?   息してる  ?  」

生存確認がしたかったのだろう。

サタンは、その状況を受け入れることが出来ず、こう言った。

「リンネ  !  翼は  ?  …  」

アレスは、リンネからの応答がないこと、リンネの背中から血が流れていること、など、状況を判断し、把握した。
そして、現場の状況、ここに来るまでに怪しい者はいなかったか、など、冷静に1人、頭を働かせた。すると、思い出す。

「あっ  !  さっきの天使たち  !!  」

サタンは、目の前のリンネとアテネしか頭にない状況だったが、この言葉は耳に入り、アレスに聞き返した。

「ん  ?   天使たち  ?  」

天使たちを殺してしまいそうなほど、怖い表情だった。

アレスは、苛立ちや葛藤を隠せず、自分の見た者をサタンとアテネに説明する。

「さっき、この場所から、急いで立ち去る天使たちを見た  !  何が知っているかもしれない  !   聞いてくる  !  」

アレスは、近所の神 2人と、天使たち3人を捕まえ、話を聞こうと、頭に血を昇らせ、追いかけようと考えまた。だが、怒りが込み上げ顔に出る。アレスは、この顔を見られたくなく、アテネとサタンに背を向けた。急いで翼を広げ、少し宙に浮いたその時だ。誰かがアレスのズボンの裾を掴んで、引き止めた。

「まって  !  …  アレス 」

そうゆっくり言ったのは、目を覚ましたばかりのリンネだった。

アレスは、体を止め、振り返った。
それと同時に、 引き止められた訳を知りたい欲で、 リンネの記憶を無意識に覗いてしまった。

「あの、天使たちの仕業か  !!  」

リンネの記憶を通し、真相を知ったアレスは、さらに怒り狂うような目つきになった。

だが、アテネは、そのアレスに腹を立て怒った。

「アレス  !  まさか  !!  記憶を覗いたの  ?  」

アレスは、はっと気づき、目を下の方にむけ謝る。

「あ  …  うん  !  …  ごめん  !  覗くつもりは  …  」

記憶を覗くという行為は、相手のフラッシュバックを得て、見ることができるのである。なので、アテネは、アレスに記憶を覗かれ、リンネの苦しむような表情を見た。だから、怒っていたのだった。
そうとも知らず、サタンは、近所に住む神  2人と、天使 3人に対し、腸が煮えくり返るような怒りを見せた。

「ここに住む神と天使どもが  ?  、リンネをこんなにしやがったのか  ??  !!  」

サタンは、強く顔を歪ませ、アレスに問うた。

アレスは、それを少し怖いと怯え、答える。

「はっ  …  はい  !   崩壊のエデンで【  カタルシス  】を遣って  !  」

サタンは、さらに強く顔を歪ませ、瘴気まで放ち、激怒した。

「崩壊だと  !!  。【  カタルシス  】…  。許せん  !  。神と天使ども  !  、許せん  !!  」

サタンは、黒い翼を広げ初め、近所の神2人と天使3人どころか大量に殺しそうな。そんな様子で、この場を去ろうとしていた。それをアテネが、止める。

「サタン  !  、サタン  !!   落ち着いて  !!  」

この言葉は、サタンには届かなかった。アテネはアレスに叫んだ。

「アレス  !  サタンを止めて  !!  」

アレスは、返事をし、素早く動いた。
サタンの前で、両手を大きく広げ、通せんぼし、言った。

「サタンさん  !  大丈夫だ  !   落ち着いて  !  」

「うるさい  !!  黙れ  !!   アレス  !!  」

と、サタンは、前にいるアレスを片手で掴んで振り落とし、もう片方の手の爪で右頬に引っかき傷を与えてしまった。が、気にとめず、サタンは、落ち着けない。今にも我を忘れ、暴れだしそうだ。そんな姿にアレスは、怯え、何も出来なくなり、固まっていた。

その時  !!  、リンネが痛みを我慢しながら、ゆっくり小さい口をあけ言った。

「おとう  …  さん  …   !  。これはね  …  、 僕が自分で  …  やったことだ  …  。ごめんね  …  おとうさん  …  。」

それを聞いたサタンは、怒りの顔を笑顔に変えた。

「なんだ  !  、お前がやったのか  !   そうか、そうか  !  」

アレスは、口を挟む。

「んっ  ?  リンネくんが自分で翼を  ??  分かるよね  !  、違うよ  !  」

アテネは、俯きながら、アレスに強くあたる。

「アレス  !   もういいの  !!  」

アレスは、状況を呑み込めず、

「よくないよ  !!  。  さっきの天使達  、 探してくる  !!  」

と、混濁した表情を残し、空へ飛んで行った。

「  アッ  …  アレス  …  …  まって  」

リンネは、少し焦る表情を見せた。
近所の神々・天使たちを庇おうとしていたからだ。その事に気づいていたアテネとサタン。

アテネは、リンネを再び抱きしめ言った。

「リンネ  、  大丈夫よ  !  自分のことを考えてね。 痛みはない  ?  」

「あるに決まってるだろ  ?!  。  こんなに血が  …   !  」

サタンも、リンネのそばに寄り添い心配を示した。

アテネは、サタンに相談した。

「ねぇ、サタン  !   どうにか出来ない  ?  」

「んー、この世界だしな、 もう魔力は遣えない」

「そうよね  ~  …  …  。」

どうすることも出来ないのかとアテネは、思ったが、1つ、喜びに溢れたように閃いた。

「あっ  !!  パナケイア様の所へ連れていきましょう  !  」

「ん  、  だれ  ?  それ  ?  」

「医者よ  !   医術、癒しを司る女神様なの  !  あっでも  …  サタンは来ないで  。  」

「なぜだ  ?!  」

「パナケイア様は、魔界が魔界の者が、大っ嫌いな方だから」

サタンは、何も言えず、飲み込んだ。

「あぁ、分かった  ...   気をつけて  !  」

アテネは、 リンネを抱えて、 パナケイア様という女神のいる神殿へと向かって、飛んで行った。

1人残されたサタンは、家に帰って、 アレスとアテネの帰りを待つことにした。

アテネは、ものすごい速さで空を飛び、パナケイア様の神殿に到着した。ここは、ミクロスから、50000km程、離れた場所にあり、神を基準にすると、移動時間は、5時間かかる。それをアテネは今回、2時間で到着した。

アテネは、息を切らせながら、呼び叫んだ。

「パナケイア様  !  …  パナケイア様  !!  アテネです  。   …  パナケイア様  !!  」

【続く】
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