和ごころシンフォニー

森野ゆら

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3章

クラスメイトの桜宮さん

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 ウソだ。生徒会って、生徒のための組織じゃないの? 
 なのに。あんな人たちだなんて。
 机に突っ伏して、きのうのことを思い返す。
 ずーんと漬物石がのってくる感覚。
 ダメだ。わたし、漬物になっちゃうよ。気持ちがぺっちゃんこだよ……

「……さん。北川さん」

「へっ?」

 声に気づいて、顔を上げる。

「プリントです。どうぞ」

 そっとわたされたのは、数学のプリント。

「あ、ありがとう。ええっと……」

 ゆるゆる視線を上にやると、机の前に女の子が立っていた。
 腰まである艶のある黒い髪。長いまつげに大きな瞳。
 まるでお人形がそこに立ってるようなこの子は……ええっと、だれだっけ?

桜宮さくらみやです。桜宮紫乃さくらみやしのと申します」

 わたしの心を読んだように、桜宮さんがほほえんだ。

「ありがとう、桜宮さん。ごめんね。わたし、ぼーっとしちゃって」

「いいえ。こちらこそ、ごめんなさい。貴重なお休みの時間を邪魔してしまって。数学係の仕事とは言え、申し訳なかったです」

 桜宮さんは整った眉をゆがませて、ぺこりと頭を下げた。
 そっか。授業終わってたんだ。わたしってば、チャイムも聞こえなかったなぁ。
 きのう、家に帰ってからもいろいろ考えちゃって、宿題も手につかなかった。
 まさか生徒会まであんな感じだなんて。これじゃ、協力なんてしてもらえるワケがない。
 そりゃあ、学園もゴミだらけになるはずだよ。
 ぼんやり遠い目をしてたら、急に桜宮さんの顔がひょこっと出てきた。

「北川さん」

「うわっ」

 思わずイスをひいてのけぞった。
 桜宮さんの顔、超至近距離すぎる!

「ささ、桜宮さん、まだいたんだ。あのー。近すぎるよ」

 うろたえると、桜宮さんはまた「ごめんなさい」と頭を下げた。

「あのー。少しききたいことがありまして。ちょっとしたウワサを耳にしたのですけど……」

「ウワサ?」

「生徒会にのりこんだって本当ですか?」

 ガタンっ。

 今度はイスからずり落ちそうになっちゃった。いたたた。腰、打っちゃったよ。

「う、ウワサになってるの? わたし」

「はい。何も知らない新入生女子が生徒会室にのりこんで、生徒会長にケンカ売ったって」

「ええええ!」

 きのうのことがもうウワサになってるなんて! どういうネットワーク⁈
 桜宮さんが気の毒そうに、眉をひそめた。

「北川さんは生徒会のこと、ご存知なかったのですか?」 

「この学園が荒れてるっていうウワサは知ってたけど、生徒会までは……どんなウワサだったの?」

「生徒会のメンバーは、みんな親が学園長とつながりがある金持ちばかり。生徒の要望は一切聞かず、学園長の言いなりの組織……だそうです」

 ええええ。そんな情報があったなんて!
 がっくりして、がこん。と、机に頭をぶつけたら、

「あー、それ、知ってる!」 

 急に前の席にいた男子たちが振り返ってきた。

「これまで学園長や生徒会にはむかった生徒は全員退学。親の仕事に支障が出た子もいた……ってやつだろ?」

「何それ、こわいじゃん」

「こわいと言えばさ、書道室の幽霊だよな! この前も泣き叫んでる声を誰かがきいたらしいよ」

「ええっ……。おそろしいですね」

 桜宮さんが顔を青くして自分を抱き込む。
 幽霊もこわいけど……。それは置いておいて。
 生徒会って敵じゃん! まさか生徒会も学園長側だっただなんて。
 学園を立て直すのは、一人で頑張るしかないってこと?

「あのー、北川さん、大丈夫ですか?」

 桜宮さんの声がどんどん遠くになっていった。
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