魔法道具のお店屋さん

森野ゆら

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6章

キアクーアの羽

「ごめん。お兄ちゃん……」

 家へ帰ってすぐに、割れたサラサの鏡を出して謝ると、お兄ちゃんがベッドから起き上がってぎょっとした。

「どうしたんだ? 自分で踏んだのか?」

「そんなドジなことしないよ! 大事な鏡なのに! あのね、実は……」

 図書室でミレイが黒のひし形模様をなぞっていたこと。
 オーシュランへ行って、ミレイと会った時に鏡が割れたこと。
 話してたら、だんだんお兄ちゃんの顔が険しくなってきた。

「セアラ、お前なぁ……」

「だ、だから、ごめん、せっかくの鏡を……」

「そうじゃなくて! 言っただろ? 一人で乗り込むなって。無理するなって。もし、ミレイってやつが本当に魔術師ならどうするんだよ?」

「それは……」

 ごにょごにょ言い訳をする私に、お兄ちゃんはハァと大きなため息をついた。

「とにかく、無事に帰って来てくれてよかったよ」

「うう。でも、ミレイが魔術師かどうか確かめられなくなっちゃった」

「……そうだな。魔術師をあぶりだすことはできなくなったが……実は、おれ、あるものを作ってるんだ」

「あるもの?」

「あぁ。キアクーアの羽を使った、魔術を消す道具だよ」

「キアクーア! それって、今はもう絶滅した鳥だよね。羽を見つけるのは不可能だよ?」

「そう。だけど……これ!」

 お兄ちゃんが枕元から出してきたのは、夕日のオレンジと夜空が混じったような色の羽。

「えっ、まさかそれって……」

「あぁ。キアクーアの羽だ。父さんの道具箱に入ってたんだ。干からびてパサパサだったけどな」

「でも、この羽がどうやって魔術を消す道具になるの?」

「あぁ、それは……」

 お兄ちゃんが紙に書いて、説明してくれたけど、なかなか難しくてよく分かんない。
 魔術を消すには、キアクーアの羽一枚では足りないみたいで、羽を増やすことが必要になるとか。それで、この一枚のキアクーアの羽に、増殖することで有名なクワンという微生物を反応させて、羽を増産するらしいけど……?
 よく分かんないから、途中から説明をうわの空で聞いてた。

「しかし……こりゃ、だいぶん時間がかかるな。魔術を消す羽を増やしても、どうやって薬剤と反応させるか……」

 ブツブツ言って考え始めたお兄ちゃんに、私は釘をさしておく。

「無理しないでよ、お兄ちゃん」

「分かってるよ」

 お兄ちゃんは、笑みを浮かべて、キアクーアの羽をくるりと回転させた。

「じゃあ、私、ごはん作るね。もう遅くなっちゃったし」

「おおっ、悪いな。肉料理を頼む!」

「だから、肉はないってば」

 今日は何を作ろうかな。ペリリ草は絶対いれるけど、余ってる木の実もいれたいし。 
 髪を一つにまとめて、リボンで結んでたら、ベッドに座ってるお兄ちゃんが「あれ?」と立ち上がった。

「セアラ、耳の後ろに何をつけてるんだ?」

「耳の後ろ?」

「ちょっと待て、さわるな」

 お兄ちゃんが机にあった布を取って、私の耳の後ろをぬぐった。

「……これは」

 お兄ちゃんが布を見て、眉間にしわをよせる。

「えっ? なんか変なのついてた?」

 お兄ちゃんに布を見せてもらったら、ピンク色した粉がねっとりついてる。

「樹木の粉を練ったものだな。あまりいいものじゃなそうだ」

「ええっ? 毒?」

「毒性はなさそうだけど、まぁ調べてみるよ」

「やだなぁ。どこでついたんだろう。気持ち悪いなぁ。今からお風呂に入ろうっと」

「えっ、ごはんは……? 後になるのか?」

 お兄ちゃんのお腹がぐううと鳴り響いた。
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