ミュージック・れいん

森野ゆら

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8章

大ピンチ

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 やっぱり! 
 坂下先生がまりんのオトダマを食べたんだ!
 ぎゅっとタクトを握りしめ、坂下先生に向かって構える。
 すると、坂下先生が細い目をしてタクトをにらんだ。

「そのタクト、本当に邪魔だよなぁ。ちょっと貸してくれないか?」

「貸すわけないでしょ!」

 思い切りタクトを振った。
 きらんきらんきらん……
 出てきたのは、四分音符に二分音符、休符!
 やった! 今までで一番たくさんの音符が出てきた。

「えいっ」

 坂下先生に向けて、タクトを振って音符を飛ばす。……と同時に叫んだ。

「アレグロ!」

 音符がびゅーんと速いスピードで坂下先生へ。
 やった! 命中!
 坂下先生に音符がくっついて、ばちっと火花みたいなものが出る。
 苦しそうにうめいた坂下先生は、近くのイスの手をかけた。そして、そのまま……

 ブンッ……

 うそ⁈ 私の方へイスが飛んでくる!
 よけなきゃ! じゃないとイスが直撃だ! だけど、足が体が動かない!

「春名さん!」

 声がして、誰かが私におおいかぶさってきた。
 がこんっ!
 鈍い音がしてそっと目を開けると、並木先生だ!

「大丈夫? 春名さん」

 並木先生がイスが当たった腰をさすりながら、顔をのぞきこんでくる。

「は、はい。ありがとうございます、でも、並木先生、イスがぶつかったんじゃ……」

「ううん。私は大丈夫」

 並木先生が優しく笑って、タクトを持つ私の手をそっと握った。

「春名さん! 離れろ!」

 突然、佐倉くんの鋭い声が飛んできた。
 え? 離れろって、何から? 周りを見回してると、並木先生が低い声で言った。

「春名さん、ダメよ。こんな危ないものを振り回しちゃ」

 並木先生はニヤリとして、私が持ってるタクトをスッと抜き取った。
 それから、私を見下ろすように立ち上がった。

「並木……せんせ……」
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