和ごころシンフォニー

森野ゆら

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3章

金髪男子

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 急に背後から声が聞こえて、振り向いた。
 しまった。生徒会の人たち? って思ったけど、ちがった。
 ひょろっと背の高い金髪の男子。袖のすそが青だから、三年生。
 男子は鷹のような鋭い目をわたしに向けて、もう一度きいてきた。

「あんた、なにしとるん?」

「な、なにって、ご、ゴミ拾いです……」

「ふぅん。なんでそんなこと、わざわざしとるん? ムダやろ。このボロ小屋のまわりきれいにしたって。どうせそのうち取り壊されるのに」

 金髪男子はガリガリっと頭をかいた。
 この話し方、関西弁? 怒ってるのかな?
 こわい。だけど、ムダとか言われてだまっちゃいられないよ。
 わたしのやってること、意味がないなんて思いたくない。今、迷ってるから余計に!
 こぶしにぎゅっと力を入れて、息を吸い込んだ。

「ムダじゃないです。本当はここ、花壇なの。ゴミ捨て場じゃない! それに、この離れ屋は茶室があって、お茶をたてたり、お花を生けたり、とっても素敵な場所だったの。ボロ小屋とか言わないで!」

 思わず声が大きくなってしまって、口を押える。
 しまった。つい、感情的になっちゃって、しかも先輩なのにタメ口しちゃった。
 言うにしても、もう少しやわらかく言わないといけなかったよね。
 金髪男子は細い目をいっそう細めて、離れ屋を見たあと、わたしをにらんだ。

「なんで昔のこと知ってんのや。あんた一年生やろ? ウソ言うとるんちゃうやろな」

「う、ウソじゃない! 小さい頃、じいちゃんに連れてきてもらったことがあるんです。中だってどんな部屋があったか言えるもん。中に入ったらすぐ右に畳の部屋があって、それから……」

「ふーん。……ちょっとツラ、かしてーな」

 そう言って、金髪男子はぐいっと私の腕をつかんだ。
 ひえええっ。暴力反対だよ。ケンカなんてしたくないし。
 どうしよう、だれか助けて。って思うけど、こういう時に限って誰もいない。
 でも、金髪男子の肩越しに向こうから誰かが歩いてきたのが見えた!
 救世主だ!
 あの人に助けてもらお……って、思いかけて顔がこおりつく。
 やってくるのは、二年の制服男子。
 あれ、早玖だ!
 気まずい気持ちもあったけど、今はそんな場合じゃない。
 ヤンキーに連れていかれたら、ケンカで勝てる気しないし。
 お願い、早玖! 気づいて!

「さ、早玖―――っ、助けて……」

 ワラにもすがる思いで叫ぶと、こっちに気づいて早玖がやってきた。
 事情を説明して助けてもらおうって思ったら、先に金髪男子が早玖に声をかけた。

「よぉ、生徒会の倉木やん」

「こんにちは、ミドリくん。何してるんですか?」

 え? 知り合い? 
 キョトンとしてると、金髪男子がニカッと笑った。

「ちょっと、この子がおもしろそうなこと言っとるから、話聞かせてもらおう思てな」

「そうですか。それは楽しそうですね。おれも参加したいですけど、あいにく生徒会の仕事が体育館でありまして。もうすぐ生徒会長もいらっしゃるんですよね」

 早玖が言うと、金髪男子は目を細めてうなずいた。

「そうか。しゃーないな。ほな、さっさと行こか」

 金髪男子が私の手を引っ張って歩きだした。

「ちょ、早玖っ!」

 早玖に助けを求めるけど、ニコニコしてわたしと金髪男子を見つめたまま。

「はよ、行くで」

 金髪男子がわたしを引っ張り、早足で歩いていく。

「早玖!」

 名前を呼ぶけど、早玖はくるりと背を向けて体育館の方へ歩いていく。
 どうして? どうして早玖、助けてくれないの?
 胸にズシンと重たいものがのっかってきた。
 油断したら、涙が出てきそうになる。
 金髪男子はちらりとわたしを見たけど、手は離してくれない。
 そっか。もうこれで分かった。
 早玖は……もう、わたしの味方でもなく、友達でもないんだ。
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