継子いじめで糾弾されたけれど、義娘本人は離婚したら私についてくると言っています〜出戻り夫人の商売繁盛記〜

野生のイエネコ

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服飾雑誌の制作

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 ランスーン伯爵家に対する対応は必要だけれど、現時点で証拠もないのにどうこうすることはできない。平民であるバレインズ工房長の証言だけでは相手にされないだろう。
 警戒しつつも、自分たちにできることを粛々とやっていくしかなかった。

 短期的な目標としては、嫌がらせで毀損されたブランドイメージの回復。中長期的な目標としては、ブランド価値のさらなる上昇と顧客層の拡大を考えて、戦略を練っていく。

 そこで重要になってくるのが、服飾雑誌の制作だ。

 シャーロットや警備隊の版画絵リトグラフを中心に、着こなしのコツなどを記載したコラムを掲載する。

 正式な夜会でのドレスアップだけでなく、気軽なお茶会やお出かけでのコーディネートなど、特に着こなしの得意な女性を集めて議論し合った。

 「リボンやレースの使い方などは記載すると人気が出やすいのでは? 宝飾品を買えない方にも、比較的安く買える飾りですし」

 「それはいいわね。うちも貴族だけではなく中産階級をターゲットにした商品展開を考えているのよ」

 ファゴット商会では、書籍部門の関係者を通じて、手動の活版印刷機ではなく蒸気印刷機の使用をできるよう話をつけてある。これなら雑誌自体の単価も抑えられるはずだから、ターゲットは貴族だけに絞る必要はないだろう。
 
 それに、ドレスを新調するまでは手が届かないけれど、美しい装束の絵を眺めるだけでも楽しいという需要も積極的に狙っていきたい。
 それというのも、評判は必ずしも顧客だけ狙い撃ちすれば上がるというものではないからだ。
 そのドレスを着ているのを、「見ている人」からどこまで褒め称えられるか、感心されるかがオシャレさんの醍醐味でもある。だからこそ、顧客以外からの評判向上も積極的に狙っていく必要があった。

 まずは試しとばかりに500部を刷る。
 大々的に宣伝をして、発売日にはブティックのティーサロンで大々的にイベントを行うことになった。

 イベント参加者のうち10名に、シャーロットのサイン入り雑誌をプレゼントする企画も用意した。

 服飾雑誌の刊行は、シャーロットの発案で発足した肝入りの企画である。絶対に成功させたい。

 緊張しながら迎えた発売当日の朝。ブティックのティーサロンにしつらえられた特設の販売ブースの前には、長蛇の列が出来上がっていた。

 列に並ぶものの多くは、貴族家のご令嬢に遣わされた使用人たち、そして中産階級の若い女性たちである。
 警備隊目当てで、自分自身で並んでいる貴族家の令嬢もいる。列の整備をしているエルガディットくんたちに、「推し活扇」なるものを振ってきゃあきゃあと華やいでいた。

 「お、お母様、すごい人ですね」

 雑誌の販売は私たちが手ずから行う予定で、販売ブースにはシャーロットと二人で並んで座っている。
 机の上に山と積み上げられた雑誌と、抽選用のくじが入った木箱。
 列の賑わいを見ているに、発売初日の今日だけで完売してしまいそうな有様である。

 「販売開始です! 列を乱さずに一人ずつ前へお進みください!」

 ついに販売開始の時間が訪れた。最前列で並んでいたのは、熱狂的なシャーロットのファンのご令嬢である。まさか早朝から貴族の令嬢が並んでいるだなんて、本当にシャーロットに憧れているのね。
 そのご令嬢は、シャーロットの前まで来たところで真っ赤になって固まってしまった。

 「こちらがサイン本抽選のためのくじになります。まず最初はこれを引いてくださいね」

 そう優しく声をかけると、ご令嬢は震えるてで木箱からくじを引いた。
 結果はハズレ。

 「ああぁ!」

 ご令嬢はショックを受けて崩れ落ちる。

 「まあまあ、サイン本は当たりませんでしたが、雑誌は買えますから」

 ご令嬢は購入した雑誌を大切そうにぎゅっと抱きしめて去っていった。

 それからも悲喜交々のくじ引きが行われ、次々と雑誌は売れていく。

 「きゃあ! 公式からの供給だわ」

 「ヴォルク様とエル様が並んでいる絵姿があるわ! これは聖画として教会に飾るべきよ!」

 購入した雑誌を見ながら、女の子たちは興奮した様子で口々に感想を言っている。
 嬉しそうに買っていくお客様方を眺めながら、朝から夕方まで販売を続け、結局、完売してしまった。

 「まさか一日で売り切れるとはね」

 「私はそうなると思っていましたよ、お母様」

 「初日のイベントで話題性を作ったら、在庫は店に並べて売るつもりだったのに。急いで増刷しないと」

 一日で売り切ってしまったため、店に並べる分が無くなってしまった。嬉しい悲鳴だ。

 「シャーロット、あなたの提案のおかげでこんなにたくさんのお客様が来てくれたわ。本当にありがとう」

 「そんな。それもこれもお母様が今まで素晴らしい製品を開発して、評判を呼び込んでいたおかげですわ」

 「それじゃあ、お互いのおかげね」

 ふふ、と顔を見合わせて笑い合う。

 支え合うのが家族、か。ダンヒル子爵もいいことを言う。おかげで、血がつながらないということで遠慮しがちだったシャーロットとの心の距離も縮まった気がする。
 それにシャーロットもより積極的になって、自分なりの仕事を見つけて張り切っていた。
 
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