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最終章 サウード夫妻よ永遠に
第42話 最後の朝食
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朝、アリスは一緒に起床したウィリアムと顔を見合わせ笑顔を向けた。
「おはよう、ウィル」
「おはよう、アリス」
夫の笑った顔にはやや陰りがあった。おそらく自分もだろう。言い争ったわけではない、けれどお互いの意見の落とし所がまったくわからない。解決するにはどちらかが考えを変えるしかなかった。
「食堂に行きましょうか」
「うん」
彼を愛している。夫婦二人きりでも幸せに生きていけるはず。養子を迎えて賑やかに過ごすのもいいだろう。けれど、やはりそれは子供を望みそれが叶わなかったときに選択したかった。アリスは挑戦する前に諦めるということはしたくなかった。
「おっはよ~!」
「おはようございます」
食堂で最初にアリスたちを出迎えたのはアイシャだった。彼女は軽快に手を上げ口元から白い歯を見せた。続いて他の夫人たちとも挨拶し朝食を囲んだ。
「ウィリアム、アリスさん。私たち今日の午後にここ出て、王都に戻ろうと思うの」
「え……」
ミライが眉を下げ寂しげな顔でアリスたちを見つめる。隣でビアンカも肩をすくめた。
「ここへ来て一ヶ月ほどだ。そろそろ軍に顔を出さないといけない」
「子供たちも置いてきちゃったしね~」
「殿下が留守番できているか心配です」
正直に言って寂しかった。まだいろんなことを話したかった、教わりたかった。けれど彼女たちは幼い子供たちを残してまでこの地に留まってくれた。ここは感謝して見送らなくてはいけない。アリスは口角を上げ彼女たちに笑いかけた。
「皆様、今まで本当にお世話になりました。サウードが前に進んでいるのは皆様のおかげです。感謝いたします」
「そんな、大げさよ。アリスさんのがんばりがあったから、あなたがまっすぐだったから、私たちは助けたいと思ったのよ」
ミライの言葉に続き、他の三人はうんうんと首を縦に振った。アリスは改めて彼女たちに「ありがとうございます」と頭を下げた。
「では、四賢妃の皆様は昼食を召し上がってからのご出発でいかがでしょうか?」
給仕をしていたピエールが提案し一礼する。けれど今日はいつもの流れだと預かりの子供たちとの昼食になる予定だ。アリスは戸惑い彼に視線を送った。すると涼しげな微笑が返ってくる。
「私やアリス奥様はいつも預かりの子供たちと食事をしています。彼らもご一緒してもよろしいでしょうか?」
「あら、いいわね。みんなはどう?」
ミライが笑顔で快諾し、他の夫人たちも頷いた。そして、ピエールは最後にウィリアムに視線を向けた。
「もちろん、ウィリアム様もいらしてください。いいですね?」
「え、う、うん。わかったよ……」
少し抵抗したそうに首を縮め、ウィリアムが顎を引いた。アリスは彼が必ず来るように釘をさす。
「ウィル、必ず来てね。待っているわ」
「アリス、わかってるよ」
さらに念押し、アリスは「約束ね」と言って食事を済ませた夫を送り出した。
>>続く
「おはよう、ウィル」
「おはよう、アリス」
夫の笑った顔にはやや陰りがあった。おそらく自分もだろう。言い争ったわけではない、けれどお互いの意見の落とし所がまったくわからない。解決するにはどちらかが考えを変えるしかなかった。
「食堂に行きましょうか」
「うん」
彼を愛している。夫婦二人きりでも幸せに生きていけるはず。養子を迎えて賑やかに過ごすのもいいだろう。けれど、やはりそれは子供を望みそれが叶わなかったときに選択したかった。アリスは挑戦する前に諦めるということはしたくなかった。
「おっはよ~!」
「おはようございます」
食堂で最初にアリスたちを出迎えたのはアイシャだった。彼女は軽快に手を上げ口元から白い歯を見せた。続いて他の夫人たちとも挨拶し朝食を囲んだ。
「ウィリアム、アリスさん。私たち今日の午後にここ出て、王都に戻ろうと思うの」
「え……」
ミライが眉を下げ寂しげな顔でアリスたちを見つめる。隣でビアンカも肩をすくめた。
「ここへ来て一ヶ月ほどだ。そろそろ軍に顔を出さないといけない」
「子供たちも置いてきちゃったしね~」
「殿下が留守番できているか心配です」
正直に言って寂しかった。まだいろんなことを話したかった、教わりたかった。けれど彼女たちは幼い子供たちを残してまでこの地に留まってくれた。ここは感謝して見送らなくてはいけない。アリスは口角を上げ彼女たちに笑いかけた。
「皆様、今まで本当にお世話になりました。サウードが前に進んでいるのは皆様のおかげです。感謝いたします」
「そんな、大げさよ。アリスさんのがんばりがあったから、あなたがまっすぐだったから、私たちは助けたいと思ったのよ」
ミライの言葉に続き、他の三人はうんうんと首を縦に振った。アリスは改めて彼女たちに「ありがとうございます」と頭を下げた。
「では、四賢妃の皆様は昼食を召し上がってからのご出発でいかがでしょうか?」
給仕をしていたピエールが提案し一礼する。けれど今日はいつもの流れだと預かりの子供たちとの昼食になる予定だ。アリスは戸惑い彼に視線を送った。すると涼しげな微笑が返ってくる。
「私やアリス奥様はいつも預かりの子供たちと食事をしています。彼らもご一緒してもよろしいでしょうか?」
「あら、いいわね。みんなはどう?」
ミライが笑顔で快諾し、他の夫人たちも頷いた。そして、ピエールは最後にウィリアムに視線を向けた。
「もちろん、ウィリアム様もいらしてください。いいですね?」
「え、う、うん。わかったよ……」
少し抵抗したそうに首を縮め、ウィリアムが顎を引いた。アリスは彼が必ず来るように釘をさす。
「ウィル、必ず来てね。待っているわ」
「アリス、わかってるよ」
さらに念押し、アリスは「約束ね」と言って食事を済ませた夫を送り出した。
>>続く
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