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第二章 王都にお引越し! クラスメイトは王子様
63、リタの休日2−2
しおりを挟む「み、見られていたのですね……お恥ずかしい。アイツを見る時の表情は基本あの感じなので」
「え、ケンカ中とかですか? 人間に向ける視線には見えなかったですよ?」
リタには何の嫌味もなく、純粋に、真っ直ぐに問いかけてくるエルの視線が痛かった。
思わず眉は下がり、眉間に皺が寄り、僅かに首を捻った。
「ケンカ……。いや、そういう訳ではないのです。もしかしたら、嫉妬なのかもしれない……」
エルがリタの顔を覗き込み「嫉妬?」と問いかける。
その瞳は曇り空のような灰色なのに、どこまでも曇りなく澄んでいた。
観念し、頷いてからリタは自分の抱えている思いを吐露し始めた。
「ええ、私はリビー様の一番の部下でいたいので。ジョージは普段はリビー様に馴れ馴れしいし失礼だし女ったらしなのに、結局彼女に一番頼られている気がするのです。私の方がリビー様との付き合いは長いのに、先に部下に採用されたのもアイツだったし。リビー様が昔誘拐されそうになったときも私は後になって知ったのに、当時彼女を助けたのが私と同じ孤児として生きていたジョージでした。普段はのらりくらりとしているのに、いざとなったら優秀な護衛になるアイツが羨ましいというかなんというか……。すみません、こんな恥ずかしい話を聞かせてしまって」
最後の方は口籠もりながら、リタはまたも恥ずかしくなって俯く。視界の中でエルの髪の毛が揺れるのが見える。首を横に振ったようだ。
「いいえ。でもリタ様もジョージ様を信頼しているんですね」
「え? 私がですか?」
エルの優しい声色に、リタは目を丸くして俯いていた顔を上げた。
視線の先にはエルが声色と同じように優しい笑みを浮かべていた。彼は表情は崩さず、小さく頷いて話を続けた。
「はい。そうでなければ羨ましいなんて絶対思わないでしょう? きっとリタ様はジョージ様を信じていて、頼もしくも思っているんだろうなと、僕は思いましたよ」
「……悔しいけど、そうかもしれません」
リタは少し照れながらもエルの言葉を肯定し、苦笑しながら頷いた。
もし同じことをジョージに言われたらこうはいかなかっただろう。エルの言葉だから、ずいぶんと素直に受け入れることができたのだ。
エルは今度は少し上方に視線を送り、目を細めた。どうやら以前三人で来店した時を思い出しているようだった。
「リタ様とリビー様、ジョージ様の三人は主従を超えた、まるで家族のような関係に見えます。素敵だなあ」
「あ、ありがとうございます。リビー様と私が家族だなんて、身分も違いますしおこがましいのはわかっているのですが、嬉しいです」
優しくかけられた言葉に喜びつつも、リタの瞳が僅かに曇った。つられるように、エルも弧を描いていた目は開き、笑顔から寂しそうな表情に変わっていた。
「リタ様……おこがましいだなんて言わないでください。そんなことないですよ。それに、ここでは咎めることを言う人は誰も聞いていませんから」
エルの声は気の利いた冗談のように明るく優しかった。
それでいて真剣にそう言っているのがリタにはわかった。
同時に彼には自分の言葉で話すべきだと判断した。小さく息を吐き、エルに微笑みかけ、ゆっくりと口を開く。
>>続く
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