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第四章 ふたりは恋人! オリビア&リアム
114、恋人はマッチョ騎士(中編)1
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オリビアはリアムとスイーツを囲んで甘いひとときを過ごして店を後にする。セドリックが店の前まで見送りに来て、深々と礼をした。
「ありがとうございます。またお越しくださいませ」
「とても素敵なお店でした。あ、セドリックこれは提案なのだけれど……」
「はい、いかがいたしましたでしょうか?」
「二回目の来店のお客様から給仕の担当者を指名制にするといいわ。別料金で負担のない金額……三百エールから五百エールくらいで。指名料は担当者に全額還元するの」
オリビアの提案に、セドリックが顔を上げ小さく頷いた。
「なるほど、それは興味深いです」
「私が領地で経営しているカフェでそうしているのだけれど、店員のやる気も上がるし、お客さまも大満足よ」
「オーナーと相談してみます。貴重なご意見をありがとうございます」
エールとはジュエリトス王国の通貨の名称で、パン一個が百~二百エール、コーヒー一杯が四百~五百エールだ。
オリビアの経営する各カフェでは給仕してくれる店員の指名ができる。これで店員も自分の給料に直結するため接客に手を抜かないし、客たちはコーヒー一杯分の金額で自分好みの執事やメイドが給仕してくれるので互いの要求が一気に満たせる素晴らしい制度だった。
オリビアの話を聞いたセドリックはまた深々と礼をしてオリビアとリアムを見送った。
「オリビア嬢の経営手腕は斬新かつ的確だな」
「うちは田舎領地ですから、何か目新しい試みをと必死だったのです」
「昔から聡明な子だとは思っていたが、惚れ直してしまうよ」
「リアム様ったら、恥ずかしいですわ……」
リアムからの賛辞の言葉を聞きながら、オリビアは頬を染めはにかんだ。顔を上げると、彼は上がった口角の端とくっつくくらいに目尻を下げ笑みを浮かべていた。
これが「デレ」というやつか、とオリビアは思った。
「さて、そろそろ混んできたな……」
「そうですわね」
外は夕方が近づいてきて、待ち合わせや帰宅途中の買い物目当ての人で混み始めていた。はぐれないようにと一歩踏み出そうとしたオリビアは、急に左手を引かれ一瞬バランスを崩しかける。それを手を引いた張本人のリアムの体に支えられた。
「オリビア嬢、行こう」
「り、リアム様っ!」
「あ! すまない、大丈夫か?」
「はい、大丈夫ですわ」
「あの、はぐれないように……」
リアムが右腕を軽く「く」の字に曲げ身体との間に隙間を作った。彼の言葉と行動で自分は何をすべきなのかはすぐに理解した。
オリビアはゆっくりとリアムの腕に自分の左でを絡ませた。
衣類越しに、自分の腕とは全く違う鍛え上げられた筋肉を感じ、心臓が爆発しそうだ。それを必死に抑え込んで平静を装う。
「ありがとうございます。では、参りましょうか」
「あ、ああ……」
オリビアはリアムに連れられ、繁華街から広場方面へ戻り雑貨店に入った。ここはオリビアもクラスメイトに聞いていた人気の店で、主に若い女性客が多い。
店は少女向けの花柄やレースの装飾が施されており、窓からオリビアと同じ年頃の娘たちが髪飾りやブローチなどを手に取って楽しそうに笑顔を溢しているのが見えた。
……それも、オリビアたちが入店するまでのことだった。
>>続く
「ありがとうございます。またお越しくださいませ」
「とても素敵なお店でした。あ、セドリックこれは提案なのだけれど……」
「はい、いかがいたしましたでしょうか?」
「二回目の来店のお客様から給仕の担当者を指名制にするといいわ。別料金で負担のない金額……三百エールから五百エールくらいで。指名料は担当者に全額還元するの」
オリビアの提案に、セドリックが顔を上げ小さく頷いた。
「なるほど、それは興味深いです」
「私が領地で経営しているカフェでそうしているのだけれど、店員のやる気も上がるし、お客さまも大満足よ」
「オーナーと相談してみます。貴重なご意見をありがとうございます」
エールとはジュエリトス王国の通貨の名称で、パン一個が百~二百エール、コーヒー一杯が四百~五百エールだ。
オリビアの経営する各カフェでは給仕してくれる店員の指名ができる。これで店員も自分の給料に直結するため接客に手を抜かないし、客たちはコーヒー一杯分の金額で自分好みの執事やメイドが給仕してくれるので互いの要求が一気に満たせる素晴らしい制度だった。
オリビアの話を聞いたセドリックはまた深々と礼をしてオリビアとリアムを見送った。
「オリビア嬢の経営手腕は斬新かつ的確だな」
「うちは田舎領地ですから、何か目新しい試みをと必死だったのです」
「昔から聡明な子だとは思っていたが、惚れ直してしまうよ」
「リアム様ったら、恥ずかしいですわ……」
リアムからの賛辞の言葉を聞きながら、オリビアは頬を染めはにかんだ。顔を上げると、彼は上がった口角の端とくっつくくらいに目尻を下げ笑みを浮かべていた。
これが「デレ」というやつか、とオリビアは思った。
「さて、そろそろ混んできたな……」
「そうですわね」
外は夕方が近づいてきて、待ち合わせや帰宅途中の買い物目当ての人で混み始めていた。はぐれないようにと一歩踏み出そうとしたオリビアは、急に左手を引かれ一瞬バランスを崩しかける。それを手を引いた張本人のリアムの体に支えられた。
「オリビア嬢、行こう」
「り、リアム様っ!」
「あ! すまない、大丈夫か?」
「はい、大丈夫ですわ」
「あの、はぐれないように……」
リアムが右腕を軽く「く」の字に曲げ身体との間に隙間を作った。彼の言葉と行動で自分は何をすべきなのかはすぐに理解した。
オリビアはゆっくりとリアムの腕に自分の左でを絡ませた。
衣類越しに、自分の腕とは全く違う鍛え上げられた筋肉を感じ、心臓が爆発しそうだ。それを必死に抑え込んで平静を装う。
「ありがとうございます。では、参りましょうか」
「あ、ああ……」
オリビアはリアムに連れられ、繁華街から広場方面へ戻り雑貨店に入った。ここはオリビアもクラスメイトに聞いていた人気の店で、主に若い女性客が多い。
店は少女向けの花柄やレースの装飾が施されており、窓からオリビアと同じ年頃の娘たちが髪飾りやブローチなどを手に取って楽しそうに笑顔を溢しているのが見えた。
……それも、オリビアたちが入店するまでのことだった。
>>続く
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