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第八章 決戦!ペリドット領
187、レオンの謝罪
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「まず、今回の件はいくつかの不幸な事故が重なってしまい大事になった。原因を作ったのは僕だ。申し訳ない」
教卓越しに頭を下げるレオン。オリビアは神妙な面持ちの彼を見つめた。
レオンは今回の事件について、生徒一人一人に視線を向け、語りかけるように説明した。
所属する古代魔術研究クラブで用意した道具が出火原因であること。道具が室外にありフロア全体に火の手が回るまで気づけなかったこと。結果実験クラブの道具や薬品に引火し、大規模火災になったこと。
生徒たちからの注目を集めながら語り続けるレオンを、オリビアは見守っていた。
「というわけだ。国民を守る立場の王族でありながら、危険な目に遭わせてしまったこと、悲しませてしまったこと、心から謝罪する。これでみんなの気が収まるとは思ってはいないが、後日王から今回の件について処分が言い渡される予定だ。僕はこれを全面的に受け入れるつもりでいる。本当に申し訳なかった」
最後にもう一度頭を下げて、レオンの謝罪は終わった。クラスメイトたちはしんと静まり返っていた。それは彼への不信感ではない。おそらく王子が直々に頭を下げ謝罪する姿に、なんと言っていいのかわからなかったからだろう。
オリビアは席を立ち、頭を上げずにいるレオンの隣に立った。近づく人の気配に気づいたのか、彼は頭を上げオリビアを見つめた。
「オリビア嬢?」
「殿下、顔を上げてください」
不安げに眉を寄せているレオンに、オリビアは優しく微笑んだ。それから緩めた口元を引き締め、クラスメイトたちに向き直る。
「みなさん、先ほどはお声かけいただきありがとうございました。私もレオン殿下と同じ古代魔術研究クラブの人間です。ジョージも同じクラブの人間ですが、当日は不在でしたのでご容赦ください。この度は私たちの不注意で、みなさんの命を脅かすような事態になってしまったこと、心よりお詫び申し上げます」
最後にレオンと同じように頭を下げる。すると隣に立つ彼が慌ててオリビアの両肩を掴んだ。
「オリビア嬢、君が謝ることなんて何もないじゃないか!」
「いいえ、私もクラブの一員ですから。みなさん、本当に申し訳ございませんでした」
オリビアは再びクラスメイトたちに向かって腰を折り謝意を示した。
「オリビアさん、顔を上げてください!」
「マイラさん」
マイラは濃い茶色の瞳を潤ませながらオリビアを見ていた。隣にいた友人のソフィーも静かに立ち上がる。
「確かに、亡くなった動物のことを思うと悲しいです。けれど、殿下もオリビアさんも無事で本当に良かった。私はそう思います」
「ソフィーさん……」
マイラ、ソフィーに続いてクラスメイトたちもオリビアとレオンに温かい言葉をかけ、その場は丸くおさまった。レオンはその度に何度も「ありがとう」と繰り返している。
(よかった。これでレオン殿下の学校生活は守られそうね)
オリビアはクラス中に広がる優しい空気に胸を撫で下ろした。
>>続く
教卓越しに頭を下げるレオン。オリビアは神妙な面持ちの彼を見つめた。
レオンは今回の事件について、生徒一人一人に視線を向け、語りかけるように説明した。
所属する古代魔術研究クラブで用意した道具が出火原因であること。道具が室外にありフロア全体に火の手が回るまで気づけなかったこと。結果実験クラブの道具や薬品に引火し、大規模火災になったこと。
生徒たちからの注目を集めながら語り続けるレオンを、オリビアは見守っていた。
「というわけだ。国民を守る立場の王族でありながら、危険な目に遭わせてしまったこと、悲しませてしまったこと、心から謝罪する。これでみんなの気が収まるとは思ってはいないが、後日王から今回の件について処分が言い渡される予定だ。僕はこれを全面的に受け入れるつもりでいる。本当に申し訳なかった」
最後にもう一度頭を下げて、レオンの謝罪は終わった。クラスメイトたちはしんと静まり返っていた。それは彼への不信感ではない。おそらく王子が直々に頭を下げ謝罪する姿に、なんと言っていいのかわからなかったからだろう。
オリビアは席を立ち、頭を上げずにいるレオンの隣に立った。近づく人の気配に気づいたのか、彼は頭を上げオリビアを見つめた。
「オリビア嬢?」
「殿下、顔を上げてください」
不安げに眉を寄せているレオンに、オリビアは優しく微笑んだ。それから緩めた口元を引き締め、クラスメイトたちに向き直る。
「みなさん、先ほどはお声かけいただきありがとうございました。私もレオン殿下と同じ古代魔術研究クラブの人間です。ジョージも同じクラブの人間ですが、当日は不在でしたのでご容赦ください。この度は私たちの不注意で、みなさんの命を脅かすような事態になってしまったこと、心よりお詫び申し上げます」
最後にレオンと同じように頭を下げる。すると隣に立つ彼が慌ててオリビアの両肩を掴んだ。
「オリビア嬢、君が謝ることなんて何もないじゃないか!」
「いいえ、私もクラブの一員ですから。みなさん、本当に申し訳ございませんでした」
オリビアは再びクラスメイトたちに向かって腰を折り謝意を示した。
「オリビアさん、顔を上げてください!」
「マイラさん」
マイラは濃い茶色の瞳を潤ませながらオリビアを見ていた。隣にいた友人のソフィーも静かに立ち上がる。
「確かに、亡くなった動物のことを思うと悲しいです。けれど、殿下もオリビアさんも無事で本当に良かった。私はそう思います」
「ソフィーさん……」
マイラ、ソフィーに続いてクラスメイトたちもオリビアとレオンに温かい言葉をかけ、その場は丸くおさまった。レオンはその度に何度も「ありがとう」と繰り返している。
(よかった。これでレオン殿下の学校生活は守られそうね)
オリビアはクラス中に広がる優しい空気に胸を撫で下ろした。
>>続く
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