タイム・ジャンプ!

森野ゆら

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2 恋のライバル

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 意味不明なダメージを受けた胸を押さえてると、ショーウインドーのガラスに私たちが映ってるのが見えた。
 並んで歩いてる、私服の私たち。

 あれ。
 二人でこうして歩いてると、な、なんかデートみたい。
 さっき、ダメージを受けたのに、ぎゅーんと気持ちメーターが回復してくる。
 あっ。でも! もし、学校の子に見られたらどう思うだろう?
 特に志信ファンの子に見られでもしたら……
 ぶるっと背中が寒くなった時、アクセサリー屋さんに飾ってあるネックレスに目を奪われた。

「わ、これかわいいっ!」

 立ち止まって、台に飾られているネックレスに顔をよせる。
 金色のチェーンに、三日月の上に猫がいるデザインパーツがついてる。
 店内のライトに、月についてる青いビジューがきらりと光った。

「へぇ。未央はこんなのが好きなんだな」

 志信があごに手を当てた時、店員さんがやってきた。

「それはハンドメイド作家さんが作った一点ものですよ。いかがですか?」

 一点もの? わぁ、ほしい!
 値札をちらっと見て、財布の中身を思い出した。
 うう。でもリボン買わないといけないからなぁ。さっきジュース買っちゃったし……

「ご、ごめんなさい、また今度にします」

 ぺこりと頭を下げると、店員さんもあわてて頭を下げた。

「いいんですよ。いつでも見に来てくださいね」

 店員さんに「また来ますね」と手を振って、志信と歩き出す。
 あぁ、かわいかったなぁ。
 猫ちゃんが月にいる、すごくオシャレなデザインだったし。
 あの青いビジューも光に当たったら、宝石みたいにきれいだった。
 名残惜しくて、何回かアクセサリー屋さんを振り返る。
 ……仕方ない。またおこづかいを貯めて買いにこよう。
 下に降りるエスカレーターの前で志信が立ち止まった。

「じゃ、おれ、今から剣道の練習だから。またな」

「うん。がんばってね」

 おりていく志信を見送りながら、ちっちゃく手を振る。
 もう少し、一緒にいたかったな。なんて思いながら。


 おおっと、いいかげんに本来の目的、リボンを買いに行かないと!
 ゆりちゃん家へ行く時間が遅くなっちゃう!
 早足で、エスカレーター横の百円ショップに入った。
 所せましと並べられているハロウィンの商品。

「かわいいっ! ほしーい」

 オレンジかぼちゃの置物やお菓子をかたどった飾り。
 黒い帽子をかぶったオバケのオーナメント。
 うわぁ、部屋に飾りたいなぁ。
 ついついカゴにいれそうになって、手を止める。

「いかーん、今日はリボンを買いにきたんだっ」

 雑念を払うように頭をブンブン振って、手芸コーナーに向かった。

「リボン、リボーン♪」

 ボタンの横にいろんなリボンが並べられてる。
 レースがついたリボンとか、ピンクの乙女なリボン。
 うーん。でも志信にあげるからなぁ。あんまりビラビラしたものは、ひかれるかも。
 かっこいい系の黒リボンにする? あ、でもちょっと地味かなぁ。
 棚からリボンをとっかえひっかえすること五分。
 青と赤のリボンで悩んで、結局グリーンにした。

「これでよし」

 このままレジに行くのもなんだかもったいなくて、となりの列をひょいとのぞく。

「うわ! お菓子作りのコーナー! かわいい!」

 クマちゃん型、お花の形……いろんなクッキー型を見てるだけで、楽しくなってくる。
 それにクッキー粉やいちごパウダー、デコできるチョコペンまで売ってる。

「うわぁ、いっぱいあるなぁ」

 ゆりちゃんと一緒に使おうかな。
 ブルーのチョコペンを一つ取った時、

「あれ? 未央ちゃん?」

 声に振り返ると、レターセットとシールを手に持った、髪の長いフワフワ女子が目を丸くして立っていた。

「荒木さん……」

 ひゃあ、こんなところで荒木さんに会うなんて!
 さっきまで志信といたところ、見られてなかったかな。
 ううっ。変な汗が出てくる~
 あわてて笑顔を作ると、荒木さんはちらっと私の手元を見てきいてきた。

「買い物?」

「うん。……今からゆりちゃんとクッキー作る約束してるんだ」

「そうなんだ。それって……」

 荒木さんはちょっと考えるように天井に目線をやったあと、私を見つめなおした。

「ハロウィン会でだれかにあげるの?」

「えっ」

 だれかにって。志信にあげる予定なんだけど、まさかそんなこと言えない。
 だって、荒木さんも志信のこと好きだってウワサだし。
 さっきまで志信と一緒にいたことも、なんだか後ろめたい。
 言葉につまる私に、荒木さんはほほえんだ。

「明日のハロウィン会、楽しみだね。じゃあ、また学校で」

 そう言って、荒木さんはレースがついたスカートをひるがえし、行ってしまった。
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