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2章
謎のタクト
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「すっごいでかい声……」
男の子は顔をしかめて、耳から手をはずす。
ちょっと待って。
この男子、きのう、公園で声をかけてきた子だ!
どうしてこんな所にいるの?
「春名れいんさんだよな? いやー、ちょうど話がしたかったんだ。まさか春名さんから来てくれるとはなぁ」
男の子はうれしそうに笑ってる。
え? なんで私の名前知ってるの? きのう、名前言ってないよ?
「……えーっと、あなた、きのう公園で会った……えっと……」
「おれは五年七組の佐倉(さくら)凪(なぎ)。よろしく」
「よろしく……」
五年? 同級生だったんだ……!
そっか。だから見たことある気がしたのかぁ。
「あのー、どうして私の名前知ってるの?」
「どうしても何も、同じ学年だし」
「いや、そうだけど。でも、私、学年全員の顔と名前覚えてないよ」
そう。五年生はわりと多くて、十組まであるんだ。
同じクラスになった子は覚えてるけど、まだまだ知らない子も多い。
「そうだなぁ。おれだって学年全員なんて覚えてない。
でも、春名さんはちょっと有名だから、知ってたんだ。ピアノがすごくうまい、春名まりんさんの妹だろ?」
「あー……うん」
言われて、ちょっとガックリする。
これ、何回目だろ? まりんの妹の……っていう言葉が上につくの。
やっぱり、私はまりんの妹っていうのがついてまわるんだなぁ。
いや、そんなことより。
「えーっと、さ……佐倉くん。どうしてこんなところにいるの?」
きくと、佐倉くんはにっこり笑った。
「掃除サボってたらさ、先生に追いかけられちゃって、ここで隠れてた」
「……へー」
掃除サボってたって、おいおい。掃除の時間はとっくに終わって一時間以上たってるよ?
「で、ここにいたら退屈になっちゃってさ。まぁ、これでも弾いてみるかーって」
佐倉くんの左手を見ると、変わった形のものを持っていた。
長方形の木に細い金属の棒がたくさんついてる。楽器っぽいけど……
「何それ? 大き目オルゴール?」
「カリンバだよ」
「カリンバ?」
私が楽器をのぞきこむと、佐倉くんは長方形の箱を両手で持ち直して、金属の棒の一つを指で押した。
ポーン
金属の棒が下に沈んで、澄んだ音が響く。あ、聞こえていたのはこの音だ。
「きれいな音だね。そんな楽器、初めて見た」
「小さくて持ち運びしやすいから、最近人気が出てきてるけど、まだ知らない人も多いな」
「それ、佐倉くんの楽器なの?」
「……母のだよ」
佐倉くんが小さくほほえんだ。
「へぇ。お母さんの楽器なんだ」
めずらしくて、ついついじいっと見てしまう。
おしゃれな楽器だなぁ。木目がきれいだし、葉っぱみたいな絵柄もきれい。
並んでる金属がぴかぴか光ってる。
感心して見ていたら、佐倉くんが顔をよせてきて、私の耳にささやいた。
「春名さんこそ、珍しいもの持ってたよな。あのタクト、どうしたんだ?」
「え……」
佐倉くんの探るような目を思わず見つめかえす。
「タクト? タクトって?」
「昨日、公園で振ってたじゃないか。『ぴろりん、ぱろりん、マジカルシャワー』だっけ?」
そこまで言って、佐倉くんがぶはっと吹き出した。
それから、わはははっとおなかを抱えて笑いだす。
「~~~~ぬぬぬっ……」
な、なんなの。失礼なヤツ!
はずかしいせいか、腹が立つせいか、火が出そうに顔が熱くなってくる。
「ば、バカにしてんの? すっごく嫌な感じ! じゃあね!」
手提げ袋のひもを握って立ち上がると、佐倉くんがあわてたように笑いをひっこめた。
「わわっ、ちょっと待って。悪い。別にバカにするつもりはなくて」
フンだ。しっかりバカにしてるじゃないか。
ひとにらみすると、佐倉くんが頭を下げた。
「本当に悪かった。ええっと、そんなことが言いたいんじゃなくて、実はタクトのことを話したいんだ」
「え……タクトって。佐倉くん、棒のこと……何か知ってるの?」
きくと、佐倉くんは静かにうなずいた。
「それは、もともとは指揮棒らしいんだ」
「指揮棒?」
「ほら、よくオーケストラの指揮者がこういうのを持ってるだろ?」
指揮者が持ってる……あ、そうだ。
坂下先生が吹奏楽クラブで似たようなもの振ってるの、見たことある。
それに、テレビでオーケストラの指揮してる人が似たようなもの振ってたっけ。
「これが指揮棒かぁ」
手提げ袋から取り出すと、佐倉くんが「おおっ」と声をあげた。
「うわ、話が早い! 持ってきてたんだ。実は、その指揮棒、ただの指揮棒じゃないんだ」
「知ってるよ。おもちゃでしょ? 光ったり音符が出てきたりする……最近のおもちゃってすごいよねー」
感心して棒をなでると、佐倉くんが首を横に振った。
「おもちゃじゃないよ。それは……そのタクトは、オトダマ食いを退治するために作られたものなんだ」
男の子は顔をしかめて、耳から手をはずす。
ちょっと待って。
この男子、きのう、公園で声をかけてきた子だ!
どうしてこんな所にいるの?
「春名れいんさんだよな? いやー、ちょうど話がしたかったんだ。まさか春名さんから来てくれるとはなぁ」
男の子はうれしそうに笑ってる。
え? なんで私の名前知ってるの? きのう、名前言ってないよ?
「……えーっと、あなた、きのう公園で会った……えっと……」
「おれは五年七組の佐倉(さくら)凪(なぎ)。よろしく」
「よろしく……」
五年? 同級生だったんだ……!
そっか。だから見たことある気がしたのかぁ。
「あのー、どうして私の名前知ってるの?」
「どうしても何も、同じ学年だし」
「いや、そうだけど。でも、私、学年全員の顔と名前覚えてないよ」
そう。五年生はわりと多くて、十組まであるんだ。
同じクラスになった子は覚えてるけど、まだまだ知らない子も多い。
「そうだなぁ。おれだって学年全員なんて覚えてない。
でも、春名さんはちょっと有名だから、知ってたんだ。ピアノがすごくうまい、春名まりんさんの妹だろ?」
「あー……うん」
言われて、ちょっとガックリする。
これ、何回目だろ? まりんの妹の……っていう言葉が上につくの。
やっぱり、私はまりんの妹っていうのがついてまわるんだなぁ。
いや、そんなことより。
「えーっと、さ……佐倉くん。どうしてこんなところにいるの?」
きくと、佐倉くんはにっこり笑った。
「掃除サボってたらさ、先生に追いかけられちゃって、ここで隠れてた」
「……へー」
掃除サボってたって、おいおい。掃除の時間はとっくに終わって一時間以上たってるよ?
「で、ここにいたら退屈になっちゃってさ。まぁ、これでも弾いてみるかーって」
佐倉くんの左手を見ると、変わった形のものを持っていた。
長方形の木に細い金属の棒がたくさんついてる。楽器っぽいけど……
「何それ? 大き目オルゴール?」
「カリンバだよ」
「カリンバ?」
私が楽器をのぞきこむと、佐倉くんは長方形の箱を両手で持ち直して、金属の棒の一つを指で押した。
ポーン
金属の棒が下に沈んで、澄んだ音が響く。あ、聞こえていたのはこの音だ。
「きれいな音だね。そんな楽器、初めて見た」
「小さくて持ち運びしやすいから、最近人気が出てきてるけど、まだ知らない人も多いな」
「それ、佐倉くんの楽器なの?」
「……母のだよ」
佐倉くんが小さくほほえんだ。
「へぇ。お母さんの楽器なんだ」
めずらしくて、ついついじいっと見てしまう。
おしゃれな楽器だなぁ。木目がきれいだし、葉っぱみたいな絵柄もきれい。
並んでる金属がぴかぴか光ってる。
感心して見ていたら、佐倉くんが顔をよせてきて、私の耳にささやいた。
「春名さんこそ、珍しいもの持ってたよな。あのタクト、どうしたんだ?」
「え……」
佐倉くんの探るような目を思わず見つめかえす。
「タクト? タクトって?」
「昨日、公園で振ってたじゃないか。『ぴろりん、ぱろりん、マジカルシャワー』だっけ?」
そこまで言って、佐倉くんがぶはっと吹き出した。
それから、わはははっとおなかを抱えて笑いだす。
「~~~~ぬぬぬっ……」
な、なんなの。失礼なヤツ!
はずかしいせいか、腹が立つせいか、火が出そうに顔が熱くなってくる。
「ば、バカにしてんの? すっごく嫌な感じ! じゃあね!」
手提げ袋のひもを握って立ち上がると、佐倉くんがあわてたように笑いをひっこめた。
「わわっ、ちょっと待って。悪い。別にバカにするつもりはなくて」
フンだ。しっかりバカにしてるじゃないか。
ひとにらみすると、佐倉くんが頭を下げた。
「本当に悪かった。ええっと、そんなことが言いたいんじゃなくて、実はタクトのことを話したいんだ」
「え……タクトって。佐倉くん、棒のこと……何か知ってるの?」
きくと、佐倉くんは静かにうなずいた。
「それは、もともとは指揮棒らしいんだ」
「指揮棒?」
「ほら、よくオーケストラの指揮者がこういうのを持ってるだろ?」
指揮者が持ってる……あ、そうだ。
坂下先生が吹奏楽クラブで似たようなもの振ってるの、見たことある。
それに、テレビでオーケストラの指揮してる人が似たようなもの振ってたっけ。
「これが指揮棒かぁ」
手提げ袋から取り出すと、佐倉くんが「おおっ」と声をあげた。
「うわ、話が早い! 持ってきてたんだ。実は、その指揮棒、ただの指揮棒じゃないんだ」
「知ってるよ。おもちゃでしょ? 光ったり音符が出てきたりする……最近のおもちゃってすごいよねー」
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