22 / 32
5月
8−1目的地までの一五分
しおりを挟む
日曜日。新堂はアラームの音でベッドから転がるように起き上がった。朝には弱く、一回目のアラームで起きたことも奇跡に近い。
今日は待ちに待ったマリ(その他数名)と遊園地に行く日だった。
しかし、若干気が重くもある。
それはきっと、昨日マリがユージとふたりきりで自分の行きつけのカフェに現れたからだろう。
(昨日の俺、ダサかったな……)
本棚の前で会ったとき、マリは少し気まずそうにしていたが、自分を意識してくれている結果なのかユージとの関係になんらかの進展がありそうだからなのかは判断できなかった。前者であることを祈りつつ、新堂は洗面所に向かった。
一方、マリも若干気が重かった。昨日、ユージと一緒のところに新堂と鉢合わせてしまったからだ。
友達と出かけていただけ。弁解のしようがない。しかも、新堂とは弁解が必要な関係でもない。さらに、昨日の新堂はいつも通り穏やかなようで、いつもよりさっぱりとした、こちらには興味のなさそうな若干冷たい印象だった。
(でも、明日って言ってたし)
会えばきっとこの気まずさも解消されるはず。そう願いながらマリは自室を出てリビングに降りた。
「「あっ……」」
マリが家を出て電車に乗ると、斜め前方の端に新堂が座っていた。お互いに顔を見合わせ、声を漏らす。
「おはよう」
「おはよう」
新堂が少し開き気味だった両足を閉じ、背筋を伸ばす。マリは挨拶しながら自然に彼の隣に座った。
しかし、実際は緊張している。座り方は不自然じゃなかったか、新堂との間隔は適切かどうかなど、マリの頭の中では些細なことが重大事件の如くぐるぐると回っていた。
「そういえば、昨日はカフェで何食べた?」
新堂の問いかけに、マリは彼の表情を確認した。
——よかった。いつも通りだ。
新堂が学校で話すときと変わらない柔らかな笑みを浮かべていた。
マリはほっと胸を撫で下ろし、新堂に笑顔を返した。
「昨日はね、ほうじ茶のパフェにしたの」
「ああ、あれはうまいな」
「新堂のおすすめは?」
「あるよ、いろいろ。今度は一緒に行こうか」
「う、うん!」
思わぬ新堂の言葉に、マリは目を細め口元から白い歯を覗かせた。
そんなマリの笑顔を見て、新堂も安堵していた。
(よかった、喜んでる)
窓から差す陽に反射してキラキラと輝く白い肌。はにかむ笑顔が可愛くて仕方ない。
昨日、マリを独り占めしたであろうアイツには嫉妬するが、この笑顔は自分にしか向けられたことはないのではと自惚れてしまう。
それでもユージに対抗して、あの店での記憶を上書きしようなんて幼稚な理由で彼女を誘った。
新堂は自分がここまで独占欲の強い人間だとは思っていなかった。マリに気づかれないよう、そっと苦笑する。
「あ、もう次の駅だね」
「ああ、行こうか」
気がつけば乗車してから一五分経ち、目的地はすぐそこに迫っていた。
新堂はマリと並んで電車を降り、待ち合わせ場所へと歩き出した。
今日は待ちに待ったマリ(その他数名)と遊園地に行く日だった。
しかし、若干気が重くもある。
それはきっと、昨日マリがユージとふたりきりで自分の行きつけのカフェに現れたからだろう。
(昨日の俺、ダサかったな……)
本棚の前で会ったとき、マリは少し気まずそうにしていたが、自分を意識してくれている結果なのかユージとの関係になんらかの進展がありそうだからなのかは判断できなかった。前者であることを祈りつつ、新堂は洗面所に向かった。
一方、マリも若干気が重かった。昨日、ユージと一緒のところに新堂と鉢合わせてしまったからだ。
友達と出かけていただけ。弁解のしようがない。しかも、新堂とは弁解が必要な関係でもない。さらに、昨日の新堂はいつも通り穏やかなようで、いつもよりさっぱりとした、こちらには興味のなさそうな若干冷たい印象だった。
(でも、明日って言ってたし)
会えばきっとこの気まずさも解消されるはず。そう願いながらマリは自室を出てリビングに降りた。
「「あっ……」」
マリが家を出て電車に乗ると、斜め前方の端に新堂が座っていた。お互いに顔を見合わせ、声を漏らす。
「おはよう」
「おはよう」
新堂が少し開き気味だった両足を閉じ、背筋を伸ばす。マリは挨拶しながら自然に彼の隣に座った。
しかし、実際は緊張している。座り方は不自然じゃなかったか、新堂との間隔は適切かどうかなど、マリの頭の中では些細なことが重大事件の如くぐるぐると回っていた。
「そういえば、昨日はカフェで何食べた?」
新堂の問いかけに、マリは彼の表情を確認した。
——よかった。いつも通りだ。
新堂が学校で話すときと変わらない柔らかな笑みを浮かべていた。
マリはほっと胸を撫で下ろし、新堂に笑顔を返した。
「昨日はね、ほうじ茶のパフェにしたの」
「ああ、あれはうまいな」
「新堂のおすすめは?」
「あるよ、いろいろ。今度は一緒に行こうか」
「う、うん!」
思わぬ新堂の言葉に、マリは目を細め口元から白い歯を覗かせた。
そんなマリの笑顔を見て、新堂も安堵していた。
(よかった、喜んでる)
窓から差す陽に反射してキラキラと輝く白い肌。はにかむ笑顔が可愛くて仕方ない。
昨日、マリを独り占めしたであろうアイツには嫉妬するが、この笑顔は自分にしか向けられたことはないのではと自惚れてしまう。
それでもユージに対抗して、あの店での記憶を上書きしようなんて幼稚な理由で彼女を誘った。
新堂は自分がここまで独占欲の強い人間だとは思っていなかった。マリに気づかれないよう、そっと苦笑する。
「あ、もう次の駅だね」
「ああ、行こうか」
気がつけば乗車してから一五分経ち、目的地はすぐそこに迫っていた。
新堂はマリと並んで電車を降り、待ち合わせ場所へと歩き出した。
0
あなたにおすすめの小説
側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、孤独な陛下を癒したら、執着されて離してくれません!
花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」
婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。
追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。
しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。
夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。
けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。
「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」
フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。
しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!?
「離縁する気か? 許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」
凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。
孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス!
※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。
【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結保証】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
彼女が望むなら
mios
恋愛
公爵令嬢と王太子殿下の婚約は円満に解消された。揉めるかと思っていた男爵令嬢リリスは、拍子抜けした。男爵令嬢という身分でも、王妃になれるなんて、予定とは違うが高位貴族は皆好意的だし、王太子殿下の元婚約者も応援してくれている。
リリスは王太子妃教育を受ける為、王妃と会い、そこで常に身につけるようにと、ある首飾りを渡される。
悪役令嬢の身代わりで追放された侍女、北の地で才能を開花させ「氷の公爵」を溶かす
黒崎隼人
ファンタジー
「お前の罪は、万死に値する!」
公爵令嬢アリアンヌの罪をすべて被せられ、侍女リリアは婚約破棄の茶番劇のスケープゴートにされた。
忠誠を尽くした主人に裏切られ、誰にも信じてもらえず王都を追放される彼女に手を差し伸べたのは、彼女を最も蔑んでいたはずの「氷の公爵」クロードだった。
「君が犯人でないことは、最初から分かっていた」
冷徹な仮面の裏に隠された真実と、予想外の庇護。
彼の領地で、リリアは内に秘めた驚くべき才能を開花させていく。
一方、有能な「影」を失った王太子と悪役令嬢は、自滅の道を転がり落ちていく。
これは、地味な侍女が全てを覆し、世界一の愛を手に入れる、痛快な逆転シンデレラストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる