2 / 4
裏切りのキャッフェテラス
しおりを挟む
……2ヶ月後。
午後3時、小洒落たキャッフェテラス。
あたし達いつもの仲良しグループ5人はやたら高くて座りにくい椅子に腰掛け、原価と定価の開きが凄まじいドリンクを前に、今日はどこか緊張気味だ。
「ちょっとユッコ、もったいぶらないで早く言いなさいよー」
ストローの先でハイパータピオカクリームコーヒーのクリーム部分をすくいながら、サナエが口を開く。
あたしたち4人はユッコに呼び出されてここにいる。あたしの胸中には嫌な予感が渦巻いていて、多分それはヨシエもカナもサナエも同じだと思う。
なんてったってユッコ、いつもと雰囲気が違う。彼女の背景だけ何故か薔薇が咲き乱れ極彩色の蝶が舞い、ワライカワセミがけたたましく鳴いているのだ!
「まぁまぁ、そう慌てなさんなって」
そう言ってユッコは季節限定スペシャルチョコレーツピーチパセリセージローズマリーアンターイムオヨビフローズゥンキャラメリーノペペロンチーノフラペッツィィーーノッのカップを左手でお上品に傾ける。
それからおもむろに、右手を挙げて手の甲をあたし達に向けた。なんと薬指には、きらめくリングが……!
「実はアタシ、彼ピが出来ましたぁ~~~‼︎」
「「「「ヌァァァーニーーー⁈」」」」
ある程度予想はしてたけど、やっぱり叫んじゃった。
「ちょっと! シェアハウスはどうしたのよ‼︎ 裏切り者‼︎」
「どこで知り合ったの? ねぇ⁈ 騙されてるとかじゃないわよね⁈」
「名前は⁈ 何してる人⁈ 長男⁈ 二男⁈ 三男⁈ 四男⁈」
「親は存命? 年収は? 車は軽? 普通車? 一人暮らし? それとも実家⁈」
あたし達は腰を浮かせてユッコを問い詰めるけど、バラ色ホッペと星のいっぱい入った瞳をして、辺り一面にキラキラをまき散らすユッコは全く動じない。
彼女は黒魔術の呪文のような名称のドリンクを余裕の表情で一気にゴクリと飲み干した。
「みんな、そんながっついてると男は逃げちゃうゾ~」
イラっとする前置きをドヤ顔で吐き、マシンガンのように喋り出す。
「こないだ職場の先輩に合コンに誘われて~、相手は先輩だからさ、断りにくいじゃん? アタシは全然乗り気じゃなかったんだけど、まぁ適当に食べてすぐに帰ろうと思って行ったの。向こうは全員M電機の社員で、ほら、M電機と言えば東証一部上場企業で年収も高めでしょ。かと言ってアタシ、そんな年収とかこだわらないし、居酒屋でもガツガツ行かずに大人しくしてたのね。そしたらさ、一番右っ側にいたジャニーズ系の男がアタシばっかりに話し掛けてくんの。最初はウザいな~って思って流してたんだけど、あんまりしつこいし熱心だから可哀想になってきて、連絡先交換してあげた」
ユッコのトークはとどまる所を知らない。
「そんで、その日から何度も何度もラインが来るから、仕方なくまた会って二人で映画観に行ったの。帰りにレストラン、ちゃんとした夜景の見えるトコね、あ、もちろん奢りよ。そこで付き合おうって告白されて、今に至るのでぇす!」
その後もユッコは彼ピッピの趣味や出身大学や会社での仕事内容、両親や祖父母のことをひたすら喋り続けた。
果ては彼ピッピの昔飼っていた猫が押入れで仔猫を4匹産んで家中が上を下への大騒ぎになったという、世界で最もどーでも良い話まで聞かされた。
あたしは彼ピッピ関連の話題を終わらせようと、試しにいろんな話を振ってみた。
「昨日の日経平均が……」
「昨日の日経平均と言えば、彼ピッピがさァ~~」
「うちの弟が切れ痔になって痛い痛いって……」
「うちの弟の切れ痔と言えば、彼ピッピがァ~~」
「三角関数が……」
「三角関数と言えばさぁ、サインコサイン彼ピッピ~~」
すげぇ……すげぇよユッコ。あんた、まるで彼ピッピの錬金術師や~~‼︎
こちとらしつこい便秘ッピに一週間も悩まされてるんですけどォ~~~‼︎‼︎
するとユッコのスマホがピロン♪ と鳴った。
「あ、彼ピッピからだぁ! 何々? この近くまで来てるって! 彼ピッピ、アタシが浮気してないか心配してるっぽい。んもう、困っちゃうん~! じゃあまたね~!」
ユッコは風みたいに去ってった。あたし達はそれを、呆然と見送った。
そして数分後、みんな我に返って絶叫した。
「「「「別れたらマジウケるよね~!(つーか別れろ!)」」」」
午後3時、小洒落たキャッフェテラス。
あたし達いつもの仲良しグループ5人はやたら高くて座りにくい椅子に腰掛け、原価と定価の開きが凄まじいドリンクを前に、今日はどこか緊張気味だ。
「ちょっとユッコ、もったいぶらないで早く言いなさいよー」
ストローの先でハイパータピオカクリームコーヒーのクリーム部分をすくいながら、サナエが口を開く。
あたしたち4人はユッコに呼び出されてここにいる。あたしの胸中には嫌な予感が渦巻いていて、多分それはヨシエもカナもサナエも同じだと思う。
なんてったってユッコ、いつもと雰囲気が違う。彼女の背景だけ何故か薔薇が咲き乱れ極彩色の蝶が舞い、ワライカワセミがけたたましく鳴いているのだ!
「まぁまぁ、そう慌てなさんなって」
そう言ってユッコは季節限定スペシャルチョコレーツピーチパセリセージローズマリーアンターイムオヨビフローズゥンキャラメリーノペペロンチーノフラペッツィィーーノッのカップを左手でお上品に傾ける。
それからおもむろに、右手を挙げて手の甲をあたし達に向けた。なんと薬指には、きらめくリングが……!
「実はアタシ、彼ピが出来ましたぁ~~~‼︎」
「「「「ヌァァァーニーーー⁈」」」」
ある程度予想はしてたけど、やっぱり叫んじゃった。
「ちょっと! シェアハウスはどうしたのよ‼︎ 裏切り者‼︎」
「どこで知り合ったの? ねぇ⁈ 騙されてるとかじゃないわよね⁈」
「名前は⁈ 何してる人⁈ 長男⁈ 二男⁈ 三男⁈ 四男⁈」
「親は存命? 年収は? 車は軽? 普通車? 一人暮らし? それとも実家⁈」
あたし達は腰を浮かせてユッコを問い詰めるけど、バラ色ホッペと星のいっぱい入った瞳をして、辺り一面にキラキラをまき散らすユッコは全く動じない。
彼女は黒魔術の呪文のような名称のドリンクを余裕の表情で一気にゴクリと飲み干した。
「みんな、そんながっついてると男は逃げちゃうゾ~」
イラっとする前置きをドヤ顔で吐き、マシンガンのように喋り出す。
「こないだ職場の先輩に合コンに誘われて~、相手は先輩だからさ、断りにくいじゃん? アタシは全然乗り気じゃなかったんだけど、まぁ適当に食べてすぐに帰ろうと思って行ったの。向こうは全員M電機の社員で、ほら、M電機と言えば東証一部上場企業で年収も高めでしょ。かと言ってアタシ、そんな年収とかこだわらないし、居酒屋でもガツガツ行かずに大人しくしてたのね。そしたらさ、一番右っ側にいたジャニーズ系の男がアタシばっかりに話し掛けてくんの。最初はウザいな~って思って流してたんだけど、あんまりしつこいし熱心だから可哀想になってきて、連絡先交換してあげた」
ユッコのトークはとどまる所を知らない。
「そんで、その日から何度も何度もラインが来るから、仕方なくまた会って二人で映画観に行ったの。帰りにレストラン、ちゃんとした夜景の見えるトコね、あ、もちろん奢りよ。そこで付き合おうって告白されて、今に至るのでぇす!」
その後もユッコは彼ピッピの趣味や出身大学や会社での仕事内容、両親や祖父母のことをひたすら喋り続けた。
果ては彼ピッピの昔飼っていた猫が押入れで仔猫を4匹産んで家中が上を下への大騒ぎになったという、世界で最もどーでも良い話まで聞かされた。
あたしは彼ピッピ関連の話題を終わらせようと、試しにいろんな話を振ってみた。
「昨日の日経平均が……」
「昨日の日経平均と言えば、彼ピッピがさァ~~」
「うちの弟が切れ痔になって痛い痛いって……」
「うちの弟の切れ痔と言えば、彼ピッピがァ~~」
「三角関数が……」
「三角関数と言えばさぁ、サインコサイン彼ピッピ~~」
すげぇ……すげぇよユッコ。あんた、まるで彼ピッピの錬金術師や~~‼︎
こちとらしつこい便秘ッピに一週間も悩まされてるんですけどォ~~~‼︎‼︎
するとユッコのスマホがピロン♪ と鳴った。
「あ、彼ピッピからだぁ! 何々? この近くまで来てるって! 彼ピッピ、アタシが浮気してないか心配してるっぽい。んもう、困っちゃうん~! じゃあまたね~!」
ユッコは風みたいに去ってった。あたし達はそれを、呆然と見送った。
そして数分後、みんな我に返って絶叫した。
「「「「別れたらマジウケるよね~!(つーか別れろ!)」」」」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
2
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる