タイム・ジャンプ!

森野ゆら

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4 閉店したパン屋さん

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 ゆりちゃんちからの帰り道。
 日曜日の商店街は人通りが多い。
 近道しようと思って商店街の中を通ったけど、混んでるな~
 やっぱり大通りの方を歩いたほうが良かったかな?
 クッキーの包みが、歩くたびにポシェットの中でカサカサ音を立てる。
 明日、ハロウィン会が終わったら志信に渡そう。
 志信、喜んでくれるかな?
 手作りのものプレゼントするなんて初めてだ。
 なんて言って渡そう? 

「これどうぞ」とかシンプルに「食べて」とか?
 急にどうした? って言われたらどうしよう。
 そもそも、私の手作りなんて「毒でも入ってるんじゃないか?」って怪しんで受け取ってくれなかったら……
 うっ。なんか今から緊張してきた。
 なんだか、動悸と息切れがするよ。
 胸を押さえながら歩いてると、シャッターが閉まったお店の前でウロウロしてるおじいさんが見えた。
 見覚えのある姿に足を止める。
 あ。ご近所に住んでるカズオさんだ。

「カズオさんっ! こんにちはっ」

 声をかけると、カズオさんは驚いたように振り返った。

「あぁ、未央ちゃんか。こんにちは」

「どうしたの? こんな所で」

 店のシャッターを見ると、はり紙がしてある。

(長い間ありがとうございました。そらいろパン屋は閉店いたしました)

 その文字をカズオさんはさみしそうに見つめてる。

「このパン屋さんに長年お世話になったから、お礼の手紙を書いてきたんだけど、三日前に閉店したみたいでなぁ。月末いっぱいで閉店だと思ってたのに、予定より早く閉めることにしたのかねぇ……」

 残念そうに肩を落とすカズオさん。
 風が吹いて、はり紙がパタパタと小さな音を立てながらゆれる。

「カズオさんはこのパン屋さんの常連さんだったの?」

「そうじゃよ。この町に住み始めてからずっとここにパンを買いにきとった。娘が赤ちゃんの頃からじゃなぁ」

 娘……って一緒に住んでるおばちゃんのことだよね。
 そのおばちゃんが赤ちゃんの時からって……

「ええっ、すっごい前からだね」

「あぁ。ベビーカー押してここまで来て、焼き立ての食パンをよく買ったもんだよ」

 カズオさんがなつかしそうに目を細める。
 私もここの食パンは何回か食べたことある。
 耳までフワフワでおいしいんだよね。

「もっと早く来たらよかったのう。三日前は自治会の用事があったから仕方ないけど」

 ため息をつくカズオさんの手には、茶色の封筒がくしゃっと握りしめられてる。
 下を向くカズオさんの丸い背中を見てたら、胸がぎゅっと苦しくなった。
 カズオさん、一生懸命書いたんだろうな。
 何年も何十年もの気持ちを手紙にこめたんだろうな。
 三日前にカズオさんがここに来ることができれば、パン屋さんに気持ちが伝わったのに。
 三日前に戻れたら。
 あっ。
 頭の中に電気が走ったみたいにひらめいた。 

「あの、カズオさん。その手紙、パン屋さんに渡してあげようか?」
「えっ? そんなことできるのかい?」
「うん。私、パン屋さんに会うことができるの」

 カズオさんは驚いたように目を真ん丸にする。
 あ。しまった。カズオさんにとったら、どういうことか分かんないよね。
 うーん、なんて説明しよう? えーっと、えーっと……

「えっと、あの、そらいろパン屋さんと知り合いって言う人を知ってて……」

 カズオさん、ごめん! ウソだよ~
 だけど、お兄ちゃんが作った時間移動機とやらで……ってさすがに言えない。
 目を泳がせてると、カズオさんがおおっと顔を輝かせた。

「じゃあ、お願いしようかね。未央ちゃんなら信用できるし」

「まかせて。絶対届けてあげる」

 私はトンと胸をたたいて、カズオさんから手紙を受け取った。
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