スパイラル・ワープ!

森野ゆら

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8章

1 会いたかった人

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 何がなんだか分からず、瑞希に引っ張られたまま、林を抜けて、境内を抜けて、石段をかけおりる。

「瑞希、どこ行くの? ちょっ……説明してよっ」

 道に出てから、ちらっと瑞希が振り返った。

「……走ってたら、たぶん分かると思う」

 それだけ言って、また前を向いて走る。
 分かるって……なにそれ?
 瑞希はどこに行こうとしてるの?

 それよりも、早く時間移動機で元の時代に戻らなきゃ、帰られなくなっちゃうよ。
 瑞希が考えなしの行動をするなんて……一体どうしたの?
 大通りを通って、瑞希が向かってる方角は北の方。
 こっちは、商店街をぬけたら公園があって、桜並木の道を真っすぐ行ったら丘が……

 あっ……

 その先の場所を思い浮かべた瞬間、胸の奥が小さな音を立てた。
 丘をのぼっていた先は……総合病院だ。
 一年前、むつ子さんが入院していた病院。

 ……もしかして、瑞希……むつ子さんに会おうとしてる?

「ねぇ、もしかして。むつ子さんに会いに行く気?」

 前を走る背中にきくと、瑞希がちらっと振り返った。

「あぁ。一年前のこの場所に今、いるなんて。こんなチャンスないよな?」

「だからって、時間移動機が使えなくなるかもって時に……瑞希がそんな無茶するなんてびっくりだよ」

「ひなりの無鉄砲がうつったのかもな」

 瑞希が意地悪く言って、笑う。
 私はむっとしながらも、なんだか心の底にぽっと明かりが灯った気がした。

「しょうがないな。瑞希の無鉄砲につきあってあげる」

 手をきゅっと握り返して、クタクタのはずの足をめいっぱい動かして走る。

 あぁ。そっか。私と同じで、瑞希もずっと心残りだったんだ。
 最後にむつ子さんに会いに行けなかったこと。
 仕方ないって無理やり自分を納得させようとしてたけど、心の中ではずっとくすぶってた気持ち。
 私たち、同じ気持ちを心の奥底に閉じ込めてたんだね。

 桜並木が続く丘をのぼっていく。
 向かい風の中を走ってると、舞い散る花びらが雪みたいだ。
 走って走って、呼吸が荒くなってくるけど、それどころじゃない。

 リゼ、勝手なことしちゃって、ほんとにごめん!
 もし、戻れなくなったら、なんて言い訳しよう?
 あ、私、河本さんの時間移動機のネジも返さずに持ったままだ。
 じゃあ、瑞希の手首についてる時間移動機が使えなくなったら、本当に戻れないな。

 だけど、これは私たちにとって、思いがけずやってきた流れ星みたいな偶然。
 もう二度と会えない人に、時間を越えてもう一度だけ会えるなんて、奇跡みたいだよ。

 そんなことを思いながら走ってると、丘の上にある病院が見えてきた。
 ドキンドキンと心臓が大きく鳴る。
 いるかな? むつ子さんいるかな?
 会いたい。会いたい。むつ子さんに会いたい。

 高鳴る気持ちをおさえながら、無我夢中で走って、病院へとたどり着いた。
 中に入ったら、薬を待ってる人、順番を待ってる人でいっぱいだ。
 息をきらせながら、受付にかけよった。

「あのっ、むつ子さん……佐々木むつ子さんなんですけどっ。どちらの部屋ですか?」

「佐々木むつ子さんですね。ちょっと待ってください……」

 受付の人が、ゼイハァと息切れする私たちにぎょっとしながら、パソコンの画面を見ながら、キーボードをたたいた。

「あら、あなたたち、むつ子さんのお孫さん?」 

 ちょうど書類を持ってきた看護師さんが声をかけてきた。

「あの、えっと……孫じゃないけど……近所の……孫みたいなものです!」

「そうなの? むつ子さんなら、さっき中庭に出てたわよ。エントランスを出て右へ行くといいわ」

 クスクス笑いながら看護師さんが教えてくれた。

「あっ、ありがとうございます!」

 私たちは頭を下げて、出入り口へと戻った。
 外へ出て、看護師さんの言う通りに右へ曲がる。
 レンガが敷きつめられた道を真っすぐ走ったら、広場に出た。

「こっちだ。ひなり!」

 案内図を見た瑞希が左側を指さす。
 こもれびがゆれる木々の間をしばらく走ると、小さな庭が見えてきた。
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