お願い! 猫又先生!

たんぽぽ。

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モニャンガールのバニャニャの叩き売り

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 僕はゴミ袋と軍手を用意して、先生と一緒に家を出た。急須は駐車場の茂みに隠しておいた。

 並んで道を歩く。猫と一緒に歩くなんて新鮮だなぁ。

 あっ、でもこのままはちょっとまずいかも……。

「先生、しっぽを見た人がびっくりしちゃうよ」

 最悪捕まえられて、見世物小屋に売り飛ばされちゃう。

「確かにそうだな。しゃあない、アレを使うか。……ネコマクマヤコン、ネコマクマヤコン、モダンなJJ(女子尋常小学生)になれ~♫」

 脚を止めて歌うように唱えると、先生の姿は僕と同じくらいの年の女の子に変わった。結構かわいい。というかすごくかわいい。

 でも服が変わってる。リボンの付いた釣鐘みたいな形の赤い帽子に、やたら大きくて白いえり付きのこれまた真っ赤っかなワンピースを着ている。ワンピースはひざ下まであってゆるっとしてて、ウエストが大きなバラのついたヒモでキュッととめてある。髪はショートカットで、もみあげの部分が前にクルンとカールしてる。

 とてもオシャレだけど目がチカチカする。

「その格好、変更できないかな?」

 ほら、下校途中らしいお兄さんお姉さんがジロジロこっちを見てる。

「何だ? 贅沢だな。最先端のファッションだぞ。モダン・ガールってヤツだ。お前は親孝行だから出血大サービスしてやったんだからな」

 先生は親切でやってくれたらしい。でもダミ声とルックスのミスマッチっぷりがハンパないし、知り合いに会ったら面倒そうだ。

「大正時代のノリはやめて、目立っちゃう。せめて令和のJS(女子小学生)で頼むよ」

 ホントはしっぽを一本減らすだけでいいんだけど、可愛い女の子と一緒に歩くのはやっぱり気分がいいんだ。

「わかったわかった。ネコマクマヤコン、ネコマクマヤコン、イケてるJSになれ~♫」

 先生はそう言ってまた化けて、膝丈のかっちりした黄色いAラインのジャンパースカートに黒の半袖シャツ、足元は茶色のブーツのカッコかわいいJSに変身した。茶髪でセミロングのシャギーカットがとても軽やか。よし、これなら自然だ。

 それから僕は道に落ちてるタバコの吸殻や空き缶、ペットボトルやお菓子の袋などをひたすら拾って歩いた。

 先生がついつい猫の習性で塀に乗って歩いたり後脚で顔を掻いたり、チョウを見つけて飛びかかったりする以外はスムーズに進んだ。次第にゴミ袋が重くなってくる。

 2時間くらい経った。僕達は結構人通りの多い広めの歩道を歩いてる。

「もう夕方だよ。まだやるの?」

 いい加減足が疲れてきちゃった。

「まだだ。オレの目算ではそろそろ……」

 先生が何か言おうとした時、一人のオジさんに声を掛けられた。

 髪が半分くらい白髪で、お父さんの着てるスーツとは明らかに違うピッカピカで上等そうなスーツを身につけている。

「君達ゴミ拾いかい? 感心感心」

「あ、いえ……」

僕は褒められたのが照れ臭くて、うまく返事ができなかった。

「何とかしてこの男を引きとめろ」

 先生が小声で僕に命じた。もしかしてこの人が願い事のキーパーソン? でも引きとめろったって、どうすれば……。

「じゃあ、もう暗くなるから気をつけなさいね」

「あっ、はい……さようなら……」

 あぁ、行ってしまうぞ。

「しゃあねぇな、特別だぞ! ニャハリクニャハリタ、ニャンバラニャンニャンニャン‼︎」

 先生が叫ぶと、彼の目の前にバナナが山と積まれた台が現れた。

「サァサァ買った! サァ買った‼︎ サァ1房10万円からだよ‼︎」

 なんと先生、路上でバナナの叩き売りを始めちゃった! それにしても10万とはぼったくりすぎじゃないか?

「ちょいとそこ行く小粋なねぇさん!  寄ってらっしゃい、見てらっしゃい! 」

 イケてる令和のJSが妙な口上を述べているのがただでさえ目立つし、ダミ声が良く響くから人がたくさん集まってきた。半分白髪のオジさんも「こりゃレトロだねぇ」と言って立ち止まって聞いている。

「バナバナバナナン、バナバナナン! シュガースポットがオシャレだね! 美◯明宏みわあ◯きひろの髪の毛くらい黄色いバナナ、美味しいヨ! 金運もUPしちゃうかも⁈」

 バナナは1房500円まで値下がりした。

「まだ高いヨ!」

「もっと負けてヨ!」

 見物人から声が飛んで、最終的にバナナは1房300円に落ち着いた。そして飛ぶように売れていった。

 オジさんも列に並んでいる。僕も欲しいけど、お金がない……先生、後からくれないかな?

 指をくわえて見ていると、

「少年、これあげるよ。食べてまた頑張りなさいね」

と、さっきのオジさんがバナナをくれたんだ。なんていい人なんだ……。

「ありがとうございます!」

 帰ったらお父さん達にも分けてあげよう。

 その時背後から、

「コウタ、ここにいたのか! 探したぞ!」

と声がして、振り向くとお父さんが立っていた。

 いけない、暗くなるまで外にいたから怒られちゃうかも……。そしたら、

「あっあなたは御社の……‼︎」

 お父さんはオジさんを見て驚いている。ひょっとして知り合いか?

「あぁ、君は今日面接に来た方だね。この少年の親御さんかい?」

「はい、そうですが……コウタが何かやらかしましたか?」

 お父さんは不安そうだけど、僕は何もしてないよ。失礼だなぁ。でも面接って事は、お父さん会社辞めてたのかな? なるほどモンゴルに行きたがってたのはそういう訳か。

 この間にも先生のバナナはどんどん売れてて、もうほとんど残ってない。

「面接中急に遠い目でモンゴルの羊の話をし出すし、満場一致で君を不採用にする事に決まったんだが、この感心な少年を路頭に迷わす訳にはいかない。他の人の採用がもう決まったから、採用人数を増やして君をうちに入れる事にするよ」

「本当ですか! ありがとうございます‼︎」

 お父さんは何度も頭を下げている。白髪のオジさんは、お父さんが受けた会社の偉い人だったみたい。それにしても非常に都合の良い話だなぁ……。

 でもこれでお父さんが元気になるなら結果オーライだよね!
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