スパイラル・ワープ!

森野ゆら

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7章

2 せつない想い

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 大地先生が固い表情で長い髪の女の人と何かを話してる。

「また、大地先生がいるなんて」

「やっぱり、あの先生がサイリなのか?」

 リゼが大地先生をにらみつけて、表情を厳しくする。

「何を話してるんだろ?」

 見つからないようにそっと柱の裏側まで近づいた。
 大地先生は女の人と話してるけど、何かピリッとした緊張感がある。

「じゃあ、これで終わりにして」

 そう冷ややかな声で言って、女の人が早足で去っていった。
 これで終わり……?
 もしかして、ここにスパイラルを作って終了ってこと?
 どきんと心臓が鳴った。
 じゃあ、サイリはやっぱり……大地先生?
 フルーツ公園にもいて、水族館にいるなんて、これはもう決定だよ!

「大地先生っ!」

 思わず柱から飛び出して、叫んだ。

「あ、ひなり、バカっ」

 瑞希の声がしたけど、かまうもんか。
 大地先生は私の声にぎょっとして、それから私の姿を見て固まってる。

「大地先生! 今日は何しにここに来たんですか⁈」

 にらみつけて言うと、大地先生はうつむいた後、急にかけだした!

「待って!」

 逃げるなんて、絶対あやしい!
 やっぱり、大地先生がサイリなんだ。
 大地先生は展示コーナーを出て、外へと出て行く。
 追いかけて外へ出ると、広場の噴水の方へ走っていく大地先生が見えた。

「逃がさないよ、先生!」

 私、走るのは得意なんだから!
 全力で走って、大地先生の背中を追う。
 大地先生が向かってるのは、駐車場の方だ。
 まずい。
 車がいっぱいの所に紛れこまれたら、隠れられちゃう。
 それに、車で逃げられたらもう追いかけられない。
 学校で問いつめても、前みたいにごまかされそうだし。
 そうこう考えてるうちに、大地先生はもう駐車場の入り口まで行ってる。

 ダメだ。追いつけない。
 そう思った時、
 ワンワンワン!
 突然、散歩していた犬が大地先生に近づき、吠えかかった。

「うわっ」

 びっくりした大地先生が思わず足を止める。
 チャンス……! ナイスワンちゃん!
 飼い主さんがリードを引っ張って、謝りながらその場を離れた。
 大地先生が立ち上がり、また走り出そうとしたところを、すかさず、背後から飛びかかった。

「大地先生! つかまえたっ!」

「うわあっ」

 私と大地先生はバランスを崩して、地面に転倒!
 ジタバタする大地先生をぎゅうっとつかむ。

「……ひゃあ。ひなりすごいな……」

 後ろから、なんだか引き気味なリゼの声。
 追いかけてきた瑞希とリゼが眉間にしわをよせて、私と大地先生を見つめた。

「ギブ! ギブ! 離して!」

 大地先生の声に、私は仕方なく手を離す。

「……ったく、ひなりはいつも元気すぎるよ。いたた」

 腰をさすりながら、大地先生がフラフラと立ち上がった。

「大地先生、あの女の人となに話してたんですか?」

「な、なにも……」

 大地先生は私からパッと目をそらす。

「私、見たもん。コソコソ女の人と話して! スパイラルをどこに作ろうか相談してたんでしょ?」

「スパイラル? なんだそれ?」

 大地先生がキョトンとして、私に視線を合わせた。

「とぼけないでっ! フルーツ公園でも誰かを探してたし!」

「誰かを探してたって……そんな所まで見られてたとは……」

 大地先生が観念したように、はーっと息をはきだした。

「実は、この前、星山フルーツ公園で……かっ、彼女とデートだったんだ。だけど、来なくて。それで、話がしたいって連絡して、水族館に来てもらったんだ。そしたら今……『別れましょう』って」

「え……」

 別れましょう……?
 私と瑞希はぽかんと口を開け、リゼは「げっ……」と顔をゆがませた。

「初デートで来た思い出の水族館なら、うまく話ができると思ったんだけどなぁ。あーあ、おれ、ふられたんだよ……な」

 だんだんかすれ声になって、大地先生の目から涙がボロボロこぼれ落ちてきた。

「……他に好きな人ができたって言われてさ……そんなの急に言われても心の整理がつかないよな……」

 しゃがみこんで泣く大地先生に、私はあぜん。

「せ、先生、ごめん。そ、そうだったんだ」

 涙と鼻水でぐちゃぐちゃの顔をした先生に、瑞希がティッシュを差し出す。
 ど、どうしよう。この微妙な空気。
 リゼなんか、距離を取って他人のフリしてるし。
 大地先生はひとしきり泣いた後、フラリと立ち上がった。
 少し落ち着いたのか、目を赤くしながらもいつもの大地先生の顔に戻ってる。

「変なところ見せちゃって悪かったな。じゃ、また学校で」

「は、はい。また……」

 大地先生が駐車場の方へしょんぼり歩いていく。
 その背中が悲しく見えて、何とも言えない気持ちになる……
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