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そうだ! ボニャンティア行くぞ!
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ところで僕のお母さんは毎月決まった額のお小遣いをくれなくて、僕が欲しいと言ったものを独断で買うかどうか決めるタイプの母親だった。
でもあの三毛猫の猫又のおかげで、確かに手伝いをすると小遣いをくれるタイプの母親に変化していた。
ひとまず簡単そうな風呂掃除をやってみたら「バラの花4本分……」と言いながら20円をくれたのだ。
それから僕は頑張った。掃除機かけ、食器洗い、洗濯物たたみ、靴磨き、町内会の当番の草むしりからゴミ置場の清掃まで。
共働きで家事を半々ずつ分担している夫婦の、夫が中途半端に家事をやって妻が二度手間だとキレるパターンの失敗を、僕は決して犯さなかった。
つまり食器洗いの時見逃しがちなフライパンなど大物の洗浄や排水口の掃除、風呂掃除の時に見逃しがちな排水口の掃除やシャンプー類の補充、掃除機かけの時に見逃しがちなゴミパックの交換なんかも忘れなかった。
もちろんゴミ出しは用意されたゴミをただゴミ捨て場まで平行移動させるだけではドヤ顔をする権利はなくて、分別したりゴミ袋をまとめたりセットするまでがゴミ出しだよね。
それからトイレットペーパーの交換や郵便物の確認、乾燥した食器を棚に片付けたりと、いわゆる「名もなき家事」も頑張った。僕は主夫に向いてるのかもしれない。
すると努力を認めてくれたのか、お母さんは手伝いの単価を上げてくれた。風呂掃除が20円から22円に、食器洗いが25円から30円になったのだ。
中でも夕食を作ると一度に50円ももらえるから、僕は毎日料理を頑張った。そしてついにはだし巻き卵からブリ大根からビーフストロガノフまでを極め、特に煮物料理において僕の腕前は熟練の域に達した。
でも1日にせいぜい100円ちょっとしか稼げなくて、「ニワトリッチ」を買うための税込3278円を貯めるには1ヶ月もかかってしまった。
ようやく「ニワトリッチ」を手に入れた僕は、次の朝喜び勇んで登校した。これで仲間ハズレにされないですむぞ!
✳︎
……放課後、僕はトボトボと靴の先っぽを見つめて家に帰った。
なんと「ニワトリッチ」のブームは過ぎ去っていて、クラスの皆は「ミラクルヨーヨー」で遊んでいたんだ。
遅すぎた。またしても僕はひとりぼっちだ。
決めた! 2つ目の願い事は「ミラクルヨーヨー」にしよう!
そう決心して家のドアを開けると、玄関にお父さんの靴があった。今日はやけに早いな。
テレビの部屋に行くと、お父さんは座ってボーッとテレビを見ていた。お母さんは買い物にでも行ったのか姿が見えない。
「ただいま、どうしたのお父さん」
お父さんはゆっくりとこっちを向いた。その目は死んだ魚みたいに濁ってる。いや、こう言うと死んだ魚に悪いんじゃないか? ってくらい生気がない。どうしたんだろう。
「帰ったのか、コウタ。……なぁ、人は何故生きるんだろうなぁ。……俺はモンゴルの遊牧民になりたい。羊と共に、暮らしたい」
完全に現実逃避発言だ。何かあったのかな。そもそも遊牧民にも遊牧民なりの悩みがあると思うけど……。
「お父さん大丈夫?」
お父さんは答えずに、テレビをつけたまんま自分の部屋にふらふらと入っちゃった。
まずいぞ。これじゃ押入れの急須を取り出せない。先生を呼び出せないぞ。1つ目の願い事を最終的に叶えてくれたから、僕は敬意を込めて猫又の事を先生と呼ぼうと決めたんだ。
しばらく待って、お父さんがトイレに立ったのを見はからってから、僕は急いで急須を持ち出した。家の中はなんとなくまずいから、アパートの駐車場の隅にしゃがんで急須をこすった。ここなら目立たないだろう。
「呼ばれて飛び出てニャニャニャニャーン‼︎」
先生はまたダミ声と共に飛び出して来た。セリフのオリジナリティが皆無だけど、彼にはプライドがないのかな?
「ほう、今度は外か。空気が美味いな」
先生は深呼吸をしている。
「先生! 無事に『ニワトリッチ』買えたよ、その節はありがとう」
僕はまずはお礼を言った。
「どいたま~。先生とはまた照れますな」
先生はまんざらでも無さそうだ。
「2つ目と3つ目の願い事が決まった。まず2つ目だけど、今度は『ミラクルヨーヨー』が欲しいんだ」
「また手伝いをして金を貯めればいいだろう」
「すぐじゃなきゃダメなんだよ。ブームは過ぎ去る事矢の如しだからね、うかうかしてると乗り遅れちゃう」
「なるほどな。で、3つ目は何だ?」
「お父さんを元気にして欲しいんだ。遠い異国に想いを馳せてたし、目つきもヤバかったからすごく心配で」
それに、あんなに仲が良かったのに最近はお母さんとあまり話さなくなった。
「なかなかの孝行息子じゃないか。ちょっと待ってろ」
先生はまたポクポクポクチーンの一連の流れをやって、
「見えた!」
と叫んだ。
「……ボランティアだ」
「ボランティア?」
「ゴミ拾いに行くぞ! 準備しろ」
「わかった」
そうは言ったけど、ボランティアと2つの願い事の間にどんな関係があるんだろう? でも回りくどいやり方できっと助けてくれるんだろう。
でもあの三毛猫の猫又のおかげで、確かに手伝いをすると小遣いをくれるタイプの母親に変化していた。
ひとまず簡単そうな風呂掃除をやってみたら「バラの花4本分……」と言いながら20円をくれたのだ。
それから僕は頑張った。掃除機かけ、食器洗い、洗濯物たたみ、靴磨き、町内会の当番の草むしりからゴミ置場の清掃まで。
共働きで家事を半々ずつ分担している夫婦の、夫が中途半端に家事をやって妻が二度手間だとキレるパターンの失敗を、僕は決して犯さなかった。
つまり食器洗いの時見逃しがちなフライパンなど大物の洗浄や排水口の掃除、風呂掃除の時に見逃しがちな排水口の掃除やシャンプー類の補充、掃除機かけの時に見逃しがちなゴミパックの交換なんかも忘れなかった。
もちろんゴミ出しは用意されたゴミをただゴミ捨て場まで平行移動させるだけではドヤ顔をする権利はなくて、分別したりゴミ袋をまとめたりセットするまでがゴミ出しだよね。
それからトイレットペーパーの交換や郵便物の確認、乾燥した食器を棚に片付けたりと、いわゆる「名もなき家事」も頑張った。僕は主夫に向いてるのかもしれない。
すると努力を認めてくれたのか、お母さんは手伝いの単価を上げてくれた。風呂掃除が20円から22円に、食器洗いが25円から30円になったのだ。
中でも夕食を作ると一度に50円ももらえるから、僕は毎日料理を頑張った。そしてついにはだし巻き卵からブリ大根からビーフストロガノフまでを極め、特に煮物料理において僕の腕前は熟練の域に達した。
でも1日にせいぜい100円ちょっとしか稼げなくて、「ニワトリッチ」を買うための税込3278円を貯めるには1ヶ月もかかってしまった。
ようやく「ニワトリッチ」を手に入れた僕は、次の朝喜び勇んで登校した。これで仲間ハズレにされないですむぞ!
✳︎
……放課後、僕はトボトボと靴の先っぽを見つめて家に帰った。
なんと「ニワトリッチ」のブームは過ぎ去っていて、クラスの皆は「ミラクルヨーヨー」で遊んでいたんだ。
遅すぎた。またしても僕はひとりぼっちだ。
決めた! 2つ目の願い事は「ミラクルヨーヨー」にしよう!
そう決心して家のドアを開けると、玄関にお父さんの靴があった。今日はやけに早いな。
テレビの部屋に行くと、お父さんは座ってボーッとテレビを見ていた。お母さんは買い物にでも行ったのか姿が見えない。
「ただいま、どうしたのお父さん」
お父さんはゆっくりとこっちを向いた。その目は死んだ魚みたいに濁ってる。いや、こう言うと死んだ魚に悪いんじゃないか? ってくらい生気がない。どうしたんだろう。
「帰ったのか、コウタ。……なぁ、人は何故生きるんだろうなぁ。……俺はモンゴルの遊牧民になりたい。羊と共に、暮らしたい」
完全に現実逃避発言だ。何かあったのかな。そもそも遊牧民にも遊牧民なりの悩みがあると思うけど……。
「お父さん大丈夫?」
お父さんは答えずに、テレビをつけたまんま自分の部屋にふらふらと入っちゃった。
まずいぞ。これじゃ押入れの急須を取り出せない。先生を呼び出せないぞ。1つ目の願い事を最終的に叶えてくれたから、僕は敬意を込めて猫又の事を先生と呼ぼうと決めたんだ。
しばらく待って、お父さんがトイレに立ったのを見はからってから、僕は急いで急須を持ち出した。家の中はなんとなくまずいから、アパートの駐車場の隅にしゃがんで急須をこすった。ここなら目立たないだろう。
「呼ばれて飛び出てニャニャニャニャーン‼︎」
先生はまたダミ声と共に飛び出して来た。セリフのオリジナリティが皆無だけど、彼にはプライドがないのかな?
「ほう、今度は外か。空気が美味いな」
先生は深呼吸をしている。
「先生! 無事に『ニワトリッチ』買えたよ、その節はありがとう」
僕はまずはお礼を言った。
「どいたま~。先生とはまた照れますな」
先生はまんざらでも無さそうだ。
「2つ目と3つ目の願い事が決まった。まず2つ目だけど、今度は『ミラクルヨーヨー』が欲しいんだ」
「また手伝いをして金を貯めればいいだろう」
「すぐじゃなきゃダメなんだよ。ブームは過ぎ去る事矢の如しだからね、うかうかしてると乗り遅れちゃう」
「なるほどな。で、3つ目は何だ?」
「お父さんを元気にして欲しいんだ。遠い異国に想いを馳せてたし、目つきもヤバかったからすごく心配で」
それに、あんなに仲が良かったのに最近はお母さんとあまり話さなくなった。
「なかなかの孝行息子じゃないか。ちょっと待ってろ」
先生はまたポクポクポクチーンの一連の流れをやって、
「見えた!」
と叫んだ。
「……ボランティアだ」
「ボランティア?」
「ゴミ拾いに行くぞ! 準備しろ」
「わかった」
そうは言ったけど、ボランティアと2つの願い事の間にどんな関係があるんだろう? でも回りくどいやり方できっと助けてくれるんだろう。
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