13 / 13
第二話 ④
しおりを挟む
グラスの氷が溶け出し、ウイスキーロックは水割りに変わっていた。和樹は残りを一気に飲み干し、水滴の付いたロックグラスを空にした。もう一杯同じやつを。と、バーテンダーに注文する。
煙草を口に咥え、ZIPPOで火をつける。煙がゆらりと宙を舞う。和樹の口元から出たものは煙と吐息だけではなかった。
「酔いがまわるね~」
笑みを浮かべ、小さい声で一言呟いた。ウイスキーをまた一口、噛みしめる様に味合う。
和樹は店の雰囲気と酒とタバコ、金子のドラムに酔いしれた。
一曲目の演奏が終わる。同時に聴衆だけでなくスタッフやバンドの男達含めた全員が手を叩き、歓声を上げた。その音は店内にしばらくの間響き渡った。
万来の拍手喝采。笑顔で埋め尽くされたフロア。スポットライトが金子を照らす。その全てが眩しく、目を細めた。フーッと大きく息を吐く。そして、目の前に広がる景色を噛み締めると、またスティックを降り始めた。
その後"Walts For Debby"、"Night in Tunisia"と二曲演奏を続け、ライブは始めはトラブルで一時停止したものの、金子の登場により、その後は滞りなく進んでいった。
全ての演奏終了後、拍手はしばらくの間、鳴り止まなかった。金子は久しぶりのライブを終え安堵した。全力を出し切った達成感は、やがて薄れていき、緊張の糸が途切れると、次第に脱力感へと変わっていった。それでも、余韻は残したまま笑みが零れた。
演奏を終えた金子はカウンターへと戻る。聴衆を掻き分ける様に、フロアの真ん中を堂々と進む。側にいる観覧者達は声を上げた。最高だった!ありがとう!など、金子への敬意と感謝を述べた。
カウンターで一服する和樹は、戻ってきた金子にお疲れさん、と声を掛ける。金子は久しぶり、と返事をした。今度は苦笑いではなく達成感に溢れた笑顔で挨拶をした。
「同じやつ。」
金子は額に汗を光らせながらバーテンダーに酒を頼む。
煙草に口に咥え、和樹のZIPPOで火をつけた。
「ふー…」
煙が宙を舞う。ウイスキーを口に運ぶ。一口味を噛みしめるのではなく、喉に流し込むように、一気に飲み干しグラスを空にした。
拓也の件、だけど…と金子が話を始めた時、遮るようにスピーカーから声が飛び出した。ステージではバンドの男がマイクを取っていた。
「ドラムのお兄さん!ありがとうございました。素晴らしかった!改めて盛大な拍手を!!」
金子は聴衆に向かって照れ臭そうに軽く会釈する。男は話を続けた。
「また是非ご一緒したいですね!お兄さんの名前と、所属のバンド名をどうぞー!」
「おい、お前書かれてるぞ?」
和樹は肘で金子の脇腹を小突く。
俺は金子祐二。と、小さく呟いた。
そして、和樹の方を向いてニヤリとニヒルな笑みを浮かべた。
「俺の名前は金子雄二!エレメントのドラム担当!金子祐二です!!」
その声は店内の隅々まで轟き、エレメントの名を知らしめる事になった。
偶然に起きた、ドラム不在という緊急事態が招いた奇跡により、金子のエレメント加入が決まった。
煙草を口に咥え、ZIPPOで火をつける。煙がゆらりと宙を舞う。和樹の口元から出たものは煙と吐息だけではなかった。
「酔いがまわるね~」
笑みを浮かべ、小さい声で一言呟いた。ウイスキーをまた一口、噛みしめる様に味合う。
和樹は店の雰囲気と酒とタバコ、金子のドラムに酔いしれた。
一曲目の演奏が終わる。同時に聴衆だけでなくスタッフやバンドの男達含めた全員が手を叩き、歓声を上げた。その音は店内にしばらくの間響き渡った。
万来の拍手喝采。笑顔で埋め尽くされたフロア。スポットライトが金子を照らす。その全てが眩しく、目を細めた。フーッと大きく息を吐く。そして、目の前に広がる景色を噛み締めると、またスティックを降り始めた。
その後"Walts For Debby"、"Night in Tunisia"と二曲演奏を続け、ライブは始めはトラブルで一時停止したものの、金子の登場により、その後は滞りなく進んでいった。
全ての演奏終了後、拍手はしばらくの間、鳴り止まなかった。金子は久しぶりのライブを終え安堵した。全力を出し切った達成感は、やがて薄れていき、緊張の糸が途切れると、次第に脱力感へと変わっていった。それでも、余韻は残したまま笑みが零れた。
演奏を終えた金子はカウンターへと戻る。聴衆を掻き分ける様に、フロアの真ん中を堂々と進む。側にいる観覧者達は声を上げた。最高だった!ありがとう!など、金子への敬意と感謝を述べた。
カウンターで一服する和樹は、戻ってきた金子にお疲れさん、と声を掛ける。金子は久しぶり、と返事をした。今度は苦笑いではなく達成感に溢れた笑顔で挨拶をした。
「同じやつ。」
金子は額に汗を光らせながらバーテンダーに酒を頼む。
煙草に口に咥え、和樹のZIPPOで火をつけた。
「ふー…」
煙が宙を舞う。ウイスキーを口に運ぶ。一口味を噛みしめるのではなく、喉に流し込むように、一気に飲み干しグラスを空にした。
拓也の件、だけど…と金子が話を始めた時、遮るようにスピーカーから声が飛び出した。ステージではバンドの男がマイクを取っていた。
「ドラムのお兄さん!ありがとうございました。素晴らしかった!改めて盛大な拍手を!!」
金子は聴衆に向かって照れ臭そうに軽く会釈する。男は話を続けた。
「また是非ご一緒したいですね!お兄さんの名前と、所属のバンド名をどうぞー!」
「おい、お前書かれてるぞ?」
和樹は肘で金子の脇腹を小突く。
俺は金子祐二。と、小さく呟いた。
そして、和樹の方を向いてニヤリとニヒルな笑みを浮かべた。
「俺の名前は金子雄二!エレメントのドラム担当!金子祐二です!!」
その声は店内の隅々まで轟き、エレメントの名を知らしめる事になった。
偶然に起きた、ドラム不在という緊急事態が招いた奇跡により、金子のエレメント加入が決まった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
1
この作品の感想を投稿する
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる