スパイラル・ワープ!

森野ゆら

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6章

2 夕方の図書館で

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 オレンジに染まる図書館の壁。
 私の影が長く地面に映って、背が高い人みたい。
 学校から家に帰って、すぐに図書館へ来た。
 瑞希は亜希ちゃんに用意させるから、後から来るって。
 中へ入ると、独特の本のにおいと落ち着いた図書館の空気。
 夕方だからか、人があまりいない。

「こんにちは。あのー、小会議室って使えますか?」

 カウンターできくと、司書さんが手を止めてそばへきてくれた。

「えぇ。あいてるわよ。6時までだけど。まだ一時間半はあるから、ゆっくり使ってね」

「はい。ありがとうございます」

 やった! あいてた。
 この図書館って、小会議室が私たち子どもでも借りられるんだよね。
 時々、生徒会の人も使ってるって言ってたし、この前、アイちゃんたちも借りたって言ってた。
 会議室なら、ゆっくり周りの目を気にせず話せる。
 だから、リゼと話をしようってことになって、図書館の小会議室を思いついたんだ。

「小会議室、鍵は開いてるからね」

「はい。ありがとうござい……」

 背後に気配を感じて、思わず振り向いた。
 後ろを通りすぎたのは、おかっぱ頭でメガネの女子。

 河本さんだ。
 河本さんは音もなく早足で歩いて、声をかける間もなく図書館を出て行った。

「あの子、最近毎日のように来てるけど、あなたのお友達?」

 司書さんが資料を束ねながら、きいてきた。

「あ……はい。同じクラスですけど」

「そうなのね。あの子、いつも本を読むでもなく、図書館の中や周りを歩きまわってるから、どうしたのかなって思って」

「そうなんですか……」

 河本さん、毎日来てるんだ。
 図書館が好きで、この周りをお散歩コースにしてるのかな。

「あっ! ひなりちゃーん」

 甲高い声がして見ると、ちょうど亜希ちゃんと瑞希が入ってきたところだった。

「こら、亜希。図書館の中では静かに」

 人差し指を口の前に立てて瑞希が叱ると、亜希ちゃんがきゅっと口を引き結んだ。

「亜希ちゃん。ごめんね、急に一緒に来てもらうことになって」

「ううん。いいよ。ね、ひなりちゃんも一緒にお勉強しよう。亜希、算数をお兄ちゃんに教えてもらうんだ」

「えっ、勉強?」

 いや……今日はリゼと話をするために来たんだけど……
 ひくっと口をひきつらせると、司書さんが笑った。

「小会議室、落ち着いた部屋だから勉強はかどるわよ~」

「……はい」

 しょうがない。一応、ノートは持ってきたし、今日の数学、分からないところを瑞希にきくかぁ。
 ガックリして下を向いたら、カウンターにあるメモが目に入った。

「あれ……これ……」

 この記号……! □の中にトって書いてある!
 一緒だ! サイリのメモに書いてあった記号と!

「これって、暗号……ですか?」

 思わずきくと、司書さんがクスッと笑った。

「暗号……ってわけじゃないけど、これは図書館って意味なのよ。よく司書はこういう書き方をするの」

「そうなんですか……」

 じゃあ、あの□の中にトの記号は、図書館ってこと。
 ってことは、今からここに、スパイラルが作られるってこと?
 ……いや、ちがう。スパイラルはもうすでに作られてたんだ。
 リゼと最初に会った時に見つけたスパイラル。
 あれは、サイリが作ったものだったんだ!
 瑞希も気づいたみたいで、私と目を合わせる。

「あの、この辺りの地図ありますか? 社会の勉強で使いたいんですが」

「分かったわ。ちょっと探してくるわね」

 司書さんは、尋ねてきた瑞希に指でOKサインを作って、奥へと入っていった。

「やぁ、遅くなってごめん。あれ? 瑞希と亜希ちゃんも」

 声をかけられて振り向くと、パーカーにジーンズ姿のリゼが立っていた。

「瑞希たちは私が呼んだの」

「そうかぁ。亜希ちゃん、久しぶり」

「わぁ、リゼくんも一緒だ。やったぁ」

 リゼがニコニコしながら、亜希ちゃんの頭をなでた。
 亜希ちゃんはぴょんぴょん飛び跳ねて、リゼの手を握る。

「それより、リゼ。あの記号の意味、図書館だった。サイリはもうすでに二つ作ってたんだよ」

「なんだって?」

 リゼが顔をこわばらせて、私を見つめた。
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