例えβに生まれても

三日月

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36 計略の王子様

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突然のことにびっくりしてワタワタと両手を振り回した俺に、飛鳥様のスーツの下で窮屈そうに収まっているおっきな胸が迫ってくるよぉっ
飛鳥様の正面に立つと、昔からなにかされるかもって緊張して身体が固まってたんだけど。
今は目のやり場にも困って、アタフタしちゃう。
なのに陽太様は、避けようとする俺の背中を容赦なく押しながら真剣な顔で話を続けられたんだ。


「お前がどう思おうが、ハルちゃんは清人の番になってる。
結婚すれば、義理の弟にもなるんだぞ」


怒りさえ感じる低い声で言い渡した内容に、飛鳥様は目を剥いちゃってね。
真っ青な顔で、その場に倒れてしまいそうなくらい動揺されていた。
でも、それ以上に動揺したのは俺だよっ


「けけけけけ、結婚ってなんのことですか?」


清人様と番になったふりしなくちゃいけないのは説明されましたけど、なんで結婚とか出てくるんですかっ
清人様だって、流石にそんなこと言われたら迷惑ですよっ
その⋯いくら好きと言ってくださってても、そんな、結婚まで考えられてる筈がありませんっ

ねっ、清人様って同意を込めて振り返ったんだけど。

清人様は、飛鳥様と俺の間に強引に腕を割り込ませ、そのまま俺をその胸に回収。
「ふぇぇっ」とおかしな声を出した俺の頭を優しく撫でながら、全然優しくない地を這う声で二人を責め出した。


「飛鳥、ハルを辱めたら縊るぞ。
陽太さん、他のαを近づかせるな」


まだ衝撃から復帰できない飛鳥様は反応されなかったんだけど。
陽太様は、ふっと表情を緩めて穏やかに微笑まれた。


「ほんっとーに、ハルちゃんのことになると余裕ねぇなぁ」

「当たり前だろう」


チュッと俺の旋毛にキスを落とした清人様は、軽々と俺を横抱きにして歩き出される。
背後から、残された二人のやり取りが廊下に響いて聞こえて来たんだけどね。


「飛鳥、さっさと行くぞ」

「⋯え、ちょっと待って。さっきのって幻聴よね?」

「蔑称も結婚もどっちも飲み込め」

「嫌よっ」


ヒステリックな飛鳥様の悲鳴。
なのに、俺を抱き上げて悠々と歩かれる清人様は止まろうとされない。
俺と目が合うと、「ハルのことは俺が守るからね」と優しく微笑まれる。
そんな顔をされてしまうと、とても降ろしてくださいと言える雰囲気ではなくって。
今日見たモデルの清人様のこと、俺にだけ出してくださる牙、控室のことまで思い出して。

俺は、顔を真っ赤にさせたまま、大人しく⋯どこかの部屋のソファーじゃなくて、そこに座った清人様の膝の上でお二人の到着を待つことになってしまった。
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