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第一話 ⑧
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「エレメントはここまでだったって、事なんじゃないの?」
そもそもお前に実力は無かったって事だろ?潮時なんだって、と渉と同じような捨て台詞を吐いた。
ジャケットを羽織り財布を取り出す。
突然の事に驚いた和樹は、ちょっと落ち着けって!と声を荒げる。尚人に詰め寄り落ち着かせようと諭す。それを振り払うようにして尚人は自分の仕事について話始めた。
「俺、次オープンする新店舗任されてさ、正直ここ最近クッソ忙しくて、バンドに時間割くなのが厳しくなり始めてたんだよね。オープンしたらもっと忙しくなると思う」
普段はチャラチャラしている尚人が、真剣な表情で話す姿に二人は息を飲んだ。
「バンドとの両立とかできんのかな?とか、どうしようかなって迷ってたけど、渉辞めるって聞いてスッキリしたわ。それで次のボーカルが女?悩んでた俺が馬鹿みたいだよ。有り得ないね。そういう事だから、俺はもう降りる。悪いな拓也」
鬱怒した尚人は、財布から数枚の札を取り出し机の隅に置く。そして早速さと店の出入り口へ向かった。
待てって!と後を追う和樹の腕を拓也は掴むと小さく首を横に振った。
その顔には全てを諦めた絶望感が漂っていた。
「いいよ。無理させたってお互いしんどいだけだよ」
そう言いながら拓也は意気消沈した。
「でもお前!ドラムいなきゃバンドもう無理だぞ!?ボーカルまで失ってドラマーもいないなんて…」
やっぱりもう終わりなのかな、拓也はそう言いながら背中を丸め両手で顔を覆いうと静かに泣き出した。
「あー出たよ。お前さぁ、なんかあったらすぐ泣く癖どうにかした方がいいぞ?」
いくつだよ、嫌味を言われる拓也は小さな声でごめんねと繰り返すばかり。
見慣れたその景色に和樹は大きな溜息をついた。
代わりのやつなんてそう簡単に見つかる訳…と、ぶつくさしていた時、何かを閃いた顔をした。
「あっ!…いるじゃんかドラムできるやつ!」
ゆっくりと拓也の方に顔を向けた。
すると、その様子を見た拓也は顔を顰めた。嫌な予感を感じ始める。
金子に声かけよう!と、溌剌とした声を上げた。和樹の閃いたそのアイデアは拓也の予想通りの展開。
拓也は顔を歪ませ不満を顕にした。
それもそのはず。拓也と金子は犬猿の仲だったのだ。
金子は元々、和樹の友人でエレメント結成前までは、拓也も語りあうような仲だった。
別のバンド活動をしていてその頃は金子がドラム担当だった。
その腕前はプロも顔負けの実力。
しかし、ある事をキッカケにバンドは解散。
そして、拓也と金子の関係には大きな亀裂が入り、二人は決別してしまったのだ。
今更金子に合わせる顔なんて無い!と思った拓也は、無理!会いたくない!と声を荒げる。和樹の提案を快諾できる余裕が無かった。
「それだけは無理!まじで!絶対やだ!」
「うん、もうメールしちゃった」
そもそも無理だとか言ってる場合じゃないだろ!?と、拓也を諭すように宥める。和樹は金子との再会を押し進めた。
店内のBGMが変わる。★が店内に響く。
和樹はそれを応援歌に感じた。ニコニコしながら酒を飲む和樹に対して、拓也は面白くない顔を浮かべた。
★
それは出ていってしまった尚人の事を忘れるほど強烈だった。
そもそもお前に実力は無かったって事だろ?潮時なんだって、と渉と同じような捨て台詞を吐いた。
ジャケットを羽織り財布を取り出す。
突然の事に驚いた和樹は、ちょっと落ち着けって!と声を荒げる。尚人に詰め寄り落ち着かせようと諭す。それを振り払うようにして尚人は自分の仕事について話始めた。
「俺、次オープンする新店舗任されてさ、正直ここ最近クッソ忙しくて、バンドに時間割くなのが厳しくなり始めてたんだよね。オープンしたらもっと忙しくなると思う」
普段はチャラチャラしている尚人が、真剣な表情で話す姿に二人は息を飲んだ。
「バンドとの両立とかできんのかな?とか、どうしようかなって迷ってたけど、渉辞めるって聞いてスッキリしたわ。それで次のボーカルが女?悩んでた俺が馬鹿みたいだよ。有り得ないね。そういう事だから、俺はもう降りる。悪いな拓也」
鬱怒した尚人は、財布から数枚の札を取り出し机の隅に置く。そして早速さと店の出入り口へ向かった。
待てって!と後を追う和樹の腕を拓也は掴むと小さく首を横に振った。
その顔には全てを諦めた絶望感が漂っていた。
「いいよ。無理させたってお互いしんどいだけだよ」
そう言いながら拓也は意気消沈した。
「でもお前!ドラムいなきゃバンドもう無理だぞ!?ボーカルまで失ってドラマーもいないなんて…」
やっぱりもう終わりなのかな、拓也はそう言いながら背中を丸め両手で顔を覆いうと静かに泣き出した。
「あー出たよ。お前さぁ、なんかあったらすぐ泣く癖どうにかした方がいいぞ?」
いくつだよ、嫌味を言われる拓也は小さな声でごめんねと繰り返すばかり。
見慣れたその景色に和樹は大きな溜息をついた。
代わりのやつなんてそう簡単に見つかる訳…と、ぶつくさしていた時、何かを閃いた顔をした。
「あっ!…いるじゃんかドラムできるやつ!」
ゆっくりと拓也の方に顔を向けた。
すると、その様子を見た拓也は顔を顰めた。嫌な予感を感じ始める。
金子に声かけよう!と、溌剌とした声を上げた。和樹の閃いたそのアイデアは拓也の予想通りの展開。
拓也は顔を歪ませ不満を顕にした。
それもそのはず。拓也と金子は犬猿の仲だったのだ。
金子は元々、和樹の友人でエレメント結成前までは、拓也も語りあうような仲だった。
別のバンド活動をしていてその頃は金子がドラム担当だった。
その腕前はプロも顔負けの実力。
しかし、ある事をキッカケにバンドは解散。
そして、拓也と金子の関係には大きな亀裂が入り、二人は決別してしまったのだ。
今更金子に合わせる顔なんて無い!と思った拓也は、無理!会いたくない!と声を荒げる。和樹の提案を快諾できる余裕が無かった。
「それだけは無理!まじで!絶対やだ!」
「うん、もうメールしちゃった」
そもそも無理だとか言ってる場合じゃないだろ!?と、拓也を諭すように宥める。和樹は金子との再会を押し進めた。
店内のBGMが変わる。★が店内に響く。
和樹はそれを応援歌に感じた。ニコニコしながら酒を飲む和樹に対して、拓也は面白くない顔を浮かべた。
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それは出ていってしまった尚人の事を忘れるほど強烈だった。
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