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第八章 決戦!ペリドット領

208、リアムの出陣

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 一方、セオとの通信を終えたリアムは、急いで手紙を一通したためた。次に愛用の剣を持ち、クリスタル家のゲストルームを出る。

「エリオット! リアムだ。急用なんだ、開けてくれないか?」

 早足で友人であり恋人の兄でもあるエリオットの部屋の扉を叩いた。間も無く彼の従者ディランが扉を開け、リアムを室内に招く。その奥には首を傾け目尻を下げるエリオットの姿が。

「リアム様、急用とはどういったことでしょうか?」

「オリビア嬢のことだ」

「オリビアですか? 妹がどうかしたのでしょうか?」

 眉を寄せ、口角を下げ、不安を顔に滲ませるエリオット。リアムは彼にオリビアがペリドットの帰りに誘拐されたと伝えた。ペリドット領主が関わっていることは念のため伏せておくことに。話を聞き終えたエリオットは青白い顔で目を見開き、唇がわずかに震えている。よほど驚愕したのだろう。

「そんな、オリビアが誘拐だなんて。リタとジョージは?」

 一瞬期待しかけたエリオットの瞳。しかしリアムが首を横に振ると、その輝きは完全に失われてしまった。心苦しかったが、セオから聞いた話を彼に伝える。

「彼らも襲撃を受け、連れ去られたようだ」

「あの二人まで……。すぐに探しに行かなくては!」

「待ってくれ、君はここから離れてはいけない」

 部屋から飛び出そうという勢いで駆け出したエリオットを引き止める。腕をしっかりと掴まれ身動きが取れず、焦れた顔つきで自分を見上げる彼に、リアムは手紙を手渡した。

「これを、アレキサンドライト家に送ってほしい。一番早い方法で」

「これは手紙ですか?」

「ああ。これを読めば父や兄が騎士団に連絡し援軍を連れてくるだろう」

 手紙を受け取ったエリオットが力強く頷いた。彼の青い瞳には妹を助けようという使命感も感じる。リアムは「頼んだぞ」と彼の肩を叩いた。

「我が家に連絡用のアマツバメがおります。アレキサンドライト家なら三十分ほどで到着するはずです」

「わかった。強化や回復の魔法を使いながら、援軍も急いで来るはずだ。君はこの屋敷でオリビア嬢の帰りを待っていてくれ。私も今からペリドットに向かう」

「リアム様、妹をどうかお助けください!」

 エリオットの縋るような双眼から、リアムの手を固く握る手から、大切な妹を救ってほしいという願いがひしひしと伝わる。リアムは友人の手を握り返し、彼をまっすぐに見据えた。

「オリビア嬢は……君の妹は、必ず私が連れて帰る。約束だ」

 それからリアムはエリオットと一緒に部屋を出た。手紙を届けに行く彼とは玄関ホールで別れ、屋敷を出て馬で出発する。

(オリビア嬢、無事でいてくれ!)

 必ず助け出し、無事に連れて帰る。リアムは馬の手綱を握りしめる。友人との約束を守るため。屋敷の門を出るとすぐに馬を最速で走らせた。

 深緑の双眸には、愛する人を取り戻すという強い意志を携えて——。

>>続く
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