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家族の秘密
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「取り違えということです」
「なに……それ?」
美佐子の話を聞いた美咲は茫然といした表情をしていた。無理もないと思った。
「それって、つまりわたしとお兄ちゃんは兄妹じゃないってこと?」
「そういうことになるわね」
「その話お兄ちゃんは知ってるの?」
「ええ……。話したわ。ごめんなさい。あなただけ蚊帳の外みたいになっちゃって」
美佐子は静かにそう言って、言葉を続けた。
「あの……、美咲が見た若い男の人っていうのは、誠人君だと思う」
ああ、そうなんだろうなと美咲は妙に納得した。
「哲夫さんから話を聞いて、私……、誠人君に会いたいなと思ったの。誠人君も哲夫さんから今の話を聞いてるってことだから」
「じゃあ、二人とも浮気なんかしてないじゃない。なによ。修二君ったら」
「えっ?修二君?」
「わたしのクラスメイト、お母さんがホテルで若い男の人と手をつないでいるところ見たっていうのよ」
美咲は、口をとんがらせてそう言った。
美佐子は赤面した。
駅前のホテルでは知ってる人に見つかる可能性もあった。
もっと場所を考えて会えば良かったと後悔した。
「それで、わたし納得いかなかったけど、なんとなくその修二君が見たっていうホテルに行ってみたのよ。わたし、ホテルなんていうからてっきりラブホテルかと思ったら、普通の宿泊のホテルじゃない。なーんだと思ってたら、お母さんがいて、若いメガネをかけた男の人抱き合ってて」
「……恥ずかしいんだけど、誠人君の顔を見たら、私の弟に似てて、あ、あんまりこの話、特に美咲には、ほとんどしてなかったけど、お母さん弟がいたの病気で早くに亡くなっちゃんだけど……。それでつい、懐かしくて手をとったり、抱きついちゃっりしちゃったの」
「……そういうことだったんだ」
美咲は、美佐子と広志に背を向けて、リビングを後にした。まるで夢遊病のような歩き方だった。
「美咲」
と、後ろから美佐子の声がしたが、広志のそっとしておいてやれという声が聞こえた。
私、和樹のことを好きでいていいんだ!!
部屋に戻り、扉を閉めた美咲は、思わず両手を頬にあてて、飛び上がらんばかりに喜んだ。
岬は早速、和樹にLINEして、明日会いに行っていい?と送った。
すぐに、返事がきて、別にいいよとのことだった。
明日が土曜日で良かった。
美咲はウキウキしながら、ベッドに入り眠りについた。
次の日、美咲が出かけようとすると、
「美咲どこ行くの?」
という美佐子の声が聞こえた。
しかし、無視した。
駅まで、スキップでもしそうなノリで足早に歩いていく。ここから電車を乗り継いで2時間ぐらいはかかると思うが、今から行けば夕方ぐらいには着くだろう。
帰りは……、何だったら泊っていってもいいと思う。
「酒本さん?」
後ろから聞き覚えのある声に呼び止められた。振り向いてみると、案の定だった。
「修二君……」
一体何なの?こっちは急いでるんですけど、なんで呼び止めるの? と危うく言いそうになった。
「どうしたんだよ。酒本さん、そんなに急いで。危ないよ」
美咲は、内心うるさいなアンタに関係ないでしょと、と悪態つきたくなったが、やめておいた。
代わりにある考えがふと浮かんだ。
「あのさ、初恋は実らないものって、言うじゃん」
「ああ……」
修二は面食らった顔して、頷いた。
「でもね、初恋が実る人もいるんだよ」
美咲はそう言って、ニコッと微笑んだ。そして、踵を返して走っていく。
修二は茫然とその場に立ち尽くしていた。美咲は一体なにをいっているのだろう。
初恋が実る人もいる……?
美咲の初恋の相手は……、和樹に違いなかった。
でも、それは許されないことなのではないか?初恋が実ってはいけない。
美咲の場合は。阻止しなければ……。
それは私的な感情ではなく、道徳的に許されないことなのだ。
「なに……それ?」
美佐子の話を聞いた美咲は茫然といした表情をしていた。無理もないと思った。
「それって、つまりわたしとお兄ちゃんは兄妹じゃないってこと?」
「そういうことになるわね」
「その話お兄ちゃんは知ってるの?」
「ええ……。話したわ。ごめんなさい。あなただけ蚊帳の外みたいになっちゃって」
美佐子は静かにそう言って、言葉を続けた。
「あの……、美咲が見た若い男の人っていうのは、誠人君だと思う」
ああ、そうなんだろうなと美咲は妙に納得した。
「哲夫さんから話を聞いて、私……、誠人君に会いたいなと思ったの。誠人君も哲夫さんから今の話を聞いてるってことだから」
「じゃあ、二人とも浮気なんかしてないじゃない。なによ。修二君ったら」
「えっ?修二君?」
「わたしのクラスメイト、お母さんがホテルで若い男の人と手をつないでいるところ見たっていうのよ」
美咲は、口をとんがらせてそう言った。
美佐子は赤面した。
駅前のホテルでは知ってる人に見つかる可能性もあった。
もっと場所を考えて会えば良かったと後悔した。
「それで、わたし納得いかなかったけど、なんとなくその修二君が見たっていうホテルに行ってみたのよ。わたし、ホテルなんていうからてっきりラブホテルかと思ったら、普通の宿泊のホテルじゃない。なーんだと思ってたら、お母さんがいて、若いメガネをかけた男の人抱き合ってて」
「……恥ずかしいんだけど、誠人君の顔を見たら、私の弟に似てて、あ、あんまりこの話、特に美咲には、ほとんどしてなかったけど、お母さん弟がいたの病気で早くに亡くなっちゃんだけど……。それでつい、懐かしくて手をとったり、抱きついちゃっりしちゃったの」
「……そういうことだったんだ」
美咲は、美佐子と広志に背を向けて、リビングを後にした。まるで夢遊病のような歩き方だった。
「美咲」
と、後ろから美佐子の声がしたが、広志のそっとしておいてやれという声が聞こえた。
私、和樹のことを好きでいていいんだ!!
部屋に戻り、扉を閉めた美咲は、思わず両手を頬にあてて、飛び上がらんばかりに喜んだ。
岬は早速、和樹にLINEして、明日会いに行っていい?と送った。
すぐに、返事がきて、別にいいよとのことだった。
明日が土曜日で良かった。
美咲はウキウキしながら、ベッドに入り眠りについた。
次の日、美咲が出かけようとすると、
「美咲どこ行くの?」
という美佐子の声が聞こえた。
しかし、無視した。
駅まで、スキップでもしそうなノリで足早に歩いていく。ここから電車を乗り継いで2時間ぐらいはかかると思うが、今から行けば夕方ぐらいには着くだろう。
帰りは……、何だったら泊っていってもいいと思う。
「酒本さん?」
後ろから聞き覚えのある声に呼び止められた。振り向いてみると、案の定だった。
「修二君……」
一体何なの?こっちは急いでるんですけど、なんで呼び止めるの? と危うく言いそうになった。
「どうしたんだよ。酒本さん、そんなに急いで。危ないよ」
美咲は、内心うるさいなアンタに関係ないでしょと、と悪態つきたくなったが、やめておいた。
代わりにある考えがふと浮かんだ。
「あのさ、初恋は実らないものって、言うじゃん」
「ああ……」
修二は面食らった顔して、頷いた。
「でもね、初恋が実る人もいるんだよ」
美咲はそう言って、ニコッと微笑んだ。そして、踵を返して走っていく。
修二は茫然とその場に立ち尽くしていた。美咲は一体なにをいっているのだろう。
初恋が実る人もいる……?
美咲の初恋の相手は……、和樹に違いなかった。
でも、それは許されないことなのではないか?初恋が実ってはいけない。
美咲の場合は。阻止しなければ……。
それは私的な感情ではなく、道徳的に許されないことなのだ。
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