タイム・ジャンプ!

森野ゆら

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5 お手紙を届けに

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「ただいまー!」

 リビングにかけこむと、お母さんがまだテレビを見ていた。
 今日は一日中、とりだめしてたドラマを見るって意気込んでたっけ。
 ソファでぐうすか寝ていたお兄ちゃんの姿はない。

「あれ? お兄ちゃんは?」

「和都、図書館に行くって出かけたわ」

 お母さんはそっけなく答えたあと、画面のイケメン俳優に目線を戻した。
 やった! お兄ちゃんはいない。チャーンス!
 心の中でガッツポーズを作って、早速小屋にダッシュした。

 一応、小屋のドアをそっと開ける。
 うん。お兄ちゃんはいない。
 相変わらずのガラクタジャングルみたいな中を通って、奥の机にたどりついた。
 ガタッと引き出しを開ける。
 よかった。あった。
 朝に使った時と変わらず、引き出しの奥に説明の紙と一緒に入ってる。

 時間移動機。
 これ、本当に時間を移動できるんだ。
 あらためてそう思うと、ゴクリとのどが鳴った。
 ええっと、三日前のあおぞら商店街っと。
 ▲▼で日付をあわせて、紫ボタンで場所を選択。
 えいっと赤ボタンを押したら、
 体がぐるんと一回転!
 朝と同じようにグルグルが始まった。


 ぐるぐるぐる……
 ……周りの回転がおさまって目を開けた。
 カズオさんといた商店街。
 同じ景色のように見えて、さっきとちがうことがある。
 そらいろパン屋さんのシャッターが開いてる!
 店内には閉店セールって書かれた赤い紙がいっぱい貼られていて、たくさんのお客さんがいる!

 よしっ。ちゃんと三日前に来てる。

 そう確信して、ごった返す店の中へ入った。
 えっと、この手紙……だれに渡そう?
 レジで忙しそうにお客さんの応対をしている店員さん。
 さすがに声をかけられそうにない。
 その時、店長と書かれた名札をつけたおじさんが奥から出てきた。

「あのっ!」

 店長さんはいきなり話しかけられて、びっくりしたように立ち止まる。

「これ、カズオさんからのお手紙です」

 茶色の封筒を差し出すと、店長さんは「カズオさん……」とつぶやいて目を大きくした。

「ええっ、ああ! あのいつも食パンを買ってくれるカズオさんだね。……ありがとう! カズオさん、今日は来てくれてるの?」

 店長さんがキョロキョロと店内を見まわした。

「いえ、あの……今日は用事があって来られないみたいで……」

「そうなんだね。残念だなぁ……」

 言いながら、店長さんは封筒から手紙を出して目を通し始めた。
 どんどん店長さんの目がうるんでいく。

「あの、じゃあ私はこれで……」

 立ち去ろうとすると、店長さんがごしっと目をふいた。

「わざわざありがとう。お嬢さん。カズオさんの気持ち受け取ったよ」

 
 店を出て、ほっと胸をなでおろした。
 カズオさんの手紙、ちゃんと渡せたし、店長さん、喜んでくれてよかった。
 よしっ、任務完了だ! 帰ろう!
 路地裏に入って、時間移動機の⇔ボタンをポチッと押す。
 すぐに景色がグルグルとまわりだして、ぎゅうっと目を閉じる。
 ううっ……この回転、なかなか慣れないなぁ。
 しばらくして目を開けると、さっきの小屋の中。

「ふぅ。帰ってきた~」

 どっと疲れて、イスに腰かけた。
 でも……よかった。ちゃんと届けられて。

(カズオさんの気持ち受け取ったよ)

 店長さんの言葉がすごくうれしい。過去に行ったかいがあったよ!
 気持ちが伝わるって、すてきなことだなぁ。

「よしっ、明日は私もこれを渡さなきゃね」

 ポシェットの中から、ゆりちゃんと作ったクッキーの包みを取り出す。
 リボンの端に小さく「志信へ」って書いた文字。
 それを見ながら、包みを持つ手にぎゅっと力をいれた。

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