花屋の息子

きの

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10 おかしなお客?

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そんなこんなで異世界でも花屋で働くようになってから、はや一週間。
俺は早くも慣れてきていた。



花屋の主人のおじいさんは、ナラさんといった。なんか、元の世界のナラの木を連想させない?
ナラさんは奥さんと二人のお子さんがいるのだそうだけど、奥さんとは死別し、お子さんはそれぞれ仕事のために家を出たのだそうだ。

でも寂しいかといったらそうではないらしい。もともと静かに植物のお世話をするのが好きだったそう。結婚して明るくて騒がしい奥さんとお子さんができて最初は慣れなかったんだって。



花屋は朝から花の仕入れや手入れをするのだけど、ナラさんの不調なご老体にはそれもきついらしく、しばらくは早朝からバイトに行く事にした。
その分お給料ももらえるらしい、やった。
寝起きのじぇしかに拗ねられたりするけど、今度花かんむりを作ってあげる約束をして許してもらった。

早朝の分のバイトのお金は最初は断ったのだけれど、あの花屋にはなかなかお客さんが来るらしく、売上は十分にあるから構わんよと言っていただいた。
まあ、ご厚意には甘えよう。






「いらっしゃいませ!」

「あら、イオリくんこんにちは。朝から精が出るわね」

「はい。奥さんは今日もモルの花を買いに?」

「そうよ!あの薄ピンクがすっかり気に入っちゃって。今度上手な育て方を教えてね」

「俺もまだまだ知識が足りないので、頑張ります…」


しばらく働いたら、結構常連がいることを知った。
いつも朝7時半すぎくらいにモルの花をお求めになる、角の家の奥様。
朝だというのにいつも元気で、聞かれたことをしっかり答えられない俺に怒ることもなく、優しく見守ってくださる優しい方だ。
お目当てのモルの花を買ってお店を出られるのと入れ違いに、また違うお客様がいらっしゃる。

……結構、ていうかめちゃくちゃ繁盛店だな___。





一旦家にお昼をとりにいって、午後からもバイトだ。
やることないからな!!!!
時間もつぶせてこの世界のことも学べてお金も稼げるなんて、本当に俺は恵まれてる。

最初は俺の事を警戒してた人たちも、俺がダリさんに拾われたと知ると、「ダリさんとこの子か!」と一気に気を緩ます。
ダリさん何者なんだ。


昼からの花屋は、午前に比べたら客足は少ない。
そのため俺は店番をしつつ、この世界の花について調べる。図鑑読んだり、写真見たり。
午前は俺と並んで店に立っていたナラさんも、午後は奥に引っ込んで休憩してる。何かどうしようもない事があったら呼ぶが、基本ゆっくりしていてほしいから自力で頑張るのだ。



今日も例に漏れず図鑑読んでゆったり過ごしていた。
…ふと、視線を感じ顔を上げた。
店の入口に人がいた。……軍服っぽい男の人だ。
俺とばっちり目が合う。
相手の眼光が強い。俺も視線を外しにくい。

俺の頭はその人の姿を見た途端に焦り出す。そりゃそう、元の世界で軍服なんて実際見る機会なんて無かったから。
軍服ってことは、警察のような職務についている人だろうか。パトロールみたいな?と考えている間にも、ずっと目を合わせている俺たち。
睨んでいるようにも見える相手に俺は大焦り。

そこで、俺はもしや?と思いついた。
ダリさんらは、この世界では黒髪は珍しいと言っていた。誘拐される可能性がある、とも。この村は優しい人ばかりで俺は特に黒髪黒目を隠すことをしていない。
だけど、この村在住ではなく、都会から派遣されてこの村をパトロールしている人からしたら、俺の容姿は不審なものなのかも…?
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