生徒会長の包囲

6 柊くん

「じゃあ、後から俺も教室行くから」

僕らの教室に向かう途中にある生徒会室の前、そう言った悠と別れる。
生徒会のメンバーは朝に集まるのが決まりらしい。
大変そうだな。


教室に入って足早に自分の席へと向かう。
僕の席は、校庭と面した窓際の列の一番後ろだ。
ちょうど今の季節だと、お昼にはあったかい日射しが差し込んで、気持ちのいい風が吹く。
この席、結構気に入ってる。

準備を済ませて机につっぷした。
今日は朝から日射しがあったかいな…眠くなってきた。

「なに眠そうにしてんのー？」

ふいに、優しい声と共に、頭に手が置かれる。
ゆっくりと体を起こして顔を上げると、優しい眼差しがそこにあった。

「お、おはよう、柊くん」

彼の名前は早乙女柊。
僕の前の席の人で、こんな僕にも優しく接してくれる良い人。
元気な印象の明るめの茶髪と、やんちゃさが垣間見える、右耳のピアス。最初は怖く感じられたけど、本当はそんなこと無くて、とっても優しくて、誰に対しても平等な態度をとる、しっかりした人だった。


最初に話しかけてくれたのも柊くんからだった。
僕が『早乙女くん』って呼ぶと、『自分の名字あんまり好きじゃないから、名前で呼んで？』とお願いされた。
初対面で名前呼びはすごく緊張したけど、仲良くなろう、って言われてるみたいで嬉しかったことを覚えている。

「ん、おはよ、朔太」

そして、僕のことも名前で呼んでくれる。







悠はといえば、クラスでも相変わらず他人に冷たく、けれど僕にはちゃんと接してくれる。
明らかに目に見える対応の差に、最初は色々話しかけられたものの、クラスメイトは段々と僕を遠巻きにされていた。
そんな僕にも柊くんは話しかけてくれた。優しくしてくれた。卑屈な考えをしてしまう僕にいつも、
「大丈夫」「そんなことないって」
って、呆れず、受け止めてくれる。

こんな優しい人を僕の弱さで困らせたくない。
そして、出来たらずっとずっと友達でいてほしい。




だから僕は、高校からは、ネガティブな考えをしないようにがんばると決めたんだ。