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第七章 オリビアの魔法
179、ステファニー・クリスタル1
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『※※! ※※※※※※※※※※!!』
「な、なに?」
音楽のかわりに急に誰かの声が聞こえた。何を言っているかは全くわからず、外国語のようだった。オリビアはジュエリトス語の他に隣国マルズワルト語が話せるがそのどちらでもない。
『ん? 今の、ジュエリトス語? あなた誰?』
「あ、あなたこそ……どちら様でしょうか?」
声の主は女性でジュエリトス語を話し始めた。オリビアは警戒し名乗らず相手の反応を確かめることにして返事を待った。
『知らない人に急に名乗れるわけないでしょう? それよりあなたの手元にあるタブレット、私のなんだから。返してくれない?』
「タブレット? これはタブレットというのですか?」
『え、あなたタブレットを知らないの?』
「ええ、知りません。初めて見ました。それに、返せと言われても、勝手に私の引き出しに入っていたのでどう返せばいいのか……」
『勝手に? まさか……』
女性の口調から困惑しているのがわかった。どうやらこのタブレットなるものがオリビアの手元にあるのは、彼女にとっても想定外のことなのだろう。
『ええと、あなた、これから私の言うとおりにタブレットを操作してくれる?』
「操作、ですか?」
オリビアは彼女の言葉に一瞬警戒したが、その声色に悪意は感じられなかったので言われるままタブレットを操作した。すると、手元の画面には小さな絵が何枚も並び、その中には見たことがある絵もあった。そして彼女に指定された絵に触れると、それが画面いっぱいに広がった。
「これは……」
画面の絵は、他の絵と比べて鮮明ではなかった。けれど何かはわかる。他でもないオリビア自身が描かれていた。服装から、先日ジョージがこのタブレットを触っていた日のものとも判断ができた。
『ねえ、それ……もしかして、あなたなの?』
「…………」
彼女からの問いかけに、オリビアは返事をしていいものか悩んだ。国内で銀髪の人間はほんのわずかで、オリビアの世代にはいなかった。これだけで自分がオリビア・クリスタルだと知られてしまう可能性が高い。
しかし、なぜかすぐに否定はできなかった。オリビアは彼女を警戒しつつも、不思議と嫌な雰囲気や危険を全く感じず、むしろどこか懐かしさや心地よさを感じていたからだ。
『無言は肯定とみなすわよ。まあ警戒するのは無理ないか……。質問を変えるわ。あなた、クリスタル家に親戚がいたりしない?』
「え? どうしてクリスタル家を……。あなたはジュエリトスの方ですか?」
『うーん。そうだけど、今は違うわ。昔ジュエリトスに住んでいたの。ステファニー・クリスタルって、けっこうな有名人だと思うけど知らない?』
>>続く
「な、なに?」
音楽のかわりに急に誰かの声が聞こえた。何を言っているかは全くわからず、外国語のようだった。オリビアはジュエリトス語の他に隣国マルズワルト語が話せるがそのどちらでもない。
『ん? 今の、ジュエリトス語? あなた誰?』
「あ、あなたこそ……どちら様でしょうか?」
声の主は女性でジュエリトス語を話し始めた。オリビアは警戒し名乗らず相手の反応を確かめることにして返事を待った。
『知らない人に急に名乗れるわけないでしょう? それよりあなたの手元にあるタブレット、私のなんだから。返してくれない?』
「タブレット? これはタブレットというのですか?」
『え、あなたタブレットを知らないの?』
「ええ、知りません。初めて見ました。それに、返せと言われても、勝手に私の引き出しに入っていたのでどう返せばいいのか……」
『勝手に? まさか……』
女性の口調から困惑しているのがわかった。どうやらこのタブレットなるものがオリビアの手元にあるのは、彼女にとっても想定外のことなのだろう。
『ええと、あなた、これから私の言うとおりにタブレットを操作してくれる?』
「操作、ですか?」
オリビアは彼女の言葉に一瞬警戒したが、その声色に悪意は感じられなかったので言われるままタブレットを操作した。すると、手元の画面には小さな絵が何枚も並び、その中には見たことがある絵もあった。そして彼女に指定された絵に触れると、それが画面いっぱいに広がった。
「これは……」
画面の絵は、他の絵と比べて鮮明ではなかった。けれど何かはわかる。他でもないオリビア自身が描かれていた。服装から、先日ジョージがこのタブレットを触っていた日のものとも判断ができた。
『ねえ、それ……もしかして、あなたなの?』
「…………」
彼女からの問いかけに、オリビアは返事をしていいものか悩んだ。国内で銀髪の人間はほんのわずかで、オリビアの世代にはいなかった。これだけで自分がオリビア・クリスタルだと知られてしまう可能性が高い。
しかし、なぜかすぐに否定はできなかった。オリビアは彼女を警戒しつつも、不思議と嫌な雰囲気や危険を全く感じず、むしろどこか懐かしさや心地よさを感じていたからだ。
『無言は肯定とみなすわよ。まあ警戒するのは無理ないか……。質問を変えるわ。あなた、クリスタル家に親戚がいたりしない?』
「え? どうしてクリスタル家を……。あなたはジュエリトスの方ですか?」
『うーん。そうだけど、今は違うわ。昔ジュエリトスに住んでいたの。ステファニー・クリスタルって、けっこうな有名人だと思うけど知らない?』
>>続く
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