死神の鎮魂歌

田華一真

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第一話 ②

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拓也は突然のメールに言葉を失った。ひたすらメール内容を凝視する。

書かれていたことは辞めるという事だけではない。それ以外にも渉の本音が書かれていた。

お前とじゃ結果は残せない。向いていない。ロックを舐めてる、などなど、誹謗の嵐。

罵声を浴びせられた気分になった。既に滅入っていたが、最後の言葉で拓也の心は挫けた。



『さっさと諦めて社会に出た方がいい。お前センスないよ。武道館なんて笑わせないでくれ』

唯一の誇りである渉。その彼の言葉は、拓也の心を酷く抉った。スマートフォンが手からすり抜ける。床へと落ちていった。

体を震わせ咽び泣くと、次第に顔色を赤く染めていく。そして外にまで漏れる程、大きな泣き声をあげた。



見間違いであってくれ。と何度も液晶画面に目を向ける。いくら画面をスクロールしても答えは変わらない。その現実に意気消沈した。

すると突然液晶画面が光る。画面上部に新着メールアイコンが表示された。

送り主は渉。

ではなく、日頃から練習で使っているスタジオのオーナーだった。



スタジオ69ロックを営んでいる川田。拓也が以前から世話になっている人物である。

50を越える大のロック好き。スタジオを親の代から受け継ぎ今も30年以上の間、経営を続けている。

拓也の大学時代からの仲で、直向きに頑張る姿を見ていた。それ以来素直な拓也を贔屓するように。

先月の中頃、川田には次回開催するライブの相談をしたばかりだった。

その矢先の出来事なのである。今回の件は伝えづらい話だ。



どう説明したらいいんだろう。頭を悩ませながらメールを開く。そこにはこの状況を一転させる内容が書かれていた。

『お疲れ様です。突然の依頼で申し訳ない。今、ボーカル志望の人が押しかけてきて、どうしても拓也君に会いたいと聞かないので、悪いのだけどお手隙の時に連絡ください』

自分の目を疑った。余りにも絶妙なタイミングに現れたボーカル。まるで渉から脱退を知っていたかのよう。

衝撃のあまり呼吸を忘れ掛ける。さっきまでの涙は嘘のように止まった。ぐしゃぐしゃになった顔面を拭い払い、すぐさま川田へ電話を掛けた。



「おぉ、拓也くん?すまないね、突然だよね~。まぁ難しいのは分かっているんだけど…」

「会います!会いたいです!会わせてください!今すぐにでも!!」

予想外の返事に会うんだ?と川田は疑問符を投げかけた。NOの答えが返ってくる、もしくは断る前提で渋々会ってもいいと言う。など、その程度だと思っていたからだ。



ボーカル志望者の名前は鳥栖太樹たつみ

ギタリストでもありエレメントのファンだという。

突然現れたと思いきや、拓也に会わせてくれと懇願してきたらしい。

こうしてはいられない!慌てふためき身支度を整えた。散らかる部屋を後に川田と鳥栖の待つ69へ向かう。拓也は胸を躍らせて駆け出していった。
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