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5月
8−3お揃いの帽子
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新堂がマリの顔を覗き込むと彼女は少し恥ずかしがって頬を染めている。新堂はそんなマリに近くにあった猫のキャラクターのカチューシャを差し出した。
「スミちゃんが鳥でヨナがウサギ。マリは猫でどうかな? 嫌い?」
「猫は飼ってるし好きだけど……私に似合うのかな?」
受け取ったマリが戸惑い、口を尖らせている。新堂にとってはその姿だけで十分かわいいと思えてしまうが、口にはせずにさらにカチューシャをすすめる。
「似合うと思うよ。鏡があるし試してみたら?」
「うん……」
疑心暗鬼の様子でマリが近くにある目線の高さの鏡の前に立った。そこでカチューシャを合わせる。しかし、彼女は似合っているかがわからず新堂に向かって不安げな声を出した。
「新堂、変じゃない?」
困ったように首を傾げ、薄茶色の瞳を潤ませるその様は破壊力が抜群だった。新堂はマリに聞こえないほどの声で「まいったな」と呟く。よく見ると、シャツを選んでいたはずのダブケンも、こちらを見て顔を赤らめていた。
「うん、いいんじゃない?」
マリに返事をしながら、新堂はダブケンの視界に入らないよう猫耳をつけた彼女を隠せる位置に移動する。そして、赤ら顔のダブケンを静かに睨みつけた。野暮ったい前髪で目元は隠れているはずなのに、ダブケンはそろって肩をピクリと震わせていた。
「サトケン、次はあっちのサングラス見よう!」
「そ、そうだな! お揃いにするか!」
彼らは新堂とマリに背を向け、サングラスを見に行った。
「ねえ、新堂は何にしたの?」
「俺?」
マリがぐいっと新堂の服の裾を引っ張った。似合うと言われたからか、彼女は猫耳をつけたままだ。上目遣いでこちらを見つめる姿は本当に猫のようだと新堂は思った。同時にやはりこの姿を自分以外の不特定多数の前に晒すのは耐え難かった。
「俺はこれ」
「え、帽子?」
新堂は手にしていた人気キャラたちのロゴが入った帽子をマリに見せた。ツバが広いハットなので日よけにもちょうどいいと思い選んだものだった。
「無難かな? と思って」
「ズルい、なんか無難すぎ」
マリが頬を膨らませて新堂の顔を覗き込む。また見てしまった彼女の新たな表情に、新堂は顔が熱くなるのを感じた。それを気取られないようにと顔を横に向けて逸らせる。
「サングラスはメガネしてるからできないし、カチューシャはちょっと無いなっていう消去法だよ」
「私もそれにする!」
そう言ってマリがカチューシャを外し、新堂が持っている帽子と同じものを手に取った。
「いいかもね、紫外線対策に。じゃあ俺らはこれにするか」
「え、う、うん!」
新堂は少しでもマリを隠すアイテムとして帽子を選ぶことにした。猫耳姿は堪能したし、お揃いのアイテムで虫除けにも効果がありそうだと判断したのだ。そして、マリはというと新堂の思惑には気づかず、お揃いということに照れている。透き通るように白い肌が顔だけピンク色に染まっていた。
そして、会計を済ませ六人は店を出た。マリと新堂はお揃いの帽子をかぶって顔を見合わせはにかんだ。
「ねえ、新堂」
「なに、スミちゃん?」
店を出た途端、スミちゃんとヨナが新堂に声を掛ける。
「意外と独占欲強いんだね、普段大人っぽく振る舞ってるのに」
「私も思った。マリのこととなるとそうなっちゃうんだね」
スミちゃんとヨナは白い歯を見せてにんまりと意地悪な笑みを浮かべている。
「そこイジるなよ……」
新堂はめざとい彼女たちに苦笑するしかなかった。
「スミちゃんが鳥でヨナがウサギ。マリは猫でどうかな? 嫌い?」
「猫は飼ってるし好きだけど……私に似合うのかな?」
受け取ったマリが戸惑い、口を尖らせている。新堂にとってはその姿だけで十分かわいいと思えてしまうが、口にはせずにさらにカチューシャをすすめる。
「似合うと思うよ。鏡があるし試してみたら?」
「うん……」
疑心暗鬼の様子でマリが近くにある目線の高さの鏡の前に立った。そこでカチューシャを合わせる。しかし、彼女は似合っているかがわからず新堂に向かって不安げな声を出した。
「新堂、変じゃない?」
困ったように首を傾げ、薄茶色の瞳を潤ませるその様は破壊力が抜群だった。新堂はマリに聞こえないほどの声で「まいったな」と呟く。よく見ると、シャツを選んでいたはずのダブケンも、こちらを見て顔を赤らめていた。
「うん、いいんじゃない?」
マリに返事をしながら、新堂はダブケンの視界に入らないよう猫耳をつけた彼女を隠せる位置に移動する。そして、赤ら顔のダブケンを静かに睨みつけた。野暮ったい前髪で目元は隠れているはずなのに、ダブケンはそろって肩をピクリと震わせていた。
「サトケン、次はあっちのサングラス見よう!」
「そ、そうだな! お揃いにするか!」
彼らは新堂とマリに背を向け、サングラスを見に行った。
「ねえ、新堂は何にしたの?」
「俺?」
マリがぐいっと新堂の服の裾を引っ張った。似合うと言われたからか、彼女は猫耳をつけたままだ。上目遣いでこちらを見つめる姿は本当に猫のようだと新堂は思った。同時にやはりこの姿を自分以外の不特定多数の前に晒すのは耐え難かった。
「俺はこれ」
「え、帽子?」
新堂は手にしていた人気キャラたちのロゴが入った帽子をマリに見せた。ツバが広いハットなので日よけにもちょうどいいと思い選んだものだった。
「無難かな? と思って」
「ズルい、なんか無難すぎ」
マリが頬を膨らませて新堂の顔を覗き込む。また見てしまった彼女の新たな表情に、新堂は顔が熱くなるのを感じた。それを気取られないようにと顔を横に向けて逸らせる。
「サングラスはメガネしてるからできないし、カチューシャはちょっと無いなっていう消去法だよ」
「私もそれにする!」
そう言ってマリがカチューシャを外し、新堂が持っている帽子と同じものを手に取った。
「いいかもね、紫外線対策に。じゃあ俺らはこれにするか」
「え、う、うん!」
新堂は少しでもマリを隠すアイテムとして帽子を選ぶことにした。猫耳姿は堪能したし、お揃いのアイテムで虫除けにも効果がありそうだと判断したのだ。そして、マリはというと新堂の思惑には気づかず、お揃いということに照れている。透き通るように白い肌が顔だけピンク色に染まっていた。
そして、会計を済ませ六人は店を出た。マリと新堂はお揃いの帽子をかぶって顔を見合わせはにかんだ。
「ねえ、新堂」
「なに、スミちゃん?」
店を出た途端、スミちゃんとヨナが新堂に声を掛ける。
「意外と独占欲強いんだね、普段大人っぽく振る舞ってるのに」
「私も思った。マリのこととなるとそうなっちゃうんだね」
スミちゃんとヨナは白い歯を見せてにんまりと意地悪な笑みを浮かべている。
「そこイジるなよ……」
新堂はめざとい彼女たちに苦笑するしかなかった。
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