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4章
暗闇の書道室
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「北川さん、こっち」
ドアの前で月都くんが手まねきしてる。
き、来てしまった。北校舎の三階はしっこ。
明かりもついてないから、暗くてあまり見えない。
おそるおそる月都くんのそばへ歩いていく。
「や、やっぱり帰ろうかな……」
「なーに言っとんや。宝の場所きくんやろ?」
ミドリくんが逃げ出そうとするわたしの腕を引っ張った。
書道室と書かれた札は、だいぶんはげてて、うっすらとしか見えない。
月都くんがドアノブに手をかけた時、中から声が聞こえてきた。
「……ううう、ううう、きえええええ!」
「!!!」
思わず月都くんの袖につかまった。何なの? 今の奇声!
「ううっ、ぐすっ……」
うわっ。今度は泣いてる声まで聞こえてきた。
こ、こわい。何か悲しいことがあったの? それとも恨みがあるとか?
と、思ったら。
「ヒヒヒ。ひーっひっひ……」
今度は笑いだした? さっきまで泣いてたんじゃなかったの?
「入るよ」
月都くんがノブをまわして、ドアを開けた。
えええ、この状況で入るの? 幽霊がいるんだよ⁈
ごくっとつばをのみこんだ。
ひやっとした書道室。窓際で黒い影が床に向かって筆を動かしていた。
幽霊? いや。足はある。でも……
じいっと目をこらす。
薄暗い中を何度も見るけど、……目と鼻と口がない。
顔が全部もじゃもじゃの毛でおおわれている。
ののの、のっぺらぼう? オオカミ男?
「ひっ」
声が出そうになって、あわてて口を押える。
よろめいて思わず手を伸ばしたら、積まれていたイスに当たって崩れてきた!
「きゃっ……」
がたーーーん!
黒い影が手を止めて、こっちを見る。
幸い、イスはわたしに当たらずに床で散らばってる。
ゆらりゆらーりと幽霊がゆっくり近づいてきた。
や、やだ。来ないで。わたし、とりつかれちゃう?
もう、声も出なくなって、ぎゅうっと目をつぶる。
「……大丈夫?」
ぼそぼそっと低い声が近くで聞こえた。
あ、あれ? 幽霊が心配してくれてる?
うっすらまぶたを開けると、目の前に毛だらけの顔!
「あああああ、あのっ、あなたは幽霊さんですか?」
「うん。そうだけど」
ひええええっ。普通に返事してくれた! しかも、幽霊って認めてるし!
「お久しぶりです」
月都くんとミドリくんがぺこりと頭を下げると、幽霊がこくりとうなずいた。
「この子……だれ?」
幽霊がわたしを指さして首をかしげる。
「今年入学した北川るりさんですよ。北川留五郎さんのお孫さん」
月都くんが紹介してくれると、幽霊が顔のもじゃもじゃを手でかきわけた。
あ、ちゃんと目がある鼻も口も!
「……ぼくは書道部のOB、天沢優礼だよ。いつも大学の帰りにここで書いているんだ」
その辺に落ちていた半紙を手に取って、左端の名前を指さしてくれた。
「え? 優礼……? ユウレイって名前だったの?」
「もしかして、ほんまの幽霊って思っとったんか?」
ミドリくんがニヤニヤしながらきいてきた。
ぐっ。そうだよ。幽霊っていうか、妖怪っていうかバケモノかと思った。
「仕方ないよ。ユウレイさん、奇妙な声出してるし。幽霊のウワサ、大げさになって他校まで広がってたし」
月都くんがフォローを入れてくれたけど、優礼さんはムスッとした。
「……集中してたら、そういう声が出るんだよ……だから、誰も来ない時間にここで書いてるんだし。……で、今日はどうしたの?」
ちらっと髪の隙間からわたしを見てきた。
「あの、じいちゃんが隠した宝のウワサって知ってますか?」
ドキドキしながらきくと、優礼さんは頬をカリカリかいた。
「あー……知ってるよ。でも、宝がどこにあるかは知らない」
そっかぁ。がっくりしてると、優礼さんははじめに書いていた場所に戻っていった。
「優礼さんって、じいちゃんとよく会ってたんですか?」
「うん。在学中に留五郎さんと一緒に書道してたし、卒業後も会ってたよ。すごく気が合ってね。師であり、友人でもあるって感じ」
へぇ……。じいちゃん、すごいなぁ。世代がちがう人ともすぐお友達になれるんだもん。
「君、宝を探してどうするの? 大金持ちとか大富豪になりたいの?」
筆をしゅっと動かして、半紙から目を離さず優礼さんがきいてきた。
「もし、すごい宝だったら、学園を直す資金になったらなぁって思います。校舎も壊れてるところあるし、塀が割れて危ないところもあるし」
「ふぅん。廃校の話が出てるのに? 今更修繕するの?」
優礼さんがちらりとわたしを見た。
ドアの前で月都くんが手まねきしてる。
き、来てしまった。北校舎の三階はしっこ。
明かりもついてないから、暗くてあまり見えない。
おそるおそる月都くんのそばへ歩いていく。
「や、やっぱり帰ろうかな……」
「なーに言っとんや。宝の場所きくんやろ?」
ミドリくんが逃げ出そうとするわたしの腕を引っ張った。
書道室と書かれた札は、だいぶんはげてて、うっすらとしか見えない。
月都くんがドアノブに手をかけた時、中から声が聞こえてきた。
「……ううう、ううう、きえええええ!」
「!!!」
思わず月都くんの袖につかまった。何なの? 今の奇声!
「ううっ、ぐすっ……」
うわっ。今度は泣いてる声まで聞こえてきた。
こ、こわい。何か悲しいことがあったの? それとも恨みがあるとか?
と、思ったら。
「ヒヒヒ。ひーっひっひ……」
今度は笑いだした? さっきまで泣いてたんじゃなかったの?
「入るよ」
月都くんがノブをまわして、ドアを開けた。
えええ、この状況で入るの? 幽霊がいるんだよ⁈
ごくっとつばをのみこんだ。
ひやっとした書道室。窓際で黒い影が床に向かって筆を動かしていた。
幽霊? いや。足はある。でも……
じいっと目をこらす。
薄暗い中を何度も見るけど、……目と鼻と口がない。
顔が全部もじゃもじゃの毛でおおわれている。
ののの、のっぺらぼう? オオカミ男?
「ひっ」
声が出そうになって、あわてて口を押える。
よろめいて思わず手を伸ばしたら、積まれていたイスに当たって崩れてきた!
「きゃっ……」
がたーーーん!
黒い影が手を止めて、こっちを見る。
幸い、イスはわたしに当たらずに床で散らばってる。
ゆらりゆらーりと幽霊がゆっくり近づいてきた。
や、やだ。来ないで。わたし、とりつかれちゃう?
もう、声も出なくなって、ぎゅうっと目をつぶる。
「……大丈夫?」
ぼそぼそっと低い声が近くで聞こえた。
あ、あれ? 幽霊が心配してくれてる?
うっすらまぶたを開けると、目の前に毛だらけの顔!
「あああああ、あのっ、あなたは幽霊さんですか?」
「うん。そうだけど」
ひええええっ。普通に返事してくれた! しかも、幽霊って認めてるし!
「お久しぶりです」
月都くんとミドリくんがぺこりと頭を下げると、幽霊がこくりとうなずいた。
「この子……だれ?」
幽霊がわたしを指さして首をかしげる。
「今年入学した北川るりさんですよ。北川留五郎さんのお孫さん」
月都くんが紹介してくれると、幽霊が顔のもじゃもじゃを手でかきわけた。
あ、ちゃんと目がある鼻も口も!
「……ぼくは書道部のOB、天沢優礼だよ。いつも大学の帰りにここで書いているんだ」
その辺に落ちていた半紙を手に取って、左端の名前を指さしてくれた。
「え? 優礼……? ユウレイって名前だったの?」
「もしかして、ほんまの幽霊って思っとったんか?」
ミドリくんがニヤニヤしながらきいてきた。
ぐっ。そうだよ。幽霊っていうか、妖怪っていうかバケモノかと思った。
「仕方ないよ。ユウレイさん、奇妙な声出してるし。幽霊のウワサ、大げさになって他校まで広がってたし」
月都くんがフォローを入れてくれたけど、優礼さんはムスッとした。
「……集中してたら、そういう声が出るんだよ……だから、誰も来ない時間にここで書いてるんだし。……で、今日はどうしたの?」
ちらっと髪の隙間からわたしを見てきた。
「あの、じいちゃんが隠した宝のウワサって知ってますか?」
ドキドキしながらきくと、優礼さんは頬をカリカリかいた。
「あー……知ってるよ。でも、宝がどこにあるかは知らない」
そっかぁ。がっくりしてると、優礼さんははじめに書いていた場所に戻っていった。
「優礼さんって、じいちゃんとよく会ってたんですか?」
「うん。在学中に留五郎さんと一緒に書道してたし、卒業後も会ってたよ。すごく気が合ってね。師であり、友人でもあるって感じ」
へぇ……。じいちゃん、すごいなぁ。世代がちがう人ともすぐお友達になれるんだもん。
「君、宝を探してどうするの? 大金持ちとか大富豪になりたいの?」
筆をしゅっと動かして、半紙から目を離さず優礼さんがきいてきた。
「もし、すごい宝だったら、学園を直す資金になったらなぁって思います。校舎も壊れてるところあるし、塀が割れて危ないところもあるし」
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優礼さんがちらりとわたしを見た。
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