スパイラル・ワープ!

森野ゆら

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6章

1 疑惑

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「な、なんだよ、ひなり。またついてきて! しかも、瑞希まで」

 廊下を歩いていた大地先生が迷惑そうに振り返り、立ち止まった。
 大地先生の後をついていた私と瑞希も足を止める。

「今日は休み時間のたびにずっとついてくるし、授業中のひなりの視線は痛いくらいだし……おれ、お前たちに恨まれること何かしたか?」

 まいったなぁと頭をかく大地先生の前にまわりこんで、キッと見上げた。

「先生、きのう、星山フルーツ公園にいましたよね?」

「え、えっ? なんのことだ?」

 大地先生はギクリとして、持っていた書類を落としそうになった。

「その時、私を見て逃げませんでした?」

「か、かかか、カンちがいじゃないか? いや、人ちがいじゃないか?」

 大地先生は、視線を泳がせてくちびるをひきつらせる。
 むむっ? ……動揺してる⁈

「せ、先生は今から会議の資料を作らないといけないんだ。忙しいから、またな!」

 大地先生は早口で言うと、廊下をこけそうな勢いで走って階段をかけおりていった。

「あ~や~し~い」

「確かにあやしいな。なんか、うろたえてたし」

 ……これはもう、大地先生に何かあるとしか思えない。
 思い切って「先生はサイリですか?」ってきいちゃおうか?
 その前にもう一回リゼに相談する? 
 あ、リゼと言えば……今日の放課後、会う約束してたんだっけ。

「ねぇねぇ。今日、学校終わったら、図書館でリゼと会う約束してるんだ。瑞希も来る?」

 きくと、瑞希は一瞬固まった。

「おれも行って……いいのか?」

「うん。もちろんだよ。なんで遠慮してるの?」

「この前『これ以上私にかまわないで!』とか、『メイワクだよ』とか言ってたけど……いいのか?」

 瑞希がじとっと私を見る。
 そ、そんなこと言ったっけ? あはは。言ったな……。
 しかも瑞希のこの顔、だいぶん根にもってるヤツ……。

「あ……あれは……その……悪かったよ。ごめん。ひどいこと言って」

 顔色をうかがうように言うと、瑞希がフハッと笑った。

「じゃあ、おれも行く。ひなりへの心配症は治りそうにないから」

 瑞希がすっと私へ手を伸ばした。
 ポンポンと頭の上で瑞希の手が弾む。
 あったかい、大きな手。

 ……あれ? まただ。この感じ。

 どうしてなつかしいような、知ってるような感じがするんだろう?
 前に瑞希にこんな風にされたっけ?
 記憶を探ってたら、瑞希が思い出したようにつぶやいた。

「……あ、でも、忘れてた?」

「なに? 用事があった?」

「いや……今日、母さんが帰ってくるの遅いから、亜希のことみないといけないんだった」

「じゃあ、亜希ちゃんと一緒に図書館に来る? 亜希ちゃん、クッキー持ってきた時にリゼのことも知ってるし」

 ……と、瑞希の表情が少しだけゆがんだ。

「クッキー……あ、あぁ。母さんが焼いたクッキーな」

「……母さん? お兄ちゃんが大急ぎでクッキー焼いてたって亜希ちゃんが言ってたけど」

「えっ? あっ……亜希のヤツっ……」

 瑞希がうろたえたように頭をガシガシッとかく。
 なんだろ? クッキーの出来具合、不安だったのかな?
 瑞希の肩をポンとたたいた。

「大丈夫。ちゃんとおいしかったよ~」

「あ……そう」

 瑞希は拍子抜けしたような顔で、息をついた。
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