三人のママ友

たんぽぽ。

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【ママ友、三人】

ユリ、いつもの公園(プロローグ)

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 頭上からは梅雨の晴れ間の日差しが容赦なく降り注いでいる。

 公園の樹々は生き生きと葉を茂らせ、ユリたち三人の足元に投げかける影の濃さは、真夏へと向かう季節を嫌でも実感させる。

 七月に入れば、あっという間に夏休みだ。少なくとも週に二、三日は、炎天下にママ友と顔を合わせなければならないだろう。

 ユリは帽子のつばを何気なく片手で触り、公園で遊ぶ子どもたちを横目で見ながらマミコの愚痴に耳を傾ける。

「大体さぁ、担任と副担任、二人とも若手ってどういうことなのかしら。普通、片方はベテランを配置するわよねぇ」

 延々と続くその声は、突発的に起こる子どもたちの歓声にも負けずよく通る。幼稚園の不満を並べ立てるのは、もはやマミコの習慣みたいなものだ。

 ユリは、できれば子どもの前での陰口は慎んでほしかった。小さな子でも意外と聞いているものだ。しかしマミコは寸分の隙もなく化粧を施した顔を歪め、休むことなく口を動かしている。

「いたい!」

 ユリの一人息子であるケイタが悲鳴をあげた。マミコの息子のハルが、ケイタの横を無理やり通るかたちで滑り台を登っているのだ。

 四月生まれで体の大きいハルに押され、金属製の手すりに体を押し付けられてケイタは泣く寸前に見えた。

 いつものことだ。幼いながらも息子たちにはすでに序列が出来ているらしく、ハルはケイタを子分か何かだと思っている節がある。

 しかし加害者の親であるはずのマミコは「こーら! ダメよ!」と一声注意しただけで、すぐにこちらに向き直った。鮮やかなフラワープリントのスカートの裾が、ユリの視界の端でふわりと揺れる。

 ──もっとちゃんと注意してよ。

 ユリは不満に思うが、息子はハルと遊びたがるし、遊び相手がいなくなるよりは、と自らに言い聞かせている。

 現に、ケイタはすぐに「まってよー」と言いながらハルの後について段を上がりだした。

 もう一人のママ友、ミズホは目の前にいるのに心ここに在らずといった風情で佇んでいる。マミコとは対照的に化粧気のない顔を心持ち上向かせ、熱心に何かを見つめている様子で、時々マミコに対してずれた相槌を打つ。こめかみから滴る汗を拭いもしない。

 視線を追うと、木の梢にとまったカラスの姿があった。全身黒尽くめの鳥は、常に黒っぽい服装と染めたことなど一度もないような髪のミズホによく似ていた。

 ミズホは悪い人ではないが、かなり変わっているとユリは思う。付き合いだしてすぐの頃に道端のクサイチゴの実をためらいもせずに食べたことで不審に思い、初めて一緒に食事をした時にはドリンクバーでジンジャーエールとオレンジジュースとウーロン茶を混ぜたのを見て確信したのだ。

 その息子のユズルは、母親に見た目も性格もそっくりだ。親子ともども捉えどころのない性格で、何を考えているのかわからないところがある。

 ユズルはいつも虫を見て、時々ケイタたちと遊んで、また虫を見て、を繰り返す。今もブランコとフェンスの間にしゃがみ込み、アリの行列を石で妨害して遊んでいる。と思ったら突然立ち上がり、走ってケイタたちと合流した。

 三人は、今度は鬼が誰だかわからない追いかけっこを始めた。

 ケイタとハルはしょっちゅう小競り合いを起こすし、ユズルは輪からちょくちょく外れるしで、一見三人の相性は悪いようにも見える。が、結局は仲良く遊んでいるのだから、男児の友情はよくわからないとユリは思う。

 ユリは絶えず息子たちの方へ視線を送っているのに、マミコは自分の子どものことなどそっちのけで、相変わらずペラペラと愚痴をこぼしている。

 ふと辺りを見渡すと、公園裏の小道をサラリーマン風の男が通った。目が合ったので会釈をしようかどうか迷う内に慌てて逸らされた。

 端から見れば、自分たちは噂話に興じる暇な主婦三人組に見えるのだろうか。ユリは無性に情けなくなった。
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