10 / 17
10 おかしなお客?
しおりを挟むそんなこんなで異世界でも花屋で働くようになってから、はや一週間。
俺は早くも慣れてきていた。
花屋の主人のおじいさんは、ナラさんといった。なんか、元の世界のナラの木を連想させない?
ナラさんは奥さんと二人のお子さんがいるのだそうだけど、奥さんとは死別し、お子さんはそれぞれ仕事のために家を出たのだそうだ。
でも寂しいかといったらそうではないらしい。もともと静かに植物のお世話をするのが好きだったそう。結婚して明るくて騒がしい奥さんとお子さんができて最初は慣れなかったんだって。
花屋は朝から花の仕入れや手入れをするのだけど、ナラさんの不調なご老体にはそれもきついらしく、しばらくは早朝からバイトに行く事にした。
その分お給料ももらえるらしい、やった。
寝起きのじぇしかに拗ねられたりするけど、今度花かんむりを作ってあげる約束をして許してもらった。
早朝の分のバイトのお金は最初は断ったのだけれど、あの花屋にはなかなかお客さんが来るらしく、売上は十分にあるから構わんよと言っていただいた。
まあ、ご厚意には甘えよう。
「いらっしゃいませ!」
「あら、イオリくんこんにちは。朝から精が出るわね」
「はい。奥さんは今日もモルの花を買いに?」
「そうよ!あの薄ピンクがすっかり気に入っちゃって。今度上手な育て方を教えてね」
「俺もまだまだ知識が足りないので、頑張ります…」
しばらく働いたら、結構常連がいることを知った。
いつも朝7時半すぎくらいにモルの花をお求めになる、角の家の奥様。
朝だというのにいつも元気で、聞かれたことをしっかり答えられない俺に怒ることもなく、優しく見守ってくださる優しい方だ。
お目当てのモルの花を買ってお店を出られるのと入れ違いに、また違うお客様がいらっしゃる。
……結構、ていうかめちゃくちゃ繁盛店だな___。
一旦家にお昼をとりにいって、午後からもバイトだ。
やることないからな!!!!
時間もつぶせてこの世界のことも学べてお金も稼げるなんて、本当に俺は恵まれてる。
最初は俺の事を警戒してた人たちも、俺がダリさんに拾われたと知ると、「ダリさんとこの子か!」と一気に気を緩ます。
ダリさん何者なんだ。
昼からの花屋は、午前に比べたら客足は少ない。
そのため俺は店番をしつつ、この世界の花について調べる。図鑑読んだり、写真見たり。
午前は俺と並んで店に立っていたナラさんも、午後は奥に引っ込んで休憩してる。何かどうしようもない事があったら呼ぶが、基本ゆっくりしていてほしいから自力で頑張るのだ。
今日も例に漏れず図鑑読んでゆったり過ごしていた。
…ふと、視線を感じ顔を上げた。
店の入口に人がいた。……軍服っぽい男の人だ。
俺とばっちり目が合う。
相手の眼光が強い。俺も視線を外しにくい。
俺の頭はその人の姿を見た途端に焦り出す。そりゃそう、元の世界で軍服なんて実際見る機会なんて無かったから。
軍服ってことは、警察のような職務についている人だろうか。パトロールみたいな?と考えている間にも、ずっと目を合わせている俺たち。
睨んでいるようにも見える相手に俺は大焦り。
そこで、俺はもしや?と思いついた。
ダリさんらは、この世界では黒髪は珍しいと言っていた。誘拐される可能性がある、とも。この村は優しい人ばかりで俺は特に黒髪黒目を隠すことをしていない。
だけど、この村在住ではなく、都会から派遣されてこの村をパトロールしている人からしたら、俺の容姿は不審なものなのかも…?
394
あなたにおすすめの小説
転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい
翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。
それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん?
「え、俺何か、犬になってない?」
豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。
神は眷属からの溺愛に気付かない
グランラババー
BL
【ラントの眷属たち×神となる主人公ラント】
「聖女様が降臨されたぞ!!」
から始まる異世界生活。
夢にまでみたファンタジー生活を送れると思いきや、一緒に召喚された母である聖女に不要な存在として捨てられる。
ラントは、せめて聖女の思い通りになることを妨ぐため、必死に生きることに。
彼はもう人と交流するのはこりごりだと思い、聖女に捨てられた山の中で生き残ることにする。
そして、必死に生き残って3年。
人に合わないと生活を送れているものの、流石に度が過ぎる生活は寂しい。
今更ながら、人肌が恋しくなってきた。
よし!眷属を作ろう!!
この物語は、のちに神になるラントが偶然森で出会った青年やラントが助けた子たちも共に世界を巻き込んで、なんやかんやあってラントが愛される物語である。
神になったラントがラントの仲間たちに愛され生活を送ります。
ファンタジー要素にBLを織り込んでいきます。
のんびりとした物語です。
現在二章更新中。
現在三章作成中。(登場人物も増えて、やっとファンタジー小説感がでてきます。)
運悪く放課後に屯してる不良たちと一緒に転移に巻き込まれた俺、到底馴染めそうにないのでソロで無双する事に決めました。~なのに何故かついて来る…
こまの ととと
BL
『申し訳ございませんが、皆様には今からこちらへと来て頂きます。強制となってしまった事、改めて非礼申し上げます』
ある日、教室中に響いた声だ。
……この言い方には語弊があった。
正確には、頭の中に響いた声だ。何故なら、耳から聞こえて来た感覚は無く、直接頭を揺らされたという感覚に襲われたからだ。
テレパシーというものが実際にあったなら、確かにこういうものなのかも知れない。
問題はいくつかあるが、最大の問題は……俺はただその教室近くの廊下を歩いていただけという事だ。
*当作品はカクヨム様でも掲載しております。
獣人の子供が現代社会人の俺の部屋に迷い込んできました。
えっしゃー(エミリオ猫)
BL
突然、ひとり暮らしの俺(会社員)の部屋に、獣人の子供が現れた!
どっから来た?!異世界転移?!仕方ないので面倒を見る、連休中の俺。
そしたら、なぜか俺の事をママだとっ?!
いやいや女じゃないから!え?女って何って、お前、男しか居ない世界の子供なの?!
会社員男性と、異世界獣人のお話。
※6話で完結します。さくっと読めます。
【完結】テルの異世界転換紀?!転がり落ちたら世界が変わっていた。
カヨワイさつき
BL
小学生の頃両親が蒸発、その後親戚中をたらいまわしにされ住むところも失った田辺輝(たなべ てる)は毎日切り詰めた生活をしていた。複数のバイトしていたある日、コスプレ?した男と出会った。
異世界ファンタジー、そしてちょっぴりすれ違いの恋愛。
ドワーフ族に助けられ家族として過ごす"テル"。本当の両親は……。
そして、コスプレと思っていた男性は……。
【本編完結】転生したら、チートな僕が世界の男たちに溺愛される件
表示されませんでした
BL
ごく普通のサラリーマンだった織田悠真は、不慮の事故で命を落とし、ファンタジー世界の男爵家の三男ユウマとして生まれ変わる。
病弱だった前世のユウマとは違い、転生した彼は「創造魔法」というチート能力を手にしていた。
この魔法は、ありとあらゆるものを生み出す究極の力。
しかし、その力を使うたび、ユウマの体からは、男たちを狂おしいほどに惹きつける特殊なフェロモンが放出されるようになる。
ユウマの前に現れるのは、冷酷な魔王、忠実な騎士団長、天才魔法使い、ミステリアスな獣人族の王子、そして実の兄と弟。
強大な力と魅惑のフェロモンに翻弄されるユウマは、彼らの熱い視線と独占欲に囲まれ、愛と欲望が渦巻くハーレムの中心に立つことになる。
これは、転生した少年が、最強のチート能力と最強の愛を手に入れるまでの物語。
甘く、激しく、そして少しだけ危険な、ユウマのハーレム生活が今、始まる――。
本編完結しました。
続いて閑話などを書いているので良かったら引き続きお読みください
最弱白魔導士(♂)ですが最強魔王の奥様になりました。
はやしかわともえ
BL
のんびり書いていきます。
2023.04.03
閲覧、お気に入り、栞、ありがとうございます。m(_ _)m
お待たせしています。
お待ちくださると幸いです。
2023.04.15
閲覧、栞、お気に入りありがとうございます。
m(_ _)m
更新頻度が遅く、申し訳ないです。
今月中には完結できたらと思っています。
2023.04.17
完結しました。
閲覧、栞、お気に入りありがとうございます!
すずり様にてこの物語の短編を0円配信しています。よろしければご覧下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる