和ごころシンフォニー

森野ゆら

文字の大きさ
22 / 53
4章

宝のヒント

しおりを挟む
「わたし、廃校を阻止しようと思ってます。じいちゃんだって廃校なんて望んでなかったって思うし。この学園はわたしにとって、じいちゃんとの大事な場所だから……」

 真っすぐ見て言うと、優礼さんは硯に墨をとぷんと足して、わたしたちの方に向き直った。

「そっか。ぼくも廃校は嫌だなって思ってる。だって、ここで書けなくなるもんな。で。どうやって廃校を阻止するの?」

「そ、それは、えーっと……まだ具体的には考えてません」

 歯切れ悪く言うと、優礼さんがふっと笑った。

「まぁ、いいんじゃない? ゆっくりやれば。たぶん、意外といるよ。廃校反対派の生徒」

「うん。ぼくたちもそうだしね」

 月都くんがピースを作って、笑った。

「しっかし、なんでこんなコソコソ茶道せなあかんねん。って思うよな。優礼さんの時はどの部も活動的やったんでしょ? 写真見たことあるけど、文化祭、楽しそうやったもん。。あーあ。文化祭とかやってみたいなー」

「やってみたら?」

「えっ?」

 優礼さんの言葉にわたしたちは目をぱちくり。

「ほら。廃校を検討する視察が来るんだろ? その時に文化祭をやって、活気があるところを見せれば廃校も考え直してくれるんじゃないか?」

「でも、文化祭をやるなんて、生徒会も学園長も許してくれないよね」

 自分で言って、うなずいてしまう。だって、あの生徒会だもん。

「まぁ、学園長も廃校を望んでるとは言え、視察が来たときは、何かを見せないといけないんじゃない? そうそう。来週、学園長が帰ってくるらしいよ。その時に直談判してみたら?」

 優礼さんが筆を動かしながら、なんてことないように言う。
 学園長が帰ってくる……!
 どきんと胸が鳴った。

「ほんでも、すんなり許可はくれへんやろうなぁ。あの学園長」

 ミドリくんが冷めた表情で言うと、優礼さんが筆を止めた。

「おれ……文化祭、久々に見たいな」

「優礼さん、簡単に言うなぁ」

 月都くんが言うと、優礼さんはあははと笑って、わたしの方を見た。

「そうだ。こういう条件はどう?」

「条件?」

「うん。さっき、ぼくは宝のありかを知らないって言ったけど、宝がある場所のヒントは持ってるんだ」

「えええっ?」

 三人で顔を見合わせる。それからすぐさま優礼さんにつめよった。

「あの、それ教えてください!」

「やだ」

 ぷいっとそっぽを向いた優礼さんに、わたしたちは脱力する。

「そんなぁ……」

「だから言っただろ? 条件つきはどうだって」

「はい?」

 首をかしげると、優礼さんはいたずらっぽく笑った。

「君たちが学園長から文化祭の開催許可をとる。その後、文化祭を成功させたら、宝のヒントを教える。どう?」

 優礼さんはぼそっと言ったけど、目は真剣だ。

「やるしかねぇんじゃないか?」

「うん。わたしもそう思う」

「いいと思うよ」

 やる気になったわたしたちを見て、優礼さんは満足そうな顔でまた筆を動かし始めた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

笑いの授業

ひろみ透夏
児童書・童話
大好きだった先先が別人のように変わってしまった。 文化祭前夜に突如始まった『笑いの授業』――。 それは身の毛もよだつほどに怖ろしく凄惨な課外授業だった。 伏線となる【神楽坂の章】から急展開する【高城の章】。 追い詰められた《神楽坂先生》が起こした教師としてありえない行動と、その真意とは……。

9日間

柏木みのり
児童書・童話
 サマーキャンプから友達の健太と一緒に隣の世界に迷い込んだ竜(リョウ)は文武両道の11歳。魔法との出会い。人々との出会い。初めて経験する様々な気持ち。そして究極の選択——夢か友情か。   (also @ なろう)

クールな幼なじみの許嫁になったら、甘い溺愛がはじまりました

藤永ゆいか
児童書・童話
中学2年生になったある日、澄野星奈に許嫁がいることが判明する。 相手は、頭が良くて運動神経抜群のイケメン御曹司で、訳あって現在絶交中の幼なじみ・一之瀬陽向。 さらに、週末限定で星奈は陽向とふたり暮らしをすることになって!? 「俺と許嫁だってこと、絶対誰にも言うなよ」 星奈には、いつも冷たくてそっけない陽向だったが……。 「星奈ちゃんって、ほんと可愛いよね」 「僕、せーちゃんの彼氏に立候補しても良い?」 ある時から星奈は、バスケ部エースの水上虹輝や 帰国子女の秋川想良に甘く迫られるようになり、徐々に陽向にも変化が……? 「星奈は可愛いんだから、もっと自覚しろよ」 「お前のこと、誰にも渡したくない」 クールな幼なじみとの、逆ハーラブストーリー。

悪魔さまの言うとおり~わたし、執事になります⁉︎~

橘花やよい
児童書・童話
女子中学生・リリイが、入学することになったのは、お嬢さま学校。でもそこは「悪魔」の学校で、「執事として入学してちょうだい」……って、どういうことなの⁉待ち構えるのは、きれいでいじわるな悪魔たち! 友情と魔法と、胸キュンもありの学園ファンタジー。 第2回きずな児童書大賞参加作です。

四尾がつむぐえにし、そこかしこ

月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。 憧れのキラキラ王子さまが転校する。 女子たちの嘆きはひとしお。 彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。 だからとてどうこうする勇気もない。 うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。 家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。 まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。 ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、 三つのお仕事を手伝うことになったユイ。 達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。 もしかしたら、もしかしちゃうかも? そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。 結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。 いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、 はたしてユイは何を求め願うのか。 少女のちょっと不思議な冒険譚。 ここに開幕。

【奨励賞】氷の王子は、私のスイーツでしか笑わない――魔法学園と恋のレシピ【完結】

旅する書斎(☆ほしい)
児童書・童話
【第3回きずな児童書大賞で奨励賞をいただきました】 魔法が学べる学園の「製菓科」で、お菓子づくりに夢中な少女・いちご。周囲からは“落ちこぼれ”扱いだけど、彼女には「食べた人を幸せにする」魔法菓子の力があった。 ある日、彼女は冷たく孤高な“氷の王子”レオンの秘密を知る。彼は誰にも言えない魔力不全に悩んでいた――。 「私のお菓子で、彼を笑顔にしたい!」 不器用だけど優しい彼の心を溶かすため、特別な魔法スイーツ作りが始まる。 甘くて切ない、学園魔法ラブストーリー!

中学生ユーチューバーの心霊スポットMAP

じゅん
児童書・童話
【第1回「きずな児童書大賞」大賞 受賞👑】  悪霊のいる場所では、居合わせた人に「霊障」を可視化させる体質を持つ「霊感少女」のアカリ(中学1年生)。  「ユーチューバーになりたい」幼なじみと、「心霊スポットMAPを作りたい」友達に巻き込まれて、心霊現象を検証することになる。  いくつか心霊スポットを回るうちに、最近増えている心霊現象の原因は、霊を悪霊化させている「ボス」のせいだとわかり――  クスっと笑えながらも、ゾッとする連作短編。

童話短編集

木野もくば
児童書・童話
一話完結の物語をまとめています。

処理中です...