21 / 38
4
5 迷路を二人で
しおりを挟む
ゆりちゃんの姿を見失ってから、どれくらい経っただろう。
「ゆりちゃーん、どこ行ったの~」
私の情けない声が響く。だけど返事はない。
あぁ、ゆりちゃんと完全にはぐれちゃった。
一人でまっすぐ歩いてるつもりなんだけど……
さっきから同じところをずっとまわってる気がするよ。
今更気づいたけど……私、もしかして方向音痴⁉
ゴールはどこだ……? 足も疲れてきちゃったよ。
どっちに行っていいか分からず、途方に暮れてると、左側の段ボールの壁がガタガタッと動いて倒れてきた。
「わわわっ!」
びっくりしてのけぞると、ヌッと学生服の男子が現れた。
「やっぱり、ここ弱くなってたな。あれ? 未央」
黒い瞳を丸くして、段ボールの壁を支えているのは志信だった。
「志信! 志信も迷ってるの?」
きくと、志信がひょいとガムテープを持ち上げた。
「いや、おれは美術部の助っ人。はがれた所を修復したり倒れたところを直したりしてる」
そう言って、志信はべりりっとガムテープを取って壁をくっつけた。
「そ、そうなんだ。ごくろうさまです……」
思わずペコリと頭を下げると、志信がニヤリと笑った。
「未央、迷子か?」
「ち、ちがうっ、ゆりちゃんとはぐれちゃっただけで、ちゃんと自分で出口まで向かってる! ……どこ歩いてるか分かんないけどっ」
「迷子だな」
笑う志信に私は反論する元気もなく、横を向きながら仕方なくうなずいた。
「ついてきて。ここから先はけっこう複雑だから。ゲームマニアの美術部三年生が作ったらしいから、未央じゃゴールは難しいだろ」
最後の一言は余計だよって思いながら、先を歩いていく志信を追いかける。
志信の真っすぐな背中。
時々振り返って、私がついてきてるか確認してくれる。
ちゃんとついていってますよってムッとしたら、ちょっと笑ってまた前を向く。
私に合わせてゆっくり歩いてくれてる? って思うのは気のせいかな。
何回角を曲がったのか、どこを歩いているのか、私はさっぱり分からない。
だけど、志信と一緒に歩いていると全然不安じゃない。
頼もしい背中。すっと長い腕にふれたくて手を伸ばしかけて……やめる。
志信と一緒に歩けるだけで、ボールがポンポン弾むみたいに心がはねる。
あぁ、もう。ずっとここで迷っててもいいや。
そんなことを思ってしまって、なんだか心臓が浮つく。
丸くくり抜かれた段ボールをくぐったあと、志信が足を止めた。
「ここからまっすぐ行ったら、出口につながってるから」
「あ……ありがと、志信」
そっか。もう出口か……。
なんだか残念な気持ちになって、歩き出した時、
「あ、未央……」
声に振り返ると、志信がなんだか言いにくそうに、そっぽを向きながら口を開いた。
「その……渡し……ものが」
キィィィン!
突然、志信の声とかぶるように、マイクの音が鳴り響いた。
頭痛がしそうなくらいの高い音に、思わず耳をふさぐ。
「あ。あれっ、マイクの調子が……失礼いたしましたっ」
あわてたような、生徒会副会長さんのアナウンスが聞こえてきた。
なんだか今日の生徒会は落ち着きがないなぁ。
お兄ちゃんたち、何してるんだろ? 忙しいのかな?
「えっと、なんだっけ? よく聞こえなくて」
志信にきき返した時、
「いたいた未央! ごめんっ、先に行っちゃって!」
髪を振り乱したゆりちゃんが前からかけよってきた。
「ってあれ? 志信くん。なんでこんなところに」
ゆりちゃんは、私と志信の顔を交互に見くらべる。
「じゃ、またな」
志信は頭をかきながら、迷路の奥の方へ戻っていった。
「ありゃ? おジャマだった?」
ゆりちゃんがこてっと首をかしげる。
「ちがうよっ。なにもないよ」
なにもない……けど、志信、なにを言いかけたんだろ?
「ゆりちゃーん、どこ行ったの~」
私の情けない声が響く。だけど返事はない。
あぁ、ゆりちゃんと完全にはぐれちゃった。
一人でまっすぐ歩いてるつもりなんだけど……
さっきから同じところをずっとまわってる気がするよ。
今更気づいたけど……私、もしかして方向音痴⁉
ゴールはどこだ……? 足も疲れてきちゃったよ。
どっちに行っていいか分からず、途方に暮れてると、左側の段ボールの壁がガタガタッと動いて倒れてきた。
「わわわっ!」
びっくりしてのけぞると、ヌッと学生服の男子が現れた。
「やっぱり、ここ弱くなってたな。あれ? 未央」
黒い瞳を丸くして、段ボールの壁を支えているのは志信だった。
「志信! 志信も迷ってるの?」
きくと、志信がひょいとガムテープを持ち上げた。
「いや、おれは美術部の助っ人。はがれた所を修復したり倒れたところを直したりしてる」
そう言って、志信はべりりっとガムテープを取って壁をくっつけた。
「そ、そうなんだ。ごくろうさまです……」
思わずペコリと頭を下げると、志信がニヤリと笑った。
「未央、迷子か?」
「ち、ちがうっ、ゆりちゃんとはぐれちゃっただけで、ちゃんと自分で出口まで向かってる! ……どこ歩いてるか分かんないけどっ」
「迷子だな」
笑う志信に私は反論する元気もなく、横を向きながら仕方なくうなずいた。
「ついてきて。ここから先はけっこう複雑だから。ゲームマニアの美術部三年生が作ったらしいから、未央じゃゴールは難しいだろ」
最後の一言は余計だよって思いながら、先を歩いていく志信を追いかける。
志信の真っすぐな背中。
時々振り返って、私がついてきてるか確認してくれる。
ちゃんとついていってますよってムッとしたら、ちょっと笑ってまた前を向く。
私に合わせてゆっくり歩いてくれてる? って思うのは気のせいかな。
何回角を曲がったのか、どこを歩いているのか、私はさっぱり分からない。
だけど、志信と一緒に歩いていると全然不安じゃない。
頼もしい背中。すっと長い腕にふれたくて手を伸ばしかけて……やめる。
志信と一緒に歩けるだけで、ボールがポンポン弾むみたいに心がはねる。
あぁ、もう。ずっとここで迷っててもいいや。
そんなことを思ってしまって、なんだか心臓が浮つく。
丸くくり抜かれた段ボールをくぐったあと、志信が足を止めた。
「ここからまっすぐ行ったら、出口につながってるから」
「あ……ありがと、志信」
そっか。もう出口か……。
なんだか残念な気持ちになって、歩き出した時、
「あ、未央……」
声に振り返ると、志信がなんだか言いにくそうに、そっぽを向きながら口を開いた。
「その……渡し……ものが」
キィィィン!
突然、志信の声とかぶるように、マイクの音が鳴り響いた。
頭痛がしそうなくらいの高い音に、思わず耳をふさぐ。
「あ。あれっ、マイクの調子が……失礼いたしましたっ」
あわてたような、生徒会副会長さんのアナウンスが聞こえてきた。
なんだか今日の生徒会は落ち着きがないなぁ。
お兄ちゃんたち、何してるんだろ? 忙しいのかな?
「えっと、なんだっけ? よく聞こえなくて」
志信にきき返した時、
「いたいた未央! ごめんっ、先に行っちゃって!」
髪を振り乱したゆりちゃんが前からかけよってきた。
「ってあれ? 志信くん。なんでこんなところに」
ゆりちゃんは、私と志信の顔を交互に見くらべる。
「じゃ、またな」
志信は頭をかきながら、迷路の奥の方へ戻っていった。
「ありゃ? おジャマだった?」
ゆりちゃんがこてっと首をかしげる。
「ちがうよっ。なにもないよ」
なにもない……けど、志信、なにを言いかけたんだろ?
0
あなたにおすすめの小説
独占欲強めの最強な不良さん、溺愛は盲目なほど。
猫菜こん
児童書・童話
小さな頃から、巻き込まれで絡まれ体質の私。
中学生になって、もう巻き込まれないようにひっそり暮らそう!
そう意気込んでいたのに……。
「可愛すぎる。もっと抱きしめさせてくれ。」
私、最強の不良さんに見初められちゃったみたいです。
巻き込まれ体質の不憫な中学生
ふわふわしているけど、しっかりした芯の持ち主
咲城和凜(さきしろかりん)
×
圧倒的な力とセンスを持つ、負け知らずの最強不良
和凜以外に容赦がない
天狼絆那(てんろうきずな)
些細な事だったのに、どうしてか私にくっつくイケメンさん。
彼曰く、私に一目惚れしたらしく……?
「おい、俺の和凜に何しやがる。」
「お前が無事なら、もうそれでいい……っ。」
「この世に存在している言葉だけじゃ表せないくらい、愛している。」
王道で溺愛、甘すぎる恋物語。
最強不良さんの溺愛は、独占的で盲目的。
荒川ハツコイ物語~宇宙から来た少女と過ごした小学生最後の夏休み~
釈 余白(しやく)
児童書・童話
今より少し前の時代には、子供らが荒川土手に集まって遊ぶのは当たり前だったらしい。野球をしたり凧揚げをしたり釣りをしたり、時には決闘したり下級生の自転車練習に付き合ったりと様々だ。
そんな話を親から聞かされながら育ったせいなのか、僕らの遊び場はもっぱら荒川土手だった。もちろん小学生最後となる六年生の夏休みもいつもと変わらず、いつものように幼馴染で集まってありきたりの遊びに精を出す毎日である。
そして今日は鯉釣りの予定だ。今まで一度も釣り上げたことのない鯉を小学生のうちに釣り上げるのが僕、田口暦(たぐち こよみ)の目標だった。
今日こそはと強い意気込みで釣りを始めた僕だったが、初めての鯉と出会う前に自分を宇宙人だと言う女子、ミクに出会い一目で恋に落ちてしまった。だが夏休みが終わるころには自分の星へ帰ってしまうと言う。
かくして小学生最後の夏休みは、彼女が帰る前に何でもいいから忘れられないくらいの思い出を作り、特別なものにするという目的が最優先となったのだった。
はたして初めての鯉と初めての恋の両方を成就させることができるのだろうか。
クールな幼なじみの許嫁になったら、甘い溺愛がはじまりました
藤永ゆいか
児童書・童話
中学2年生になったある日、澄野星奈に許嫁がいることが判明する。
相手は、頭が良くて運動神経抜群のイケメン御曹司で、訳あって現在絶交中の幼なじみ・一之瀬陽向。
さらに、週末限定で星奈は陽向とふたり暮らしをすることになって!?
「俺と許嫁だってこと、絶対誰にも言うなよ」
星奈には、いつも冷たくてそっけない陽向だったが……。
「星奈ちゃんって、ほんと可愛いよね」
「僕、せーちゃんの彼氏に立候補しても良い?」
ある時から星奈は、バスケ部エースの水上虹輝や
帰国子女の秋川想良に甘く迫られるようになり、徐々に陽向にも変化が……?
「星奈は可愛いんだから、もっと自覚しろよ」
「お前のこと、誰にも渡したくない」
クールな幼なじみとの、逆ハーラブストーリー。
はるのものがたり
柏木みのり
児童書・童話
春樹(はるき)が突然逝ってしまって一ヶ月。いつも自分を守ってくれていた最愛の兄を亡くした中学二年生の春花(はるか)と親友を亡くした中学三年生の俊(しゅん)は、隣の世界から春樹に来た招待状を受け取る。頼り切っていた兄がいなくなり少しずつ変わっていく春花とそれを見守る俊。学校の日常と『お隣』での様々な出来事の中、二人は気持ちを寄せ合い、春樹を失った悲しみを乗り越えようとする。
「9日間」「春の音が聴こえる」「魔法使いたちへ」と関連してくる物語。
(also @ なろう)
9日間
柏木みのり
児童書・童話
サマーキャンプから友達の健太と一緒に隣の世界に迷い込んだ竜(リョウ)は文武両道の11歳。魔法との出会い。人々との出会い。初めて経験する様々な気持ち。そして究極の選択——夢か友情か。
(also @ なろう)
極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。
猫菜こん
児童書・童話
私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。
だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。
「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」
優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。
……これは一体どういう状況なんですか!?
静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん
できるだけ目立たないように過ごしたい
湖宮結衣(こみやゆい)
×
文武両道な学園の王子様
実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?
氷堂秦斗(ひょうどうかなと)
最初は【仮】のはずだった。
「結衣さん……って呼んでもいい?
だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」
「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」
「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、
今もどうしようもないくらい好きなんだ。」
……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。
こちら第二編集部!
月芝
児童書・童話
かつては全国でも有数の生徒数を誇ったマンモス小学校も、
いまや少子化の波に押されて、かつての勢いはない。
生徒数も全盛期の三分の一にまで減ってしまった。
そんな小学校には、ふたつの校内新聞がある。
第一編集部が発行している「パンダ通信」
第二編集部が発行している「エリマキトカゲ通信」
片やカジュアルでおしゃれで今時のトレンドにも敏感にて、
主に女生徒たちから絶大な支持をえている。
片や手堅い紙面造りが仇となり、保護者らと一部のマニアには
熱烈に支持されているものの、もはや風前の灯……。
編集部の規模、人員、発行部数も人気も雲泥の差にて、このままでは廃刊もありうる。
この危機的状況を打破すべく、第二編集部は起死回生の企画を立ち上げた。
それは――
廃刊の危機を回避すべく、立ち上がった弱小第二編集部の面々。
これは企画を押しつけ……げふんげふん、もといまかされた女子部員たちが、
取材絡みでちょっと不思議なことを体験する物語である。
ノースキャンプの見張り台
こいちろう
児童書・童話
時代劇で見かけるような、古めかしい木づくりの橋。それを渡ると、向こう岸にノースキャンプがある。アーミーグリーンの北門と、その傍の監視塔。まるで映画村のセットだ。
進駐軍のキャンプ跡。周りを鉄さびた有刺鉄線に囲まれた、まるで要塞みたいな町だった。進駐軍が去ってからは住宅地になって、たくさんの子どもが暮らしていた。
赤茶色にさび付いた監視塔。その下に広がる広っぱは、子どもたちの最高の遊び場だ。見張っているのか、見守っているのか、鉄塔の、あのてっぺんから、いつも誰かに見られているんじゃないか?ユーイチはいつもそんな風に感じていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる