ヘタレαにつかまりまして

20 桜宮 side 倭人

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朝から時系列の簡単な流れと、桜宮自身のことも聞いていて。
弟が生まれるまでは、当主になるために教育を受けていたとか。
実は、俺を抜かしたいのが勉強へのモチベーションを上げていたとか。

ふっくら色付く桜色の濡れた唇が動く度。
少し高めの柔らかい声が漏れるとか。
ちょっと充血した空色の瞳が俺をまっすぐ映すとか。
長くてクルンとカールした睫毛が瞬くとか。
毎晩泣いてるから、なかなか引かない瞳の周りの腫れがうっすら赤くなってるとこさえ目が離せなくなってくる。

なにより、俺への警戒心が全く無い親しげな至近距離。
フェロモンの隙間から覗くとこんなに違うのか。
俺が相槌を返すだけでも笑う桜宮が。

ーーー可愛い。

これが本来のΩである桜宮で、偽装しない自然な桜宮が俺の傍にいるのは凄く嬉しい。
番の俺に特別緊張したり気を使わないのは。
きっと"ヤマ"との時間が、桜宮にこうさせるくらい良かったものだったってことなんだろう。

でも、俺には免疫が無い。

目の前で動いている"桜宮　奏"が俺の知ってる"桜宮　奏"と違ってて。
劣等αと思っていたのに、努力していたΩで。
とにかく、可愛くて。
可愛い俺の番で。

そんな桜宮を泣かしてるのが、俺で。

ダメだ、頭に入ってこない。