そのジンクス、無効につき

三日月

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FIRST GAME

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「クラブにも、ファンに手を出して二股、三股とか最低なヤツラがいてさ。
相手を蔑ろにして笑ってたりするのを見てると、親もコイツラも変わらねぇのかなぁとか、なんか安心?
そう、ホッとしたのはあったんだけど。
親と同じになりたくないって気持ちは捨てきれなくて。
だから、運命の相手がここで見つけられるって知って、その人とならずっと好きでいられるんだって嬉しかった」

鬱積してきた気持ちを吐き出した若松。
俺と目が合うと、照れくさそうに笑ってからチュウッとタコ口を寄せてきた。

打算で作ったジンクスが、巡り巡ってまさか自分の身にこんな形で降り掛かってくるとは。
若松のキスから、ひたむきな気持ちが伝わってくる。
本気で運命の相手を求めていた若松にとって、このジンクスは天啓に等しく変換されてしまっている。

単純で幼く、信じたものを疑わずに行動できてしまう若さゆえの無鉄砲さ。
自分がとうに無くしてしまった眩いそれを見せつけられ、理論での説得は諦めた。
願っていたものを遂に手に入れたと錯覚してしまっている若松。
小学生の頃から抱えていた根深さもあるが、元々頭で考えていなさそうな若松を説得出来る勝算がない。

発端は、俺が作ったジンクスだ。
責任とまではいかないが、俺の唇くらい我に返るまでは・・・と、完全に絆された俺も悪かったが。

「おいっ、マジでやめろっ
お前は性犯罪者、俺は未成年への淫行で捕まるっ」
「やだなぁ、荒川先生。
運命の相手なんだからそんなの気にしなくて大丈夫だって」

謎の自信に満ちた笑顔で、ジリジリ部室の隅に追いやられているこの状況はなぜだっ
いい加減、我に返れっ
半時間も付き合ってやったのに、冷めるどころか興奮して手が付けられなくなっているのはなんでだっ

「落ち着け、若松。
俺は、男だ。
そろそろ萎えろ」

ビシッとテントが張っているスラックスを指差す。
現役高校生の性欲、こえぇぇ。
我に返れないのはキスを続けてしまっているせいかと藻掻いて逃げたのに、逆に追いかけてる間に成長してるじゃないかっ

こうなったら、視覚から萎えさせるっ

シャツを引っ張り出して下着と一緒に胸までグイッと持ち上げる。
「ほらみろ」と、ここにあるのは真っ平らで見慣れた身体と同じなんだとわからせれば・・・

「たまらねぇ」

ゾワッッ
ギラギラ興奮に拍車がかかっていた。
間違いなく俺に突っ込もうとしている目だっ
こちらはそっと服から手を離したのに、若松は目の前で脱ぎ上半身裸になる。
しなやかな肉体に無駄なくついた筋肉。
現役アスリートだけあり、危機的状況を忘れて思わず見惚れしまった。

「運命の相手が荒川先生だって気づいてから、カウントダウン中ずっとオカズにしてたんだ。
遠征や寝坊で途切れた日なんて悔しくて、悔しくて。
手で抜き過ぎて腱鞘炎になるかと思った」
「お、オカズって・・・」

思い込みが激しいにも程があるだろうっ
男で抜くとか、そんな事思い込みでできるものなのか??
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